「で?なんで飛鳥は急に此処に来たんだ?しかも俺と一対一で話したいって。」
「えっと……。」
ある日の夜。
飛鳥は室町達の居る分家を訪ねていた。
こんな時間にどうしたんだと首を傾げながら言う室町に、飛鳥は少しずつ話し始める。
「僕、結構皆の相談とか乗ってたりするじゃないですか…。ふと…僕、誰に相談とかすれば良いんだろうってなっちゃって。そうしたら1番最初に頭に浮かんだのが貴方だったので此処に…。」
「…俺に相談をしに来たと?」
「そゆことです…ほんと夜遅くに申し訳ない…。」
飛鳥は夜遅くに来たお詫びでもと、この前イギリスに
『たまには紅茶ではなくほうじ茶をあげます。最近美味しいほうじ茶を入手したのでね。』
と貰った茶葉を渡す。
「良いもの持ってるよなぁ、あのブリカスも」
室町は茶葉を手に取りそう呟くと、茶を淹れる為の急須を用意しに台所へ足を運ぶ。
それを手伝おうと飛鳥も立ち上がり、共に台所でお湯を沸かす。
そんな静かな空間で、ふと飛鳥は口を開いた。
「いや、僕よく黒歴史を弄られるじゃないですか皆に…。」
「え?」
「え?」
2人は驚いた顔で目を合わせ、少しの沈黙が続く。
「おま…今更だな…?」
「なんですか今更って!ってか何言ってんだコイツみたいな顔辞めろ!」
「…んーと…そ、それで?」
「どうしたら弄られなくなるのかと思って…。」
少し笑いながら言う室町に、飛鳥はムスっとした顔で問う。
湯が沸き、室町の部屋まで急須を運ぶと静かに机の上へ置く。
「まぁお前が何かしてもこの弄られるという現状は変わらないと思うがなぁ。」
室町は淹れたてのほうじ茶を堪能しながら、呆れた声で言う。
──というか…
「何故俺なんだ…?」
「え?何がっすか?」
「いや相談相手俺で良いのかなって思って。」
「逆に君以外に相談したらどうなると思います?」
「…」
なんか察した気がする。
そんな話をしていると、部屋の向こうの静かな廊下に1人の足音が響いた。
「誰か起きたんですかね?」
「安土桃山じゃねえかな。アイツ腹減ったら夜中でも起きるから。」
「夜食はいけませんねぇ。」
「腹が減ったの…。」
安土桃山は目を覚ますと、時間を確認する。
日本から貰った時計の短針は丁度夜の十一時を指していて、安土桃山はそれを確認すると静かに布団から立ち上がる。
廊下に出ると、向こう側の壁が反射してるのかは分からないが、少し明るくなっていた。
(こんな夜中に何をしているのかのう?いや我も大概じゃが…。)
光っている方に足を運ぶと、その光は室町の部屋からのようだった。
安土桃山はそんなこと気にせず台所へ一直線に向かう。
「飛鳥?」
飛鳥はある一つの茶器を気に入っているのか、ずっと使っている。安土桃山はその茶器がなくなっていることに気が付いたのだ。
──そういえば先程、室町の部屋に2人の気配がしたような…という事は室町と飛鳥が話しておるのか…?
ひとつ湯飲みを取ると、水を入れ喉に流し込む。
少しは腹の虫が収まるだろうか、と3杯ほど水を飲んでみるが腹がたぷたぷになっただけだった。
「はぁ。」
ため息を一つをつくと、部屋に戻ろうと思い、また歩き出す。
行った道を逆方向に進んでいく。すると当然だが室町の部屋の前を通り過ぎる。
その時中から室町の声が聞こえた。
『だーかーらー!お前なんで毎回毎回どうでも良い事気にして黒歴史認定してんだよ!』
『だってみんないじってくるし!』
2人ともやけくそになっている気がする。
そして聞いている限り、室町の言っていることは正しい。
いや、飛鳥の言っている事も正しいのだが。
安土桃山は思わず中に乗り込むと、飛鳥に一言言い放つ。
「飛鳥!お主の言っておる”黒歴史”は黒歴史ではないのじゃ!良いか?!」
「やっぱり、起きてたのは安土桃山だったんですね…。」
「およ?バレておったかな?」
「僕にはなんでもお見通しです。」
「安土桃山、やっぱりお前も飛鳥のあれは”黒歴史”じゃないと思うよな!」
「当たり前じゃ。あんな使い方を誤った如きで黒歴史とか感覚どうなっとんのじゃ。」
安土桃山は『此奴の感覚が知れねえ』という目で飛鳥をチラリと見る。
飛鳥は聞こえないように小さい声で
「やはり此奴が居る家で相談事をしてはいけないか…クソ…」
と呟いた。
コメント
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飛鳥姉さんの黒歴史めっさ気になりますね... それを室町に相談しているのもよきよき( ᐛ )((
自由気ままな安土桃山さんが可愛いですね〜! おかん要素がある、室町がいい....