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ゆ(旧「ゆゆゆゆ」)
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ゆ(旧「ゆゆゆゆ」)
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カジノの喧騒も、追手の足音も、すべてが遠い世界の出来事のように思えるほど、ホテルの部屋は静まり返っていた。
窓の外では、退廃的な街のネオンがブラインドの隙間から滑り込み、男二人の影を斜めに切り取っている。
ベッドの白く乱れたシーツの上に寝そべり、エリオットは上着のジャケットを床に放り捨てた。
金髪の髪を枕に散らし、どこか気怠げな、それでいて完全にチャンスを挑発する目を向けながら、彼はポケットから一枚の銀貨を取り出す。
指先で弄んでいたそのコインを、エリオットは躊躇なく自分の唇に挟み、くわえた。
「……ん」
言葉にならない声を漏らしながら、エリオットは顎を少しだけ上げ、ベッドの傍らに立つチャンスを見上げる。
銀色のコインが、エリオットの薄い唇の間で、ネオンの光を反射して怪しく鈍い輝きを放っていた。
挑戦的な笑みを湛えた瞳が、「奪ってみろよ」と無言で語りかけている。
チャンスはベッドの端に腰掛け、中折れ帽をサイドテーブルに放ると、深くため息をついた。
サングラスを外したその瞳には、いつもの飄々とした余裕など微塵もなく、ただただ目の前の奔放な獲物に対する、暗い独占欲だけが揺らめいている。
「お前、本当に自分がどれだけ危険な賭けをしてるか、分かってねぇだろ」
低く、押し殺したようなチャンスの声が、静かな室内に響く。
エリオットはコインをくわえたまま、ふっと目を細めて、さらにチャンスを誘うようにそのネクタイを指先で軽く突いた。
「表ならチャンスの勝ち、裏なら俺の勝ち。……ねぇ、どうやって確かめる?」
コインのせいで少しだけ籠もった、だが確実にチャンスの理性を叩き割るエリオットの言葉。
「……もう、表も裏も関係ねぇよ」
チャンスの手が、エリオットの細い手首を掴んでシーツへと縫い付けた。
同時に、覆いかぶさるようにして顔を近づけ、エリオットがくわえていたコインを、自分の唇で直接奪い取るようにして深く、 乱暴にくちづける。
カチリ、と二人の歯と、銀貨の金属がぶつかり合う冷たい音がした。
しかし、その直後に押し寄せた互いの体温と、狂ったように熱を帯びていく吐息が、冷たい金属の感触を瞬く間に溶かしていく。
チャンスの大きな手がエリオットの金髪に指を絡め、逃げ場をなくすようにさらに深く、 降りられないところまで引きずり込んでいく。
唇を離したチャンスの口元には、いつの間にか奪い取られた銀貨がくわえられていたが、二人はもう、それがどちらの面を向いているかなど、見ようともしなかった。
「……俺の負けでいいよ、エリオット」
降伏を宣言するチャンスの、 余裕の剥がれ落ちた苦しげな笑顔を見て、エリオットは勝ち誇ったように、そして最高に嬉しそうに、その首に腕を絡ませた。
エリオットの細い、けれどもしなやかな強さを持った腕がチャンスの首の後ろで交差する。
その腕に少しだけ力を込め、エリオットはさらに自分の方へとチャンスの身体を引き寄せた。
「……諦めるの、早くない?」
耳元で 囁かれたエリオットの 吐息は、まだ少しだけアルコールの 匂いが混じっていて、チャンスの脳の 芯をダイレクトに 痺れさせる。
いつもなら どんな不利な 状況からでも 逆転の 一手を 捻り出す ギャンブラーが、今は完全に 思考を 放棄していた。
というより、思考する こと自体が 無意味だと、本能が 告げている。
「早くねぇよ。……お前を 相手に 勝ちを 狙うのが、そもそも 割に合わない 大博打(ギャンブル)だったんだ」
チャンスは 奪い取った 銀貨を ベッドの 下の 絨毯へと 容赦なく 放り捨てた。
乾いた 音を立てて 闇に消えた コインの
行方など、今の 二人には 1セントの 価値もない。
チャンスの 大きな 手が、エリオットの 黒い正装の ジャケットの 襟を 掴み、乱暴に 肩から 剥ぎ取るように 滑り落とす。
誂えたばかりの 高級な 生地が 擦れる 音が、静まり返った 部屋の中で 妙に 生々しく 響いた。
シャツの 下から 浮かび上がる エリオットの 骨格は、男としての 鋭さを 持ちながらも、どこか 艶やかで、ネオンの 光を浴びて 妖しく 脈打っている。
「チャンス、手が 震えてる。……怖いの?」
エリオットは その状況ですら、まだ チャンスの 余裕を 削り取ろうと 悪戯っぽく 瞳を 輝かせる。
無邪気を 装った 完璧な 挑発。
しかし、チャンスの 中で 完全に 弾け飛んだ 理性は、もう その程度の 軽口で 止まるような 生易しい ものでは なかった。
「怖ぇわけねぇだろ。……お前が 泣いて 降りるって 言っても、もう 絶対に 帰して やらねぇって 言ってんだよ」
チャンスの 低い声が、獣のような 響きを 帯びて エリオットの 鎖骨の 窪みへと 落ちる。
そこに 噛みつくように 唇を 押し当てると、エリオットの 身体が びくりと 跳ね、短い 吐息が 喉から漏れた。
「、ッ……あ」
さっきまでの 余裕に満ちた 笑顔が わずかに 歪み、エリオットの 瞳が揺れた。
チャンスは その変化を 逃さず、エリオットの 白いシャツの ボタンを 容赦なく 押し開けていった。
指先が 触れる たびに、エリオットの 肌が 粟立ち、熱を帯びて 膨らんでいくのが 分かる。
「降りる 勇気を 覚えろって、最初に 教えた はずだよな」
チャンスの手が、エリオットの ズボンの ベルトへと かかる。
エリオットは 呼吸を 荒くしながらも、必死に 視線を 逸らさず、チャンスの 髪を 強く 掻き毟るように 抱きすくめた。
「やだ。……俺、勝負は さいごまで 見たい 派だから」
その 強がりな 声音の 震えが、チャンスの 独占欲を 最悪な 形で 煽り立てる。
「なら、お望み通り さいごまで 付き合ってやる」
チャンスが 完全に 覆いかぶさり、二人の 影が 完全に ひとつに 溶け合っていく。
ブラインドの 隙間から 差し込む 赤と青の ネオンは、ベッドの上で 激しく 貪り合う 2人の 汗ばんだ 肌を、どこまでも 危険に、そして 甘美に 照らし続けていた。
ネオンの光が二人の背中に容赦なく降り注ぎ、肌に不規則なコントラストを描き出す。
静寂を引き裂くのは、シーツが擦れ合う微かな音と、互いの喉の奥から漏れる、熱を孕んだ荒い呼吸だけだった。
チャンスの大きな手がエリオットの脇腹を強く掴み、そのまま容赦なく引き寄せる。
その指先から伝わる圧倒的な熱量に、エリオットは背中を僅かにのけぞらせ、金髪の隙間から濡れた瞳でチャンスを睨みつけた。
「……ッ、チャンス、……本気すぎ」
「言ったはずだ。ゲームのルールは俺が決める。降りるタイミングを失ったのは、お前だ」
低く掠れた声には、カジノで見せる飄々とした偽物の余裕など一欠片も残っていない。
チャンスはエリオットのシャツを完全に肌から 剥ぎ取ると、その剥き出しになった胸元へ、 容赦なく 己の 質量を 押し付けた。
エリオットは その重圧に 一瞬だけ 息を詰まらせたが、すぐに 唇の端を 吊り上げ、 挑発的な 笑みを 取り戻してみせる。
「いいよ、だったらその大博打……俺が全部、 買ってあげる」
生意気な 唇が そう 紡いだ 瞬間、 チャンスの 動きが 獣のように 狂暴さを 増した。
エリオットの 手首を 再び シーツへと 縫い付け、 その 自由を 完全に 奪う。
自由を奪われながらも、エリオットの 瞳の 奥にある 火は 消えるどころか、 さらに 激しく 燃え上がっていた。
「、あ……っ!」
チャンスの 指先が、 エリオットの 秘められた 熱へと 容赦なく 侵入していく。
その 指先が 触れる たびに、 エリオットの 身体は 弓なりに 撓み、 爪が チャンスの 肩の 肉へと 深く 食い込んだ。
仕立ての良い スーツの 肩口に、 じわりと 皺が 寄り、 破れるような 音が する。
だが、 チャンスは そんな 瑣末な ことには 目もくれず、 ただ 目の前の 奔放な 獲物を 己の 色で 塗り潰す ことだけに 没頭していた。
「おい、 エリオット……目を開けて、 俺を見ろ」
「……言われなくても、 ちゃんと 見てるよ……っ」
汗に 濡れた 金髪が 額に 張り付き、 エリオットの 呼吸は 完全に 乱れていた。
いつもなら 誰の 手にも 囚われない 自由な 風のような 青年が、 今は チャンスの 腕の中で、 その 支配に 狂わされ、 喘いでいる。
その 事実が、 チャンスの 歪んだ 独占欲を この上なく 満たしていく。
「お前が 俺の ペースを 乱したんだ。…… 責任、 取ってもらうぜ」
チャンスは 低く 囁くと、 限界まで 昂まった 己の 熱を、 エリオットの 最奥へと 一気に 突き崩すように 割り込ませた。
「あっ……!」
衝撃に、 エリオットの 視界が チカチカと 白く 染まる。
しかし、 彼は 逃げなかった。
押し寄せる 痛みを 伴うほどの 快楽に 身体を 震わせながらも、 その 長い 肢体で チャンスの 腰を 強く 巻き込み、 逆に 己の 内部へと 深く 引きずり込もうと する。
「ねぇ、 ……もっと、 来てよ…チャンス…っ」
その 狂気すら 孕んだ 無邪気な 催促。
チャンスは 限界を 迎えていた 理性の 最後の 糸を、 自ら ぶつりと 断ち切った。
「…… 望むところだ、 この 命知らずが」
そこからは、 どちらが 主導権を 握っているのか、 分からなかった。
激しく 突き上げる チャンスの 動きは、 ギャンブラーの 計算を 完全に 逸脱した 本能の 暴走であり。
それを 笑顔で 受け止め、 さらに 奥へと 誘う エリオットの 質量は、 狂った 強運を 凌駕する 底なしの 罠だった。
ベッドの 支柱が 軋む 音と、 肌が 激しく ぶつかり合う 生々しい 音が、 ネオンの 光の中で 延々と 響き渡る。
互いの 汗が 混ざり合い、 境界線が 曖昧に なっていく。
夜明けが この 狂った 街を 白日の 下に 晒すまで、 二人は 降りることを 完全に 忘れた プレイヤーのように、 何度も 何度も、 互いの 深淵へと 堕ちていった。
コメント
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チャンスとエリオットの、コインを巡る駆け引きがとても印象的でしたね。「表ならチャンスの勝ち、裏なら俺の勝ち」という台詞から、最後は二人ともコインの面なんて気にしなくなる流れが、感情の高まりを巧く描いていると思いました。エリオットの挑発的な強さと、それに応えて理性を手放すチャンスの対比が鮮やかで、単なる支配関係じゃない二人の危ういバランスに惹かれました。