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すぐ近くで無邪気に遊ぶ雪都を見てると、あんなに一生懸命自分の想いを語ってくれた慶都さんが、他の女性と付き合ってるなんて考えられなかった。



あの人は、間違いなく誠実な人だとわかったから。



「マリエさん、ごめんなさい。マリエさんが慶都さんを好きなことはわかりました。でも慶都さんの気持ちは…マリエさんにあるのでしょうか? すみません、失礼な言い方をして」



私は深く頭を下げた。



どんな言葉を選べばいいのかわからず、上から目線のような気がして心が痛くなった。



「私、慶都さんにキチンと結婚を申し込みました。きっと了承して下さると思っていたのに、返事は……NOでした。自分には好きな人がいて、その人にプロポーズして今は返事を待っているって……」



「プロポーズ……」



それって……



「慶都さんは、その相手があなただと話してくれました」



「えっ?」



「あなたの返事がOKなら、一堂社長に話して結婚を許してもらうと。だからまだ誰にもあなたとのことは言わないでくれと言われました。あなたとの子どももいるって聞いて驚きました」



「慶都さんは、あなたにそこまで話したんですか?」



「ええ。私は白黒ハッキリしないと気が済まないので。誰が好きなのかを話してくれないなら、九条社長に直談判して私達の結婚を許してもらうと言いました。そしたら……自分には私を愛する気持ちがないから止めてほしいと。そう言って出たのがあなたの名前です」



「私の名前を……」



「でも私ね、慶都さんはあなたに誘惑されたんだと思ってます。あなたに騙されてるんだと。麗華さんなら諦めました。でもあなたは……本物のお嬢様じゃない」



慣れてはいても、すごく悲しい言葉だった。



心に刺さる感覚、やっぱり痛いよ。



「マリエさん、私は慶都さんを誘惑できる程、魅力的な女性ではないです」



慶都さんみたいな素敵な男性と、本当に私なんかが結ばれてもいいの?



マリエさんと話していたら、だんだん不安になってきた。



目の前にいる本物のお嬢様や麗華には、とても魅力がある。



女性として……全然、勝てる自信がない。



なのにどうして慶都さんは私を?



何だか良くわからなくなってきた。



「マリエさん、お願いします。とにかく今は誰にも話さないでください。雪都のことも、私と慶都さんとのことも、すごくプライベートでデリケートな問題ですから」



「それはあなた次第。あなたが自分の身分をちゃんとわきまえるなら……私はあなたを尊敬します。まあ、良く考えてみて下さい。彩葉さんの幸せはもっと別のところにあるんじゃないですか?」



マリエさんの考えに、今、私が意見しようとしても何にもならない。



この人の価値観は、誰が何と言ってもきっと変わらないだろうから。



でも、私は、マリエさんの言葉に揺れてしまった。



自分の立場をもう少しちゃんと考えるべきなのか……そんな思いが心に降ってきた。



1度は慶都さんの未来を考えて身を引こうと決意したのに、再会してから私の気持ちはどんどん慶都さんに引き寄せられて……



このまま自分の想いだけで突き進んだら、結局、最後には慶都さんに迷惑をかけてしまうの?



九条グループを守っていくには、マリエさんみたいなハッキリと物事を決めれる人と結ばれた方がいいのかな?



何だか切なくて、やるせなくて、悲しい気分。



マリエさんは「答えを待ってます」と言い残して颯爽と歩き出した。



綺麗に揺れる長い黒髪の後ろ姿。



オシャレな洋服、靴、バッグを身につけて……



全てハイブランドなんだろうけど、私にはどれも似合わない。



もちろん、そういう贅沢な生活を選ばなかったのは私自身。



それを後悔してるわけじゃないけど……



ああ、もう、今日は雪都と楽しい時間を過ごすはずだったのに。



こんなにも複雑に心が揺れ、一喜一憂して、いったい私は何をしてるの?



答えが出せない毎日に、ただでさえモヤモヤしてるのに、さらに難しい問題を投げかけられた気がして。



おもちゃでごちゃごちゃに散らかった保育園の部屋よりも、もっともっと私の頭の中は整理できない状態になってしまった。



小さな子ども達にだって、お片付けはできるのに。



まだまだ人間として未熟な自分が、本当に情けなく思えて……



笑顔で私を見つめる雪都のことを、ギュッと抱きしめたくなった。

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