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坪井は、呆れた声を出す。
そのあとに、おまけとは思えない大きな溜息も続いた。
真衣香は基本的に人の溜息が苦手だ。
良い意味を持たないことが多いから。
「ご、めん。 優里と話せるとき以外はつい調べちゃったりで……。 実体験がないもので」
だから自然と謝罪の言葉が出た。
しかし坪井から帰ってきた言葉は予想外のものだった。
「……お前凄いね」
肩を縮こまらせていたが、言葉どおり坪井に怒っている様子は見られない。
「す、凄い?」
「うん。 俺の想像範囲外なんだよね、返ってくる言葉とか反応が、立花はいつも。 全然予測できない、だから気になって仕方ないし目を離したくないって思っちゃうだよなー、多分」
真衣香の言い訳を聞いてくれていたのか、いないのか。
わからないが何かを噛みしめるように言った後、突然下を向いてしまったまま反応がない。
やがてもう一度大きく息を吐いて、坪井は真衣香の肩に、こつん。 と、おでこをのせた。
「別に悪いことじゃないし、お前じゃなくてもあれこれ調べる人は調べるけどさ」と、前置きのように聞き慣れた優しい声で言った後。
「でもさ、立花が聞かなきゃいけないのって、ネットの、顔もわかんない奴らの声じゃないし」
ボソッと低い声で言われてしまう。
「えーと、優里ちゃん? に相談する機会とか、これから出てきてもさ、それも。どっちも、答えてるのは俺じゃないってわかる?」
相変わらず低い声で淡々と言葉にされ、真衣香は再び肩びくつかせた。
それはそこに頭を預ける坪井へとダイレクトに伝わっていたようで。
「待て待て、ビビんないでよ、怒ってないから。ただ、お前は人と正面切って話す前に、あれこれ考える癖があるだろ?」
「癖?」
の、つもりはないのだが言われてみればそうなのかもしれない。
「そ、うだね……、そうかも」
「でも考えても予想しても今お前が知りたい答えは、俺の中以外にないのわかる?」
坪井の体勢は変わらない。
だから、真衣香は『助かった』と思った。
情けない顔をしている自分を見られなくて済む。
「わかる……」
「はは、素直。 そこまでオッケー? んじゃ、それわかった後お前はどうするの?」
ぽんぽん、と。坪井が真衣香の背中に優しく触れた。
「こ、こんなこと相談して……迷惑じゃ、なかったのかな?」
声が震えて恥ずかしい。
怖い。
答えのわからない会話は怖い。
嫌われたくないと思ったら、もっともっと怖い。
けれど返ってきた声は優しかった。
「うん、迷惑じゃない、絶対。 俺はね」