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#veeronica
ゆ♨️
352
#azure
ゆ♨️
134
重厚なマホガニーの扉の奥、けたたましく鳴り響くサイレン。
きらびやかな夜の終わりを告げる、遠くの怒号。
正面から戦うのは、分の悪い賭け。
「こっちだ、命知らず」
手首を掴まれ、滑り込んだ高級なクローゼットの奥。
バタン、と閉じた扉。
一瞬にして世界は、漆黒と静寂に包まれる。
ひしめき合うカシミアのコート、シルクのドレス。
男二人が身を隠すには、あまりにも狭かった。
胸板から爪先まで、隙間なくぴったりと密着する体。
外からは、絨毯を蹴る無骨な足音と、荒々しい物音。
見つかれば一発でアウトの、張り詰めた空気。
口元を覆おうとするチャンスの大きな手を、エリオットの細い指先が拒んだ。
暗闇に慣れていく視界の中で、金髪の頭が可笑しそうに揺れている。
この最悪なピンチを、青年は心の底から楽しんでいた。
わざと身をよじり、黒スーツの生地をチャンスの衣服へと擦り付ける。
衣擦れの小さな音が、狭い空間に妙に大きく響いた。
「おい……静かにしろ」
耳元に寄せられた唇、極限まで押し殺した警告。
それさえも、エリオットにとっては極上の甘い挑発。
ネクタイを器用に手繰り寄せ、その耳元へ息を吹きかける。
「ねぇ…こんな極限のスリルの中でやったら、昨夜よりもっと気持ちいいのかな」
熱を孕んだ声音。
衣服の布地越しに、エリオットの膝がチャンスの股間をゆっくりと擦り上げていく。
外で、すぐ近くのドアが乱暴に蹴り開けられた。
追手たちの放つ殺気と、クローゼットの中に充満していく濃厚な体温。
相反するふたつの危機が、ギャンブラーの計算回路を狂わせていく。
「お前……マジで脳のネジが外れてんのか。見つかったらただじゃ済まねぇぞ」
ドス黒い衝動を堪えるように、低く鳴る喉。
外への警戒よりも、目の前の生意気な獲物を組み敷きたいという本能。
「いいよ、見つかったらその時はその時。……
それともチャンス、怖くなって降りちゃう?」
クスクスと、悪魔のように囁くエリオット。
理性の糸が、ぶつりと切れた。
「……降りるわけねぇだろ。お前がその気なら、この狭い檻の中で泣くまで突いてやるよ」
両手首を掴まれ、頭上へと乱暴に押し付けられた。
壁に固定される身体。
「……ん」
不意に触れられた熱に、短い吐息が漏れる。
外で追手がクローゼットの扉に手をかけようとする、運命の2分間。
命がけのスリルを最高のスパイスにしながら。
二人は暗闇の中で、互いの唇を狂ったように貪り合っていた。
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