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「は~い。みんな今日はおうちの人と一緒にたくさん遊びましょう」
1年に1度の保育園での「夏祭り」の日。
先生達で作った手作りの遊びに、子ども達は興奮してる。
女の子も男の子も浴衣や甚平を着て、どうしようもないくらい可愛い。
女の子は今どきのフリフリがたくさんついたピンク系の洋服みたいな浴衣、髪の毛も可愛く結ってもらってる子が多くて本当にお人形さんみたい。
雪都も、おじいちゃんに今日の日のためにプレゼントしてもらった甚平を着て参加してる。
弥生と理久先生との飲み会に行った夜に、わざわざ雪都と一緒にお店に買いに行ってくれたって。
父に、雪都の甚平姿の写真を送ったら「可愛い、可愛い」って、ものすごく喜んでくれた。
おじいちゃんにとって、孫って……それほど可愛いものなんだなって思った。
雪都をこんなにも大切にしてくれる父には感謝しかない。
今日は仕事で参加できないけど、父には写真や動画をたくさん撮って見せてあげるって約束してる。
夏祭りは保育園でも一大イベントだから、先生達も総出で参加、みんな気合いが入ってる。
特別に近くの広めの屋内遊技場を借りて、おもちゃの金魚すくい、ヨーヨー釣りや輪投げ、くじ引きなどの屋台、簡単なボーリング、などなどたくさんの遊びを用意した。
写真係、子ども達と一緒に遊んだりする係、お店の係などを、先生達みんなでそれぞれ役割を決めて取り組む。
普段は仕事で忙しいご家族の方達も参加して、子ども達と楽しげに遊ぶ姿を見てると、こちらの気持ちまで自然に温かくなる。
子どもの目線にまで下がり、一緒にヨーヨー釣りをして「頑張れ、頑張れ」って声をかけてあげてるお父さん。
顔をほっぺに近づけ、ピースして写真に写る母娘。
おもちゃのボーリングを立てるのを手伝ってくれるお父さん、まだ並べ終わってないのにボールを投げるたいちゃん。
孫の遊ぶ姿に手を叩いて喜ぶおばあちゃん。
どこを見ても、家族っていいなって思える瞬間ばかりだ。
制作過程はいろいろ大変だったけど、こんなにも笑顔がいっぱいのお祭りになって、先生達はみんな「頑張った甲斐があった」と思っているに違いない。
雪都は、さっきから理久先生に遊んでもらってる。
金魚すくいで楽しそうに盛り上がってる我が子の姿を見るとやっぱり嬉しくなる。
理久先生は子どもの扱いがとても上手いから、みんなに懐かれてるけど、特に雪都は理久先生が大好きなんだ。
「ん?」
その時、賑やかだった部屋の空気が一瞬にして変わった気がした。
急に、部屋中が華やかでキラキラした雰囲気に包まれ、ある男性の出現にお母さんや先生達の視線がその一点に釘付けになった。
空気を一変させたのは…慶都さんだった。
ちょっと待って、どうして?
どうして慶都さんがここにいるの?
私は、あまりの驚きに自分の立場も忘れて、その場で呆然としてしまった。
慶都さんは、入口に立つ案内役の先生に自分の名前を言ってから部屋を見渡した。