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#文豪とアルケミスト
#BL
アオイ
870
図書館の夜は、いつもより静かだった。
潜書から戻った文豪たちが休息を取る中、一人だけ中庭に立つ人物がいた。
高村光太郎。
月明かりの下で、彼はただ空を見上げていた。
心平;……また眠れないんですか
聞き慣れた声に振り返ると、草野心平が立っていた。
光太郎;心平かい
心平;最近、ずっと一人ですよね。
光太郎は小さく笑う。
光太郎;一人のほうが気楽なんだ
その笑みはどこか作り物だった。
心平は気付いていた。
潜書のたびに光太郎の表情は少しずつ曇り、誰とも距離を置くようになっていることを。
心平;……本当に、それでいいんですか
問いかけても返事はない。
代わりに光太郎は視線を逸らした。
光太郎;僕の近くにいると、君まで苦しむ
心平;そんなことありません
即座に返した言葉に、光太郎は苦しそうに眉をひそめた。
光太郎;あるんだ
その一言は、心平の胸を締めつける。
戦いのたびによみがえる過去。
守れなかったもの。
消えない後悔。
光太郎は、そのすべてを一人で抱え込もうとしていた。
心平;……もっと頼ってください
心平はそう言いかけた。
しかし、その言葉は喉の奥で止まる。
もし踏み込みすぎれば、彼を傷つけてしまうかもしれない。
そんな迷いが、言葉を飲み込ませた。
その瞬間だった。
図書館全体が黒い霧に包まれる。
司書;侵蝕者!
警報が鳴り響く。
だが現れた侵蝕者は、これまでとは違っていた。
黒い霧は文豪たちの心へ直接入り込み、ささやく。
「その想いは届かない。」
「伝えたところで、すべて偽物だ。」
「お前たちの絆など、壊れてしまえばいい。」
光太郎の瞳が揺れる。
光太郎;……違う
そう否定しようとしても、霧はさらに濃くなる。
心平はとっさに光太郎の腕をつかんだ。
心平;光太郎さん!
その温もりだけが、かろうじて現実をつなぎ止めていた。
しかし黒い霧は二人を包み込み、静かに笑う。
「言えなかった言葉は、やがて闇になる。」
その声とともに、景色は漆黒へと染まっていく。
心平は光太郎の手を離すまいと力を込めた。
心平;今度こそ、あなたを一人にはしません
だが、その誓いをあざ笑うように、二人の姿は黒い霧の中へ消えていった。
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