「私はまだ求めてしまっている。私の中での先輩は、誉田美蘭だけなんです」
彼女の叫びが、春風のようにやさしく突き抜ける。それは同時に、今の私がいかに冷えているのかを教えてくれた。
「この物語は、単なる鬱憤晴らしで終わっていいほど安くはない! あなたが返ってきて、それでちゃんと笑えないと、何の意味もないじゃないですか!
お願いです。また一緒に小説作りたいんです。エゴに価値を押し付けるような、やっすい評価に凹んで……いつまで寝てるつもりですか!
好きなんです、愛してるんです! それさえあれば、何だってできるって、そう私に教えたのは誰ですか! 先輩じゃないですか、バカ!!」
エゴそのものが叫んでいた。その気迫ゆえか、それとも単にうるさかったのか、小鳥たちは鳴きながら飛び立った。
私の正面に立つ少女は、もう少女ではなかった。そのことを今になってようやく知った。涙で塗りたくられたその顔は、朝日に触れ、輝いていた。彼女の呼吸音がさみしく響く。
ああ、ずっと時計の針が止まったのは、三年前からと思っていた。だが、違っていたのだな。本当はこういった、人間としての理念を捨てた時、小説を捨てた瞬間だっただなんて。本当に気付かなかった。
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