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ネタバレするけど、たった一人の驚かなかった男の子は、「青月 凍」くん!5話から出るよ!
書くの大変そ〜〜〜〜〜〜💦💦 お疲れ様🔥
自信のリンク︰
大会会場のロビーには活気が満ちていた。紬はスケートバッグを肩にかけ、少し緊張した面持ちで辺りを見渡していた。そんな彼女の視線がロビーの一角にいる成瀬コーチを捉える。コーチはこちらに気づくと、優しい表情を浮かべながら歩み寄ってきた。
「紬さん、今日はいよいよ大会ですね。調子はいかがですか?」成瀬コーチの穏やかで丁寧な声に、紬はほんの少し肩の力を抜いた。 「少し緊張しています。でも、練習で教えていただいたことを思い出して、精一杯頑張ろうと思います。」紬は静かに答えながら、コーチの目をまっすぐに見つめる。
成瀬コーチは頷きながら柔らかく微笑んだ。「それで十分です。あなたの滑りには、他の誰にも真似できない魅力があります。どうか焦らず、ご自身のペースで滑ってくださいね。」
その言葉に、紬の緊張した表情が少しだけ和らぐ。「ありがとうございます、コーチ。自分の滑りを信じてみます。」
成瀬コーチは軽く頷くと、「それでは、リンクへ向かいましょう。私はリンクサイドで見守っていますから。」と声をかけた。紬は力強く頷き、選手控え室へ向かった。荷物を置き、静かに準備体操を始めると、心を整えるように深呼吸をしてからリンクサイドへと歩みを進めた。その背中には、不安と同時に確かな決意が漂っている。
リンクサイドに到着した紬は、静かにスケート靴を履き始めた。氷の冷たさを感じながら、「私らしく滑ればいい」と心の中で呟く。彼女の瞳には、未来への希望が輝いていた。
続いて始まった公式練習は、選手たちが実際の大会リンクで滑りの感覚を確認し、自分のプログラムを調整する大切な時間だった。リンクの上には、紬を含めて数名の選手が滑り出していた。紬は、まずゆっくりと周回を始めて氷の状態を確かめる。氷が少し柔らかい部分があることに気づいた彼女は、コーチの言葉を思い出しながら、注意深く滑り続けた。
「焦らず、動きのひとつひとつを確認することが重要です。」成瀬コーチの声がリンクサイドから届く。紬はその言葉に従い、自分のプログラムの動きの一部を実際に試してみることにした。ジャンプの助走に入ると、彼女は心の中でリズムを数え、足元の感覚に集中する。そして、勢いよく跳び上がり、柔らかに着氷。少し不安定だったが、彼女は再び立て直し、次のステップへと移った。
周りの選手たちの滑りを眺めながら、紬は自分のペースで練習を続けることの重要性を感じた。この公式練習の時間は、自信を育むだけでなく、本番の演技のイメージを描くための貴重な準備時間でもあった。
一歩前の輝き︰
公式練習を終えた紬は、リンクサイドを離れ控え室へ戻った。氷上での感覚を確認できたことに、少しだけ安心した表情を浮かべながらも、次は本番への緊張感がじわじわと迫ってきた。
控え室では他の選手たちがそれぞれの準備を進めていた。その中に紬も加わり、静かにスケート靴の紐をきつく締め直す。そして、自分のプログラムを頭の中でひとつひとつ確認しながら、動きをイメージする。コーチから受けたアドバイスが心の中で繰り返される。
「ジャンプの助走はしっかり焦らず。スピンは腕の形を保ちながら。」紬は深呼吸をしながら、その言葉を思い出し、落ち着きを取り戻していく。
控え室での静かな時間が紬の心を整理するための大切な瞬間である。
そうしている間に他の選手たちが次々と演技を終えてくる。他の選手には成功率の高いもの、基礎の技を演技しているものがいた。それを観客席から見ていた成瀬コーチは「今回は高得点が多い。空色さんは多分、点数は3位ぐらいになるだろう。」と考えながら少し焦っていた。
それでも、控室のテレビから見ていた紬は少しも焦らなかった。「私には表現がある。自分を信じて。これは得点が何点になろうとアイススケートを楽しんだもの勝ちだ!」と、彼女には『希望』が見えていたのだ。
そして、紬の出番が来た。アナウンスの人が「エントリーナンバー17番 ルクス西川FSC 空色紬さん。」と言うと紬は上着を脱いでリンクに向かった。リンクの中央に立って深呼吸をし、氷の冷たさと会場の静寂を感じながら、ポーズを取った。
(give it backが流れ始める)
音楽が流れ始めると同時に、彼女の動きがゆっくりと氷の上に広がり始めた。最初の シングルトウループ を決める瞬間、まるで桜の花びらが風に舞うように軽やかな回転を見せた。その優美な動きに、観客は思わず息をのむ。
次に、 サルコウジャンプ を飛ぶとき、両手をそっと広げながら氷上に描く軌跡は桜の枝のようにしなやかだった。着氷すると、彼女の滑りは再び桜並木の間を駆け抜ける風のように流れる。
シングルサルコウ では、桜の蕾が膨らんで開花する瞬間をイメージさせるような力強さと優雅さを兼ね備えていた。そして、最後の シングルアクセル に向けて、彼女の動きはまるで桜の木々に光が差し込むように輝きを増していくとったら、 ゆっくりとひざまずいていき。
4級の紬の段階では難易度が高すぎる、5級の子でも難しいという子が多い。それなのに、とても楽しそうで、満開の桜の枝から花びらが静かに舞い散る瞬間を映し出しているかのようだった。その動きの一つひとつに、春風のような優しさと、桜の儚さが宿っていた。それを見ていた観客も選手も驚かされた。たった一人の男の子を除いて。その男の子はこう思っていた。「速さが全く無いけどこれは完全に1位だな。」と。成瀬コーチは驚きのあまり言葉を失った。「もしかしたら2位かもしれないでも、ブロークンレッグで空色さんらしくできたので良かった。」と考えながら。
決めポーズを終え、観客席から拍手が鳴る。
それに向けて紬は晴れ晴れとした笑顔を観客席に向けながらおじぎをした。結果は1位! 紬は一歩前のブロークンレッグという輝きで優勝できたのだった。
つづく