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テルの外をうろうろして見つかってはいけないため、美晴は部屋から一歩も外に出ずに部屋で夕飯を食べた。現在食事時間であるため、彼らはホテル内にある料亭で食事を楽しんでいるのだろう。盗聴器は作動せず会話はなにも聞こえてこない。
美晴が部屋にある手洗いに行こうと思った時だった。下腹部に鈍い痛みが走り、体内からなにかが吐き出されるような嫌な現象が起こり、違和感を感じた。
(うそ……このタイミングで……!)
女性特有の鈍痛、血が流れ出る嫌な様子――…今、流産した日からずっと止まっていた生理がきた。まさかこの状況で生理になるとは頭になかったため、その類の用意はない。このままでは困るので、一刻も早くホテル内にある売店へ行かなければ。
私服だと目立つため、見つからないように旅館の浴衣に着替えて急いで売店に向かった。ホテル内にある売店はそれなりに広く、実に様々な土産物を置いていた。日用品もしっかりと充実してあったので、美晴は生理用品を購入し、ホテル内の手洗いに寄った。
胸を撫でおろし、飲料水を買って部屋へ戻る最中のこと。廊下の奥から相川久次郎と若い女性が歩いてくるのが見えた。
(ええっ!? どうして相原さんがここに!?)
浴衣に忍ばせてあったペン型カメラを作動させた。いつ、いかなる時でも幹雄と対峙できるように持ち歩いている。久次郎と若い女性の姿を撮影していると、逆の方から聞きなれたこずたん、という幹雄の声も聞こえて来た。
(ああっ、どうしよう!?)
この廊下は客室が並んでいるだけで、前方は久次郎、後方は幹雄がやって来る。まずい、囲まれてしまった。久次郎の方へ行かなければ部屋に戻れない。しかしそのまま行けば確実に彼の目に留まり、見つかってしまうだろう。
幹雄たちに見つかるともっとまずいが、久次郎に声をかけられたら一巻の終わりだ。
(どうしよう……どうしよう!!!!)
万事休すか――