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「柔 太郎〜」
「ん?どしたの」
「何でもない〜」
「ははっ何それ…可愛いんだから…」
楽屋で堂々と行われる柔太郎と太智のイチャイチャにもう慣れてきてしまった自分が怖い。
他のメンバーも何も気にしていない。最初こそ辟易したがもういつもの光景として馴染んでしまっていた。
舜太が「仲良しやなぁ」なんてニコニコしているぐらいだ。
…少し気になって舜太の顔を見つめる。俺の視線に気づいた舜太は「?」を浮かべるような表情で首をかしげてくる。
ぱっと目線を外しイヤホンをつけた。
太智は、甘えるのがとても上手い。
普段から人と親しくなるのが上手いやつだが、恋愛においてもそれは健在らしい。素直に愛情を示せるタイプで俺と真逆だ。
そしてそれは舜太も同じ。いつも俺にストレートな”愛の言葉”を伝えてくるし行動でも示してくれる。
でも俺は柔太郎のように素直に受け取るような事ができず、素っ気なく、たまには突き放すように返してしまう。それでも全くめげないのが舜太という人間だ。
多分それは俺が本当に舜太に惚れているのを分かっているからなのだろうが…俺が舜太の立場だったらきっと耐えられないだろう。
舜太が俺に愛を囁くたびに心臓がドキドキするし、触られたり抱きしめられると心地がいい。
俺に直向きに向き合ってくれる舜太を心の底から愛しいと感じている。
でも俺はそれは言葉として、態度として現すことができないのだ。
自分でも難儀な性格だと思う。捻くれ者で素直になれない。恋愛というものに向き合うのが恥ずかしい。
それは相手が男で、俺がいわゆるネコ…というものなのもある。年上としてのプライドや、男としての尊厳…色々なものも重なっている。
それでも舜太が好きだ。
こんな俺の相手をできるのは舜太だから、だと思う。
俺も太智みたいに、少しでも素直になれたら舜太は喜んでくれるんだろう。
もしかしたら、いつか、俺の態度に嫌になる事もあるのかもしてない。
そうしたら、俺は……。
「じーんちゃん」
「っ」
そんな考え事をしていると突然舜太が隣に座ってきた。
「動画、再生されてないで?」
「え、あ……」
俺のスマホにはただのホーム画面が表示されていた。思わず焦って言葉が出てこない。
「どしたん?何かあった?」
舜太が心配そうに俺の顔を覗きこむ。それにすらドキッと鼓動がなる。
「…いや、別に、何も」
「絶対なんかあるやつやーん!」
茶化すように言っているが舜太なりの励ましなのだろう。こいつは普段少し気の足りない事もあるが、こういう時はちゃんと優しいのだ。
心を落ち着けてすうと息を吐き、舜太に耳打ちをした。
「今日、お前の家行っていいか?」
「えっ!?」
楽屋に響く大きな声を出す舜太に他の3人が一斉に振り向く。
「あ!ごめんごめん何でもない!」
「いきなりびっくりするやん〜何〜?」
「いやマジで何でもないって!」
食いついてくる太智を柔太郎が納めてその場は何とかやり過ごせた。
「ばかお前、大声出すなよ…」
「…だって、仁ちゃんから誘ってくれたん初めてやから」
小声で文句を言うと舜太が反省しながらも嬉しそうな顔で俺を見つめる。
そういえば、そうか。今まで舜太が当たり前のように俺を誘ったり家に連れて行ってくれていた。
自分で言ったことをすごく後悔する。俺はなんて無神経なんだろう。
そんな事を思う俺とは裏腹に舜太は笑顔で「嬉しいなぁ」なんて言いながら俺にくっついてくる。
愛おしいと思うと共に自分に対してうんざりしてしまった。
「入って入って!」
「…おう」
いつもよりテンションの高い舜太に部屋へ通される。靴を脱ぐとすぐに俺の手を握ってリビングへ連れて行かれた。
「あ!待ってな、ちょっと散らかってるから片付けするわ」
「…手伝う、俺が急に言ったし」
舜太は楽屋だとよくものを散らかしっぱなしにしている。だが家は意外と綺麗だなといつも思っていた。それが自分のためなのだと知って心が疼く。
「これ全部洗濯物か?」
「うん!ありがとー仁ちゃん!」
それを言うのは俺の立場なのに、なんて思いながら服を集めて風呂場に向かった。
選択籠にそれを入れた後、ふと鏡が目に入る。俺の暗い表情。
kimi
kimi
ああ、こんなんじゃダメだ。そう思い自分の顔をパン!と叩く。覚悟を決める。
「あ、仁ちゃん〜こっちも片付いたで!おいで〜」
ソファに座って待っていた舜太が嬉しそうに俺を呼ぶので隣に座った。
「今日はどうしたん?なんか悩み事?なんか様子変やったし…」
「違う、ただ舜太とすごしたくて…」
俺の言葉に舜太がきょとんとする。当たり前だ。こんな事言ったことがない。
無言の空間に耐えられず舜太に抱きつく。
「仁ちゃん?」
ここからどうしたらいいんだ。甘えるってどんな風に?行動は決めたがその後に何をすれば分からず頭がぐるぐるする。
「何?甘えたい気分になっちゃったん?」
そんな俺を舜太はあやすように抱きしめ返す。その声はとても嬉しそうで甘かった。思わず言葉が漏れる。
「…俺、いつもその…お前に冷たい態度ばっか取ってるけど、……」
言葉がつっかえる俺の背中を舜太がぽんぽんと叩いてくれる。
「うん」
「素直になれないだけで、ちゃんと、お前のこと…好き、だから……」
「…うん、分かっとるよ」
優しい舜太の声が耳元で聞こえる。
「だから、いつもごめん……」
ぎゅうと舜太にさらに強く抱きつく。普段言葉を扱うことを得意にしてるのに、こんな大事な時に思っていたことを上手く伝えられない自分が嫌になる。
「ほんまにかわええなぁ仁ちゃんは……」
舜太の手が俺の頭を撫でる。
「それで今日悩んでたん?」
「…だって太智とか、いつも柔太郎にベタベタしてるし…お前それ、よく見てるじゃん」
「ん?微笑ましいなぁって思ってるだけやで?」
舜太の声のトーンで嘘でないのが分かった。
「でも、俺ってああいう風に可愛く…できないから……舜太はああいう風に接する方が、嬉しいだろ?」
可愛い、なんてあまりに自分らしくない言葉に息がつまる。
「何言ってんの?仁ちゃんはいっつもかわええよ」
あまりにアッサリとした返しに面食らう。体を放して舜太の顔を見るといつも通りの表情で俺を見ていた。
舜太は嘘が下手だ。だから本当のことを言っているとすぐに分かる。
「…でも俺素直じゃないし、甘えたり…できないし…」
それでも不安になり卑屈に言葉を紡ぐ。
「仁ちゃんのそういうとこ、俺大好きやもん」
ノータイムで舜太が微笑みを浮かべながら返してくる。
「………嘘つけ」
「いや、そりゃー今日みたいに甘えてくれたら嬉しいで!もちろん!でもいつもみたいに素直じゃない仁ちゃんもすっごく可愛いねん。俺のこと好きなのに素直になれなくて、意地になっちゃうの」
その言葉を聞いてかっと顔が赤くなるのが自分でも分かった。
「あーそれ!そういうとこ!仁ちゃん隠せてると思ってるけど態度でバレバレやで?ほんまに可愛い」
「もう、いい」
「ほら、そうやってすぐ照れて目逸らすとこも。ぜーんぶ可愛い」
俺を指差しながらオーバーリアクションをする舜太の言葉に心臓が破裂しそうになる。恥ずかしすぎる。もうやめてくれ。
膝においた手をぎゅうと握って下を向いていると不意に顔を持ち上げられる。
「……心配せんでええで」
急に真面目な顔で舜太が言う。
「俺はそのままの仁ちゃんが大好きやから」
そう言いながら俺を優しく包み込む。俺はその背中に手を回すのが精一杯だった。全部見透かされていた。
「あ、でもたまには甘えてもええで!特にベッドの中とかな?」
「…アホか」
能天気な舜太の言葉にふと笑みがもれる。悩んでいた自分がバカみたいに思えてきた。
舜太はこういう男なのだ。
でもたまには、もう少し素直になってもいいと思った。こいつがこうやって受け止めてくれるのだから。
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捻くれてちょっとナイーブなじんとくんと、ストレートポジティブなしゅんちゃんの関係性が好き!というのを表現したかったのですが、なんか思ったより真面目な話になってしまいました。
甘えるパートちゃんと作りたかったのに私の中のじんとくんが頑張りきれなかった…。(また別で酔って甘えるじんとくんとか、さらっとした話で無念を晴らしたいです)
なお、ベッドの中だとじんとくんの方が意外と大胆で、だいちゃんの方がイヤイヤ恥ずかしい!のタイプという裏設定があります。
ツアー二次落ちたのショックすぎてしばらく書けないかも…と思っていたのですが嬉しい感想頂いたので勢いで書ききりました!いつも読んでくださったり感想くださってありがとうございます😭