テラーノベル
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「なぁ、退子さん。まずは座ってくれ。長旅で疲れませんでしたか」
案内された離れの客室。
襖を閉めた途端、土方の声からいつもの鋭さが消え、耳を疑うほど柔らかな響きが混じった。
土方は甲斐甲斐しく座布団を整え、お茶を淹れる。
その手つきは真剣そのもので、まるで極秘任務に当たる密偵のようだ。
「……あ、ありがとうございます(小声)」
[[rb:山崎 > 退子]]は、総悟に叩き込まれた「か細い裏声」を絞り出し、しおらしく座った。
内心はパニックだ。目の前の土方は、屯所で見せる「鬼の副長」の面影など微塵もなく、ただただ恋する一人の男の顔をしていた。
(副長、目が! 目が優しすぎて怖いんですけど! 普段の俺にもその百分の一でいいから優しくしてくださいよ!!)
「……退子さん。こうして二人きりになると、なんだか……言葉が出てこねぇな」
土方は盆に載った茶碗を見つめたまま、不器用に頬を染める。
「俺ァ、いつもは刀を振るうことしか考えてねぇ無骨な男だが……あんたの前にいると、自分がひどく情けねぇ男に思えてくる。……あんたのその、静かな横顔を見てるだけで、胸の奥が温かくなるんだ」
(やめて! ポエムの直撃は精神にくる! そもそも中身はアンパン食いながらミントンしてる部下ですよ!!)
土方のあまりに真っ直ぐな言葉に、山崎は罪悪感で胃が痛くなる。
そんな時、ふと天井から「カサリ」という不自然な音が響いた。
(……あいつだ。絶対に隊長が天井裏に潜んでやがる……!)
山崎の予想通り、屋根裏では総悟が暗視カメラを構え、土方の赤面シーンを逃さず記録していた。
「……退子さん、どうした? 顔色が悪いようだが……。ああ、そうか。まずは風呂で旅の汗を流してきなせぇ。俺ァ、ここで茶でも飲んで待ってるから」
土方は鼻の下を伸な必死に堪え、退子を脱衣所へと促した。
「…………(深々と頭を下げて、逃げるように風呂場へ向かう退子)」
山崎は、着替えの籠を抱えながら絶望の淵に立たされていた。
これから、化粧を落とさず、かつウィッグを死守しながら温泉に浸かるという、超難易度の潜入捜査(?)が始まるのだ。
(……温泉入って、髪解いて、浴衣に着替えて……。土方さんのあの熱視線、俺、最後まで耐えられるのか……!?)
コメント
1件
やっと第14話まで追いつきました…! 土方さんの「鬼の副長」がまさかのポエム全開モードになってて、もう衝撃がすごすぎます(笑)あの鋭さが消えた柔らかさ、絶対に山崎さんにはトラウマ級ですよね。それにしても総悟の暗視カメラ…天井裏で何やってるんですかこの新選組は! でも、こういうコミカルな隙がキャラの魅力を引き立ててて、読んでるこっちまで顔が緩みます。次がどうなるのか、もう気になって仕方ないです…!