風が妙にぬるく、頬に当たると少々気持ちが悪い。
そんな夏の深夜、私は前勤めていた学校、「雨谷(あまがい)小学校」にやってきた。
こんな真夜中に学校なんて気味が悪いが、絶対に果たさなければ行けないことがあるのだ。
「こんばんはー……」
校門を開けながら、勤めていた時のなごりかつい呟いてしまう。
ここには誰もいないんだと思い直し、玄関の扉に手をかけた……その時。
「うわっと、先客だ」
「きゃあっ!?」
いきなり後ろから男の声がして、びっくりした表紙にしりもちをついてしまう。
「大丈夫?ここ怖いっすねえ」
差し出された手を取った。人に反応した街灯が明かりをともすと、相手の顔がはっきりわかった。
茶髪でいかにもやんちゃそうな顔立ちだ。それに、驚いたのは明らかに中学生か高校生くらいの背丈、声なことだ。
「あの…失礼かもしれないけど、中学生?」
「マジで失礼っすね!今年で大4っすよ」
あまり信じられないが、肝が座っている様子から見ると本当かもしれない。
「そうなのね。ええと…私は栗本。少し用があって来ているの。あなたは?」
「俺っすか?俺はカズ。霊能者のバイトやってるんで、それで来たんすよ。ま、見えたとこで得とか無いんスけど」
ちょっとも、というジェスチャーをしながらカズはにたにた笑った。かと思ったら、目線を少し落とすと少し引きつったような顔をした。
「ちょうど良かったっす、探索中暇なんで、着いてきて貰えます?ええと、栗原さん」
「…私も探索したいし、良いよ。でも栗本ね」
ギィィと嫌な音を立てて、玄関のドアが開いた。中は少し埃臭く、当然ながら真っ暗だ。
「雰囲気出てるっすねー」
「…薄気味悪いわね」
しかしカズと会ったのは好都合だったかもしれない、大人の私でもかなりしり込みしてしまうほど、夜の学校は怖いのだ。
ガチャ!
「おっ?」
「…え?」
まさか、と思い玄関のドアを引っ張る。
しかしもう遅かったらしく、どんなに引っ張ろうがドアはビクともしない。
「なんでカギ掛かっちゃったんすかね?」
「…分からないわ、老朽化の影響かも。探索途中に非常口があるはずだわ」
「詳しいんすねー」
「元々ここの職員だったのよ、まあ、色々あって辞めちゃったけど。」
カズはふーん、と少しも興味無いような素振りで言った。
音がしないのも怖いから、私はカズにこの学校のことを話した。
それは5年前の、学校を廃校に追いやったある事件の話だ。
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