テラーノベル
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最初はただの好奇心だった。
ある日の休み時間、友人に七不思議について質問された。
「なぁ、潔。お前って七不思議とか興味ある?」
「七不思議?凄い急だな。…うーん、別に興味ないかなぁ。そもそも怖い物自体そこまで好きじゃないから。まぁ、でも実在するなら興味あるかも」
俺は紙パックのジュースを飲みながら曖昧に相槌をうつ。
七不思議、耳に入れた事はあるが興味があると言われたらないに等しい話。俺は別にオカルトマニアじゃないし。そもそも七不思議とか誰かが作った架空の話だろ。
「つまり、潔は実在してたら興味があるんだな?」
友人が確認する様に俺に再度質問をする。
「え、まぁ…」
「ならさ!」
ダンと勢いよく机を叩き立ち上がった友人は興奮気味に俺の顔を見て笑みを浮かべる。
「今日の夜、俺と七不思議が実在するか確認しに行こうぜ!!」
「……うん、なんで???」
展開が急過ぎて俺の思考が追い付いてないから少し待って欲しい。
俺確かにやんわり興味ないって言ったよな?何で確かめに行く事になってんの??
「いや、俺は…」
「でも、時間的に七不思議全部回るのは無理だから1つだけにするか?嫌でも頑張れば半分は回れるかも!どうする!?どれから調べる?俺的には花子さんとか鏡のとかの方がすぐ回れると思うんだけど…、。まっ、とにかく集合は明日の午前2時な!よろしく!!」
俺が口を開く間ない早さで友人はマシンガントーク繰り広げ、気付けば約束を取り付けられてしまい只今、夜の学校に来ている。
「潔どこから周る!?俺は二宮金次郎とか少し気になってるんだけど!!」
「あはは、俺はどこでも…、」
はしゃぐ友人を横目に俺は苦笑いを浮かべ、相槌をうつ。何が嫌でこんな夜中に学校来なきゃ行けないんだろうか。しかも夜とあって不気味さが増している。
こんな事になるんだったらノエル・ノアの動画を家で見てた方が1億倍良かった。
「俺さ、今日最低2つは七不思議が実在するか調べたいんだよ。だからこれから二手に分けれないか?潔はどこでも良いんだろ?俺は自分で調べたいのがあるからもう片方は潔がお願い。確認し終わったら校門前で集合しよう。じゃあな!あ、潔が調べるのはプールに浮かぶ無数の白い手だからなー!!」
「え、?ちょっ、急にそんな事言われ…って、もう居ない!!」
友人のマシンガントークが再び始まったと思ったら気が付けばまたまた約束を取り付けられていた。
アイツ…運動は苦手な癖に話すのと逃げ足だけはいっちょまえに速いんだから。
まぁ、でも約束してしまったものはしょうがない。
俺は言われた通り七不思議を調べる為に学校のプールへと向かった。
***********************
「此処か…、」
俺はプールの前で立ち止まる。授業や部活以外使う事はめったに無い為、こんなにじっくり見るのは初めてかもしれない。
「えっと?確か、七不思議1番のプールに浮かぶ無数の白い手だったか?」
ぶっちゃっけ確認するって言っても七不思議俺全然分かんないんだけど。白い手が何するかも出て来るだけなのかも分かんないし。
俺は月が反射する水面を覗き込む。
プール特有の薬の匂いに透き通った水。水面を暫く眺めていても何かが出て来る事は無かった。…特にいつもと変わった様子はないな。
「うん、普通にふざけんな??」
何で俺は居もしない七不思議が実在してるか確かめる為にこんな夜中に学校に来させられてるんだよ。しかも、二手に別れるとか正気じゃ無い。俺、今の所は大丈夫だけど怖いのあんま得意じゃないんだよ。
よし、こうなったらアイツには詫びとして高級きんつばを奢ってもらう事にしよう。
俺はそう心に決め、この場を後にしようとプールに背を向けて歩き出した。
その時、だった。
突如として足が何かによって掴まれる。
「はっ、?」
目線をおとすと其処には確実に人間では無いと分かる程真っ白な手が俺の足を掴んでいるのが目に入った。
自身の肌に触れる生気のない冷たい手に全身の鳥肌がたつ。
「嘘だろ、…本当に実在したのか?」
心臓がばくばくとうるさいくらいに音をたてる。嫌な汗が止まらない。
逃げなければいけない。
そう頭が警報を鳴らしているのに体が怖さで震え上手く動かす事が出来ない。
俺が体を固めている間に白い手はゆっくりと俺をプールの方へと引きずり始めた。
やばい。本当にやばい。早く動け。動け体。
俺はようやく動かせた手で地面を必死に掴む。しかし、抵抗も虚しく俺の体はもう水に引っ張られてしまう。
顔までが水に浸かってしまい、段々と呼吸が出来なくなってきた。
上がろうにも無数の手が体を固定している為、力で負けてしまい上る事が出来ない。
「誰…、か、っ…助け……て、…」
俺は助けに来る筈も無い誰かに必死に助けを求めながら意識を失った。
***********************
プールに浮かび上がる無数の白い手。
「にゃはっ♪これはやばいね〜!」
「ちっ…やっぱ七不思議かよ」
オカッパと悪霊祓いの依頼を済ませた帰り、突如として強力な霊力の気配を感じとりその原因元である学校に向かってみるとこの有様だ。
七不思議1番。プールに浮かび上がる白い無数の手。
長年封印していた七不思議の封印が解けている。1つの封印が解けているとするともしかすると、全ての封印が…、。
「凛ちゃん、手の中心に誰か居る…」
オカッパはそう呟くと無数の白い手を指差す。
指差された方を見ると、白い手の中に微かに少年らしい人影が見えた。
「…おい、オカッパ。アイツは俺が助けるから霊はお前がやれ」
「了解」
指示を送ると俺は地面を踏み込むとプールまで一直線に跳び、霊力を込めた刀で白い手を切り落とす。それと同時に手の中心に居た少年を抱き抱え救出する。
オカッパはそれを確認した後、プールの中心に跳び込み剣を刺す。
「降御雷」
水に凄まじい勢いの電撃が流れる。人が撃たれたらひとたまりもない威力だ。暫くして電撃が鳴り止むと、白い手はぱたりと倒れ灰となり崩れ落ちていった。
霊を祓ったのを確認した後、俺は少年に目を向ける。
溺れていたせいか、顔は青く、呼吸はとても弱々しい。
すぐに応急処置しないとまずい。
俺は少年の鼻を摘むと、息を吸うと自身の唇を重ね息を吹き込む。暫くそれを何度か繰り返していると、少年が大量の水を吐き目を覚ました。
「ごほっ、…ぇげほっ、。ぁ、れ?お…、れ…」
髪の隙間から青い瞳を覗かせ此方を見つめる少年。
酸素が足りず、まだ頭がはっきりとしていないのかぼんやりとした目をしている。
「…寝てろ」
俺は少年の開いた瞼を手で撫で、目を閉じさせる。そうして暫くすると穏やかな寝息を立てて眠りに付いた少年。霊に抵抗する時に体力を余程削ってしまったのだろう。溺れたせいなのか手に触れた肌が酷く冷たい。俺は体を刺激しない様にゆっくりと体を抱き抱える。
オカッパの方を見ると既に後処理を済ませた後なのか此方の処理が終わるとゆっくりと此方に近付いてきた。
「その子どうする?一般人だから記憶消しても良いと思うけど」
オカッパは俺の腕で寝ている少年の顔を覗き込むと俺に問いかける。
俺が何を思っているか既に分かっている癖にをしているのにわざわざ俺に聞いて来るコイツは相当性格が悪いと思う。
「…コイツは連れて帰る。霊力の高さが異常じゃないからな」
少年の体から滲み出ている霊力は弱霊を寄せ付けず、反対に七不思議などの悪霊を寄せ付ける程高く澄みきっている。
そんじゃそこらの祓い屋とはまるでレベルが違う。
正直、今日こういう事が起こってしまった異常少年を野放しにすると再び七不思議などの悪霊に襲われる可能性がある。
…どちらにせよコイツ本人に話をする必要がある。
「じゃ、帰りますか」
そう言って先に歩き始めたオカッパに続く様にして俺も学校を後にした。
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