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ゆ(旧「ゆゆゆゆ」)
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ゆ(旧「ゆゆゆゆ」)
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重厚なマホガニーの扉の奥、けたたましく鳴り響くサイレン。
きらびやかな夜の終わりを告げる、遠くの怒号。
正面から戦うのは、分の悪い賭け。
「こっちだ、命知らず」
手首を掴まれ、滑り込んだ高級なクローゼットの奥。
バタン、と閉じた扉。
一瞬にして世界は、漆黒と静寂に包まれる。
ひしめき合うカシミアのコート、シルクのドレス。
男二人が身を隠すには、あまりにも狭かった。
胸板から爪先まで、隙間なくぴったりと密着する体。
外からは、絨毯を蹴る無骨な足音と、荒々しい物音。
見つかれば一発でアウトの、張り詰めた空気。
口元を覆おうとするチャンスの大きな手を、エリオットの細い指先が拒んだ。
暗闇に慣れていく視界の中で、金髪の頭が可笑しそうに揺れている。
この最悪なピンチを、青年は心の底から楽しんでいた。
わざと身をよじり、黒スーツの生地をチャンスの衣服へと擦り付ける。
衣擦れの小さな音が、狭い空間に妙に大きく響いた。
「おい……静かにしろ」
耳元に寄せられた唇、極限まで押し殺した警告。
それさえも、エリオットにとっては極上の甘い挑発。
ネクタイを器用に手繰り寄せ、その耳元へ息を吹きかける。
「ねぇ…こんな極限のスリルの中でやったら、昨夜よりもっと気持ちいいのかな」
熱を孕んだ声音。
衣服の布地越しに、エリオットの膝がチャンスの股間をゆっくりと擦り上げていく。
外で、すぐ近くのドアが乱暴に蹴り開けられた。
追手たちの放つ殺気と、クローゼットの中に充満していく濃厚な体温。
相反するふたつの危機が、ギャンブラーの計算回路を狂わせていく。
「お前……マジで脳のネジが外れてんのか。見つかったらただじゃ済まねぇぞ」
ドス黒い衝動を堪えるように、低く鳴る喉。
外への警戒よりも、目の前の生意気な獲物を組み敷きたいという本能。
「いいよ、見つかったらその時はその時。……
それともチャンス、怖くなって降りちゃう?」
クスクスと、悪魔のように囁くエリオット。
理性の糸が、ぶつりと切れた。
「……降りるわけねぇだろ。お前がその気なら、この狭い檻の中で泣くまで突いてやるよ」
両手首を掴まれ、頭上へと乱暴に押し付けられた。
壁に固定される身体。
「……ん」
不意に触れられた熱に、短い吐息が漏れる。
外で追手がクローゼットの扉に手をかけようとする、運命の2分間。
命がけのスリルを最高のスパイスにしながら。
二人は暗闇の中で、互いの唇を狂ったように貪り合っていた。