「彼をオファーするんですね…」
「えぇ…彼なら…」
手元の資料には、メジロフレイムの資料が…
「……」
トレーナー室の外からラモーヌがいた。
寒くなり始めた季節になり、フレイム達は大一番の舞台「有馬記念」に向けてトレーニングを行っていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
(さすがだなキタサン!あの逃げはすごい!けど…俺の強さ舐めんじゃねーぞ!!)
「フレイムさん!」
「逃げ足も良くなってるな!けど差し切る!!」
「逃げてみせます!!」
逃げるキタサン、差し切るフレイム。そして2人はゴールインした。
「長距離で逃げるとはさすがだなキタサン!」
「まさかついてくるなんて凄いです!」
「ん?じっとしてて」
「え?」
キタサンの耳辺りに1本の芝の屑が付いていた。
「…あぁ、急に悪いな…耳に芝の屑がついててな」
「そうだったんだ!ありがとうフレイムさん!」
するとフレイムは、キタサンの笑顔がある人に似ていた。
「…!!!!」
「フレイムさん?」
「…すまない!次の有馬記念はキタサン達が出るから、無敗の三冠の意地を見せてやる!」
「私も負けないよ!!」
「フレイム!ちょっといいかな?」
「ローマさん?」
チームスクーデリア室内
「話ってなんですか?」
「…フレイム、私が凱旋門賞挑んだ時、世界のレベルは高かったって話したよね」
「最強でも絶対勝てないということですよね」
「…ウマ娘ワールドチャンピオンシップにシードで出ないかって会長が言われて」
「…ウマ娘ワールドチャンピオンシップ?」
ウマ娘ワールドチャンピオンシップ
世界各国で活躍するウマ娘達の世界一を決めるカテゴリー。
「そのカテゴリーに俺が?」
「けど…フレイム自身で決めて欲しいんだ」
「ウマ娘ワールドチャンピオンシップ?」
「世界各国で活躍する強豪ウマ娘が集う世界きってのカテゴリーだよキタちゃん!」
「凄い!早速お祝いだね!」
外でキタサンとダイヤが聞いていた。その時…
「「え?」」
「ワールドチャンピオンシップは全9戦行われる。だが、ワールドシリーズとトゥインクルシリーズは別なんだ。挑んでる世界各国のウマ娘もシリーズ抹消しながらやってくることが義務なんだ」
ワールドチャンピオンシップは、国内外のトゥインクルシリーズとは違い、偉業やレコードホルダーなどが集うカテゴリーなのだ。
1度抹消してしまうと、二度とトゥインクルシリーズに参戦できない。
他のウマ娘達はワールドドリームトロフィーリーグに参戦をするのが多くいるが、チャンピオンシップを参戦するウマ娘はわずか9人のみ。
その9人は…下位に沈み、諦めざる負えなかった──
「世界に挑むとなると、キタサン達と競えない、ここに残ればまだ戦える…考えてもいいですか?1週間」
「そうだね、1回整理しないといけないね」
そう言ってフレイムは外へ出た。
「ワールドチャンピオンシップ…」
「フレイムさん?」
「キタサン、ダイヤ!」
「挑むんですか?ワールドチャンピオンシップ」
「…まだ分からないんだ、世界に挑むかここ(日本)に残るか」
「…離れちゃうの?」
「ワールドチャンピオンシップに挑むと、キタサン達とは離れることになる…」
「…フレイムさん!」
キタサンがフレイムに抱いた。
「離れるの嫌…!」
「…高い目標に挑みたい!けど…俺だって離れたくない!」
悩むフレイム、考えた案が1つ。
「次の有馬記念、キタサン、ダイヤ、クラウン、グランの1人が俺から勝てば残る!俺が勝ったら世界に行く!この賭けをお願いする!」
「…分かった!絶対フレイムさんから逃げてみせる!」
「私もフレイムさんに勝ちたい!」
「全力でかかって来い!俺も全力を出す!!」
「………」
「随分気合い入ってるわね」
「ラモーヌ?」
「…噂は聞いたわ、URAのオファーで世界に行く事」
「聞いてたんかよ、負けたらここに残るから」
「………」
すると
「フレイム、本当に世界に行くんですね…」
「マック!」
「私は絶対反対ですわ!」
「何を?」
「2人ともやめなさい!!」
「…有馬記念、私も出走しますわ!」
「出て何がしたい?」
「負けたらここに残るとおっしゃいましたよね?私が前でゴールしますわ!」
「あれはキタサン達の約束だ!マックには関係ねぇ!」
「頭に来ましたわ…メジロのウマ娘として勝負してみせますわ!」
「やれるもんならやってみろ…俺は必ず差し切る!」
(フレイム…)
影でローマとアルダンが見ていた。
「まさかこんな事になるなんて…」
「マックイーンがこんなに本性を顕にしたの初めてです…」
「…フレイムに勝って欲しいですけど、今回は複雑…」
「………」
正直、有馬記念は勝ってほしい。けど、離れて欲しくない。色々な思いが混じるレースとなるだろう。
「…フレイムは…最初からメジロのウマ娘ではないんです…」
「…えっ?!」
「…実を言いますと…姉に拾われきた娘なんです」
「姉…ラモーヌ先輩から?!けどなんでですか?」
「…実は」
チームスクーデリア トレーナー室
「…認めない…か…」
マックイーンに言われた言葉。気にかかっていた。
メジロらしいレースをしてきたのに、恥じないようにしてきたのに、なんでだろうな…
「…そりゃそうだよな、俺生まれた時からメジロじゃねぇもん」
突然の大声に驚き、フレイムを見ていたのは、同期のグランだった。
「グラン…」
「ねぇ…本当にメジロじゃないって」
「何言ってんだよ、メジロのウマ娘だって!」
「う…嘘だよね?!フレイムさん!!**“生まれた時からメジロじゃない”**って」
「…そっか、聞いてたんだなグラン」
「…え?」
「俺生まれはメジロ家じゃないんだ…拾われた存在なんだ…」
「拾われた存在…?」
拾われたって、一体どういう?
「この話をすると長くなるから、明後日の有馬記念の後に話すよ」
「………」
トレーナー室を後にしたフレイム。トレーナー室に1人だけいたグラン。とうとう話すタイミングが近そうだ…
栗東寮
「…………」
「フレイムちゃんなんかずっとぼーっとしていないかな?」
「ワールドチャンピオンシップの出場権を獲得したらしいんだよスペちゃん」
「ワールドチャンピオンシップ?」
「世界各国のウマ娘が全9戦を戦うレースなのよ」
「声がでけぇぞ総大将!!」
2人の話が聞こえた。
「フレイムちゃん、本当に行くの?」
「スズカさん?」
「ワールドチャンピオンシップに挑むと、トゥインクルシリーズには二度とエントリーができない」
「…え?」
「マックに権限がねぇのに、有馬で出走することになって…最近レースやってねぇのに無理すんだよ…」
「「……」」
有馬記念のレース。キタサン達と楽しいレースがしたかった。レースが終わったら笑ったり泣いたりしたい…
俺ってそんなにツイてない存在なのか…
「…総大将は皆とレースやってて、楽しかった?」
「…それはもちろん楽しかったよ!エルちゃんにグラスちゃん、皆と走って楽しかったよ!」
「”楽しい“か…」
「フレイムちゃん?」
「いえ…なんでもないです…部屋に戻りますね…」
同期や友達と走って楽しいなんて言われると、余計に…苦しい…
「─うぅぅぅ…なんで…俺は走って楽しいなんてこと無いの…嫌だよ…」
フレイムの心の悲痛が、冬の夜の風が吹いていた。
美浦寮
「…姉に拾われてきた存在」
「どうしたの?姉に拾われてきた存在って」
「ドーベル先輩?!」
不意に聞かれてしまった。姉って聞かれたらすぐに分かってしまう!!
「いや…小説の話だよ!最近私小説読み始めて…」
「…嘘ついてるでしょ、フレイムのこと」
「…ですよね」
「噂は聞いたよ、フレイムが世界に挑む事、マックイーンに宣戦布告されたらしいじゃん」
「…私、どうしたら」
自慢の後輩が世界に挑んでもらって、日本最強のウマ娘になってくれたら嬉しい。しかし、結果を残さなければ、シーズン途中で断念することになる──
「私…フレイムに頑張って貰いたいんだ」
「…え?」
「まだフレイムがデビューしたての頃、私挫折しちゃって…その時にフレイムの言葉に勇気を貰ったんだ。”もし私の事を悪く言う奴らは全部俺が引っ括める”って」
「そうだったんですね…!」
私の知らないところでそんな事があったんだ…もうヒーローだよ──
「…ありがとうドーベル先輩!明日フレイムに聞いてみます!」
三井の部屋
この時、ユリノのトレーナー、漆瀬悠がお邪魔していた。
「…噂は聞きましたよ、フレイムが世界のレースに抜擢されたんですね!」
「…まぁ、嬉しいですけどね──」
三井も複雑な心境だった。世界に行くと、ここのシリーズは抹消──
永遠に走ることはできない。
「…自慢のウマ娘が抹消は少し複雑ですよね」
「ローマに憧れを持ってやってきて、僅か2戦目でGII制覇、未だに負けず有馬を制すると、もう、先輩後輩だろうが、もうそれ以上のライバルはここには存在しない…」
「三井さんは、フレイムの本当の心境を聞いてないのですか?」
「本当の心境?」
そういえば、あまり話していなかったな。ローマに憧れているのは聞いてるけど──
ちょっと聞いてみるか。
翌日
ワールドチャンピオンシップの噂が学園中に広まっていた。
「ワールドチャンピオンシップにフレイムさんが行くの?!」
「いいなぁ、世界に通用する走りを見せているんだぁ!!」
「世界に行くの?!私たちじゃ相手にならないの?!」
「しかもメジロのウマ娘だし、許せるわけないわ!」
賛否両論が飛び交っている中──
「なんか今日フレイムさんの話題が多い」
「ワールドチャンピオンシップの参戦がするかもしれないからね、URA公式ウマッターもその情報が通知してるみたい」
ダイヤは携帯を取り出し、キタサンにその情報を見せた。
やはり世界のレース参戦は情報が早い。
「フレイムさん…大丈夫かな?」
フレイムは、初めてミラクルにピアノ練習を教えてもらった室内にいた。ピアノをぼーっと眺めていた。
「ずっと叫んでた僕の思い届くまで…もう迷わないから…」
フレイムがいつもカラオケで最後に歌う曲を口ずさんでいた──
最近のフレイムは、笑顔を見せない日が続いていた。
「ワールドチャンピオンシップに挑むと、トゥインクルシリーズは抹消することになる」
(どこに行ったんだよ…アエラス)
謎の名前…アエラスとは一体?
スクーデリア トレーナー室
「そんな事があったのか?!」
「そうなの…」
2人は昨日の事を話していた。ローマからは、マックイーンに世界に行くことに猛反対、負ければトゥインクルシリーズに残ると賭けをしていた。
「もう…こんな事でフレイムを責めたくない…皆が…」
「…行こう、フレイムの元に。話を聞きに行きたいんだ」
2人はフレイムのいる教室に向かった──
キタサン達4人にフレイムはいないか聞いてみた──
「フレイムさんは今ここにいないよ?」
「最近学校に来るのにホームルーム前開始のギリギリに教室に入るんです」
「ギリギリの時間?!」
そんな事は無いはず。フレイムはちゃんと時間通りに来るはずなのに、ギリギリ?!
「…僕…フレイムさんは本当のメジロのウマ娘じゃないって言ってましたよ…?」
キタサン、ダイヤ、クラウン、三井は驚きを隠せなかった。
フレイムは本当のメジロじゃない?!
「シュヴァルちゃん嘘言わないで、メジロのウマ娘でしょ!」
「私もアルダン先輩から聞いてる、シュヴァルの言っていることは…本当なの」
「…嘘でしょ、けどなんで?」
この話を影から聞いていたフレイム。驚きを隠せなかった。
(なんで言うんだよ!!公に出すなよ!!)
「あっ!フレイム!!」
三井がフレイムに気がついた。しかし…
「待ってフレイムさん!!」
この場から逃げたい!1秒でも早く逃げたい!!
「待って!フレイムさん!!」
「話を聞かせて!!」
フレイムの凄い速さについていけなかったローマ達。その後、エアグルーヴからこっぴどく叱られてしまった。
屋上
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「あれ?フレイムさーん!!」
「…リッキー、タルマエ、アキュートさん?」
「どうしたんですか?こんなに息切らして」
「…ちょっと、トレーニング…」
「制服でトレーニング?どう見ても動きずらそうじゃないですか!」
「…もしかして、また辛いことがあったのかい?」
この3人に聞くべきか?それとも…全て話すか?どっちを選べばいいんだよ!クソっ!!
「…俺…本当はメジロじゃないんだ…」
トレーナー室
「皆迷惑かけてごめんね」
ローマ達はトレーナー室に集まっていた。フレイムと話したいが、今はそれどころじゃない───
「フレイムさん…メジロじゃないって聞かれたかもしれない…本当にこの場から逃げたい思いが強かったような気もするけど…」
「私も正直驚きを隠せなかったよ…」
これまで、マックイーンやラモーヌらを輩出してきたメジロ家。フレイムは最初からメジロではない──
一体なんで?
「そういえばキタサン、マックイーン有馬記念出走するって聞いてるけど」
「はい、久しぶりのレースなので気合いが入ってますよ!」
ちょっと待てよ──
マックイーンは脚の故障で休養していたよね?しばらくは出走難しいって言われてるのに──
「それで調子はどうなの?」
「それが、中々タイムが上がらなくて、徐々に下がっているんですけど…」
タイムが上がらない?標準タイムをかなりあげている設定なのか?
「キタサン…マックイーンは有馬記念に出走を取りやめてもらえない?」
「取りやめる?なんでですか?」
「もしフレイム達と勝負したら…間違いなくマックイーンの脚は…終わる」
今どきのウマ娘は、スピードが年々上がっている。そのスピード差に慣れていないマックイーンは、フレイムのスピードで挑むとかなり危ないらしい。
「脚が終わるって…症状が悪化するんですか?!」
「フレイム達の時代はテイオーやスペ先輩の時代とは違って、スピードが上がっている。マックイーンもそのスピードには慣れていない。タイムが上がらないのは、スピードに慣れていないからだ」
「けど、マックイーンさんにそれを伝えても、走るはずですよ?」
「私が説得する、出走は取りやめて貰いたいって」
ローマに言われても出走するマックイーンは変わらない。だから──
グラウンド
「マックイーン、タイムそんなに上げて走るの難しくない?」
「フレイムは私のペースでは相手にならないはず、だから少しでも先にゴールをしますわ」
大丈夫かな?そんなに張り切っちゃって──
「次の有馬記念では、絶対フレイムに勝ってみせますわ!そして、ワールドチャンピオンシップの参戦を断念して、トゥインクルシリーズの新たなメジロの歴史を残してもらいます!」
視線の先にスクーデリアローマの姿がいた。危険すぎる無謀な練習を──
「フレイムさん?!」
「マックイーン、有馬記念での出走は取りやめてもらえる?」
「何言ってるんですか!私は出走しますわよ!!冗談はやめてくださいまし!!」
「…なんで貴方までフレイムの思いを受け止めているんですか!!」
「どうしてもフレイムが行きたいなら、私はフレイムの応援をするよ。世界に行っても!」
「…話になりませんわ!私は出走を取りやめません!絶対にですわ!!」
マックイーンの言いたいことは分かる。フレイムは未だ負けていない。その敗北の後が重要だということを。
けど、無理なスピードについて行くのは危険すぎる──
「…最初からメジロじゃないんだよね、フレイムは」
「…えぇぇぇ!フレイムってメジロじゃないの?!」
「話を聞いたのですね」
「…拾われてきたとなると、小さい頃は走る意味なんて知らなかったんだよね、家族も亡くなって、親友も行方が分からないって」
「……」
家族も亡くなって、親友の行方が分からない?フレイムの両親は死んじゃったってこと?
「…マックイーン、本当なの?」
「…本当ですわ、フレイムはラモーヌさんに拾われてきたのです。最初は走ることさえ興味がありませんでした。ローマさんを見て、ウマ娘の存在を知ったフレイムは、いつか越えられるような強いウマ娘になりたいと…」
「そうなの?!」
数時間前
未だフレイムの居場所を知らないローマ。フレイムを探し続けた。
「どこ行っちゃったんだろう…?フレイムがよく居そうな場所は…」
トレーナー室、教室、栗東寮にもいなかった。となると──
「屋上?」
屋上
「…ここにいるのかな?」
屋上はそれほど広くなく、いなさそうなところだが…
「…?」
ふと思い出した。学園の屋上には、エアコンの設置場所の為少し高くなっている場所がある。そのスペースにいるのかもしれないと思った。
(まさか…ね…)
いないと思い、はしごを登ってみる。
フレイムの姿があった──
「ローマさん…」
屋上の転落防止の柵を越えて、夕方になりかけている陽を眺めていた。そこに1歩でも踏み外したら──
腕を掴もうとするも、振りはらわれてしまった。
「…ローマさん、俺が無敗の三冠目指してた本当の理由は…天国にいる本当の両親と、行方不明の親友に少しでも気づいて欲しかったんです」
「…両親と親友?」
「母親は、アルティスタディザイアというウマ娘で、ティアラ路線だったんです。父親はその母親のトレーナーだったんです」
アルティスタディザイア…聞いたことがないけど、関係者入口のトロフィーに置かれている5個のトロフィー、GI5勝という戦績。
アルティスタ?まさか──
「…フレイムの旧名って、アルティスタだったんだね」
「…そう、アルティスタフレイムが本当の俺の名前。この王冠の耳飾りは、母親から貰ったんです」
王冠の耳飾り…遺伝を受け継いでいる。
「…けど、死ぬのはやめて!皆が悲しむから!」
「…なら、1個だけワガママ言ってもいいですか?」
「ワガママ…?」
「…メジロじゃないけど、メジロに誇りを持って挑みたい。独断な意見だけど、未勝利で終わるかもしれないけど…感謝をしたいんです!!だから…チャンピオンシップに挑ませて下さい!!」
「…これがフレイムの本当の願いなの。メジロ家の皆に感謝をしたいって」
「…フレイム…貴方って本当に…」
マックイーンは、常に練習のレベルを上げすぎたことに不甲斐なさを思った。まだ完治してない脚を大事にしたいと。
「…うわぁぁぁん…」
「…ごめんね…挑みたかったよね…辛かったよね…うぅぅ…」
マックイーンとローマは、やっとフレイムの思いを知ることが出来た。
音楽室
「Give me love Give me love、どこまでも行く果てないこの空の下♪」
フレイムの美声が音楽室に響き渡る。誰も真似出来ない歌声だった。
「ここにいたのか」
「ルドルフ会長?!」
「君の歌声が響いたから、つい見とれてしまって、まだ悩んでるみたいだな、ワールドチャンピオンシップの事」
「トゥインクルシリーズの抹消が義務されているので、ここ(日本)のレースはもう参戦できない…難しいですよこの選択」
「誰しも両方は選べないからな」
いきなりなんだよ、ワールドチャンピオンシップのリスクでも言いに来たのか?
「…私は脚の故障でレースを引退した。メジロマックイーンやアドマイヤベガ、ヒシミラクルも…」
「いきなりなんです?急に過去を話すなんて…」
「…ワールドチャンピオンシップ、前人未到の6連覇を達成したエースプロストというウマ娘がいるが、6シーズン戦って、まだ優勝争いを展開している。私も憧れてしまうよ」
「なるほど…最強がいる。そのウマ娘はデビューから強かったってことですね、世紀の一人か…」
エースプロスト、デビューからチャンピオン6連覇。怪物を越えて神童だ。
「メジロフレイム、どうか…日本を代表して歴史を作ってもらいたい!」
「…分かりました。期待は薄いけど、代表として頑張ります!!」
栗東寮
今日は色々なことが起きたばかりで疲れ切っていた。
「はぁ〜疲れた…」
寮のソファに座り、ぐったりになってしまった。
「おかえりなさいませ、フレイム」
「マック?言っとくけど、有馬記念は──」
「…えっ?」
「…貴方の憧れから警告されたのです」
「…そうか」
ローマさん、ちゃんと伝えたんだ!説得力凄いな!!
「…フレイム」
「何?」
「本当に世界に行くんですか?」
「…ローマさんとトレーナーに話し合ったさ。三冠目指してた理由とその他諸々」
「…見つかるといいですね、ブラウンアエラスさん」
「………」
─レイム!フレイム!フレイム!
「…あっ、ソラ…」
「やっと会えたな!しかもエマの王子様って言われてるじゃん!」
「それは関係ねぇだろ!夢の中なんだよ!」
「…本当に行くのか?」
「…もちろん、無謀かもしれないけど、歴史を作りたい!親友の願いを届けるためにも!」
「…かっこいいなフレイム!俺も負けてられないよ!」
「そうと来るなら、力試しと行こうか!!」
2人はキーブレードを取り出し、攻撃態勢に入った。
「「はぁ…はぁ…はぁ…」」
2人のキーブレード裁きは別格だった。
乱れない魔法の連続攻撃、攻撃の交わし技術──
全てが完璧だった──
「フレイム強くなってるな!あの時より!」
「レースの思いが滾って強くなっているかもな!やっぱり楽しい!!」
──あれ?
なんで”楽しい”って口に言えたんだ?
楽しい──
フレイムちゃんと走ってると私も楽しいよ!!
「…なぁソラ、キーブレード使いになってからカイリを探す旅に出ていたけど、その道中で会ったあの2人と旅してて楽しい?」
「もちろん!新たな場所に行くのはちょっと怖いけど、あの2人がいてくれたから勇気が出たんだ!」
新たな場所に行くのは怖い…けど、傍にいてくれたから勇気が出た…
「実は俺、次のレースで世界に行くことが左右されているんだ。負けたら断念するか、勝ったら挑むか…」
「…むしろ負けても、挑む努力があるなら、目標は変わらなくてもいいんじゃないかな?」
「え…?」
「だって、フレイムは友達がいるし、世界に行っても応援してくれるよ!誰かの事を思ってると、心はキーブレードよりも強いって!」
そんな事言ってたなゲームでも。
世界に行っても誰かを応援してくれる人がいる。その自信が勇気になる──
「…ソラ、俺頑張ってみる!期待に応えられるようなウマ娘になるぜ!!」
翌朝 トレーナー室
「…どうなるか」
三井は資料を眺めていた。
ウマ娘ワールドチャンピオンシップの18人の戦績、ポジションアップ、トレーニングメニューなど、様々なところに目を通していた。
(全てが過酷…まるでF1みたいだな、これをフレイムが行くということか…)
「失礼します」
「フレイム?!」
「トレーナー、俺が次の有馬記念で負けても、ワールドチャンピオンシップに挑みたいんです!」
「フレイム…」
「俺…最初は何も考えないで行きたいと思っていましたけど、よくよく考えて見たら、それほど軽率な気分で行こうと思ってました。抹消されるし、二度と走れない…それでもいいんです!」
「…負ける前提で言ってるのか?」
「…え?」
「トレーナー…!」
モータースポーツの世界は、野球みたいに複数年契約とかじゃない。チャンピオンを取っても、何度勝利してもクビになる世界。
今の状況を把握して、全力で勝利をするのがレースなんだ!
「負けるなんて考えるな!!勝利する為に皆レースをやってるんだ!抹消だろうが失格だろうが、それでも前に走り抜くんだ!」
「!!!!」
全力で…挑む──
いや、ローマさんなら負けを考えないよな!
「…分かりました!全力で勝利してみせます!全戦全勝を目指して頑張ります!!」
ここから数週間、フレイムのトレーニングをハードな組み合わせをした。
動じないフィジカル、仕掛ける動体視力の向上──
全力で挑んだ!!
数週間後──
有馬記念 当日 中山競馬場
大1番、さらには、キタサンブラックの前人未到のGI8勝目か、メジロフレイムの史上初無敗のクラシック四冠か、観客も大いに来場していた。
チームスピカ 控え室
「皆さん!有馬記念頑張って行きます!」
「その意気だぞキタサンブラック!」
キタサンブラックも有馬記念に向けてハードトレーニングを行っていた。親友のサトノダイヤモンドも有馬記念に出走している。
「あっちにはフレイムもいるから、頑張ってキタちゃん!」
「フレイムも有馬記念に勝つためにハードトレーニングを行っていたので、スクーデリア側もマークしていると思います!」
「はい!フレイムさんに勝てるように頑張ります!!」
チームスクーデリア 控え室
「フレイム、キタサン達もフレイムから勝つために何か作戦を練っているから、逃げのモードに入る前に仕掛けた方がいい」
「はい!全力で勝ちに行きます!」
スピカに対して、スクーデリアはデータを徹底的に調べ、今までのレースを繰り返し見ていた。また、第3コーナーなどのタイムを計算など、もはやモータースポーツ並の作戦を立てていた。
「ローマさん、俺はもう迷いはありません!」
「…うん!」
「ローマさんが見せたあの翼が出るくらいのレベルを見せるので、期待しててください!」
「………」
フレイムの情熱は既に高まっていた。負けることなど考えず、全力で勝つ──
キタサンも俺に勝ちに来ている、ダイヤもクラウンもグランも…
控え室の隣には、キタサン達率いるスピカの控え室があった。
「…顔合わせするか」
「フレイムだ。入るぞ」
「フレイムさん?」
「…気合い入ってるな」
「もちろん!フレイムさんと走るの楽しみだったよ!」
「…目標は?誰に勝ちたい?」
「…フレイムさん!無敗の三冠が相手だと、私も負けないよ!」
「俺はキタサンに勝ちたい!メジロの名をかけて、無敗のクラシック四冠を取る!!」
2人はいつも以上に気合いが入っていた。当然かもしないが、1年遅れがあるが、教室では同じクラス、年度代表争いを何度も繰り広げているスピカとスクーデリア。キタサンブラックは去年の年度代表を取っている。
「んじゃ、行こうかキタサン」
「うん!皆さん、頑張ってきます!!」
2人は控え室を後にした──
「皆さん、フレイムの事なんですけど…」
「キタサンはさ、初めてレースに出た時の事って覚えてる?」
「初めてのレースは緊張したよ!テイオーさんに憧れてここに来たからね」
「…俺と同じだな。ローマさんに憧れてここに来たし、やりたい事とか沢山あったな」
沢山あったのに…世界に行くことになるとはね…ついてねぇな俺って──
「やりたい事って何かあったの?」
「まずは…強いウマ娘になる、それから無敗の三冠…後は…皆と卒業してもずっといたい…かな」
トレセン学園に来て、キタサン達と友達になれたことはすごく嬉しかったな。自慢出来る可愛い友達に。
リッキー達にも沢山色々な事をやったけど、まだ色々やりたいよ…
「…キタサン!」
「…?」
「俺が世界に行っても…こんな俺と…ずっと友達でいてくれる…?」
「……もちろん!だって私達の大切な友達なんだから!!」
「!!!!」
大切な…友達…
友達がいるから頑張れる。友達がいるから無理な事でも挑戦してきた。だから──
「キタちゃん!フレイムさん!」
「ダイヤ!クラウン!グラン!」
「私も負けないよ!フレイムさんと走るの楽しみだから!」
「私も!フレイムさんと走るの楽しみだったし!けど、有馬記念は絶対負けないから!」
「…僕は、フレイムさんに勝ちたい!ジャパンカップで見せたあの時のように!」
4人からの勝負、当然ながらフレイムも負けてはいられない。
5人は外の景色に向かって行った。フレイムにとって世界へ行くチャンス。ここを逃せば通用しない──
本バ場
「年末の大1番、有馬記念!史上類のない戦いが始まろうとしています!!」
「キタちゃん気合い入ってる!」
「当然ですよ。だって相手がフレイムですから」
「…今日のフレイム、なんか怪物みたいなオーラ出してない?」
ユリノがフレイムのオーラに気にかかっていた。間違いなくローマと同じくらい凄い──
「確かに、オーラが違うわ」
「フレイムは今日全力で勝ちに来てるからですよ!」
「ローマ?!」
ローマや三井、エウレカも有馬記念に来ていた──
「今回のフレイムは間違いなく勝てる!あの末脚と判断力はトップクラスなはずだ」
「やけに自信満々じゃないか、キタサンブラックも負けてはいられないからな!」
「さぁ?そう簡単に勝たせませんよ?」
観客の目当てはもちろんフレイムとキタサンの前人未到の偉業を成し遂げようとしていた。それだけじゃない──
フレイムにとって…最後のレースになるかもしれない…
「1番人気はやはりメジロフレイム。無敗の三冠を取っていますし、とてつもない末脚を持っています。有馬記念にとって、先輩のスクーデリアローマの惜敗したあの日以来、自分がやってやろうって気迫が感じますね!」
「なるほど!ではキタサンブラックはどうでしょうか?」
「キタサンブラックは有馬記念を制していますが、3年前と一昨年は勝利していませんでしたが、去年は勝利しています。だが、今シーズンの戦績は少し悪い結果になっていますので、彼女の逃げ足には注目が高いでしょう」
「また、メジロフレイムなんですが…ワールドチャンピオンシップに挑む噂があるのですが、この有馬記念は絶対勝ちに来ていますよ!」
やたらとざわめきが多い…ただのレースなのに…こんなに集まっているのか…?
みんなは俺が最後のレースだと知らない…
「各ウマ娘それぞれゲートインしております!2番人気のキタサンブラックもゲートイン完了しました!」
そろそろ行かなきゃ…
「メジロフレイムがゲートイン完了しました!スタートの準備が整いました!!」
このレースが…一生俺にとっての…宝物になったらいいな──
「スタート!大1番の有馬記念がスタートしました!ハナにたったのはマーチングオート!そのすぐ後ろにキタサンブラックがついて行きます!!メジロフレイムは中団についています!!」
(逃げの特化は進化してる、けど…今シーズンの勝利は無い…世代交代の時が来るかもしれない…)
キタサンやダイヤ達は、今シーズンのGIの勝利が無い。けど、キタサンブラックは上位でのゴールはある。
「中々いい走りをするじゃない…!」
「えぇ、ですが今はまだ序盤ですので最終コーナーで仕掛けると思いますよ姉様」
ラモーヌやアルダン、ドーベル達も観戦していた。
「未だメジロのウマ娘は有馬記念を制していないから、フレイムならきっと勝てると思うよ!」
「ライアン、フレイムが勝ったら世界に行くし、シリーズを二度と走れないんだよ!!」
「…そうだったね」
やはり複雑な心境だった。
「フレイムさん、本当に世界に行くんだよね?」
「情報がかなり出回っているからね、有馬記念は勝ちに来てるはずよ」
別の所では、リッキー達が観戦していた。
当然3人はフレイムの過去を既に知っている──
「フレイムちゃん…今日は悲しそうじゃねぇ…」
「悲しい?」
「…初めて会った時、ぽりぽりさんあげたら泣いてしまってのぅ。あの涙は印象的だってじゃのう」
「…フレイムさん、今日がいいレースになるといいね」
さらに──
「フレイムさんが世界に行くという噂は存じ上げております」
「凄い!!ウチも応援だよ!!」
ミラクル達も観戦していた。
「⋯⋯」
「ミラクルさん?」
「⋯はっ、ごめん、ついぼーっとしちゃって⋯」
「⋯講師がいなくなるの寂しいですか?」
「⋯活躍して欲しいのは俺も同じ。」
「各ウマ娘、最初のコーナーに入りました!1周目のスタンド前にやってきました!大歓声の渦です!!」
キタサンブラックは先頭から2番手の位置、サトノクラウン、シュヴァルグランは中団からやや後方、サトノダイヤモンド、メジロフレイムは最後尾から3番目の構成となっている。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
フレイムの声?!
ローマだけが聞こえていた。フレイムの心の声が…
「先頭は変わらずマーチングオート!後ろにキタサンブラックがついています!後方にワーカホリックがやや2馬身後ろ──」
考えないで…!フレイムはちゃんと強いウマ娘だってことを証明しているから!!
「1000メートル通過は59.7、ゆったりなペースで行っています!!」
「これは最終コーナーの手前で仕掛けるわね」
「どういうこと?」
「キタサンは最終コーナーの所でスパートをかける、それを読んでいるかもだわ」
ラモーヌが予想の展開をしているが本当なのか?
「向こう場正面に入り、先頭マーチングオート変わらず、2番手にキタサンブラック、3番手ワーカホリックと続いています!メジロフレイムが少し順位を上げました!!」
何度も何度も地獄を味わって、トレセン学園に来てからやっと幸せになれると思ってたのに…
フレイムちゃん!
この声…
フレイムちゃんは絶対幸せになれるよ!私も頑張るから!!
そんな事より、どこにいるんだよ!!俺…ずっと心配してるんだぞ!!
フレイム…勝利をしているなら、自信をもって!!
あのメジロ家に育てられたことに誇りを持て!
母さん…父さん…
キーブレード…皆との思いが繋がっている…皆を勇気と希望を…
「そうだよな…キーブレードは思いが繋がっているんだよな…」
「さぁ1500メートルを通過しました!先頭は──」
「フレイムさん?!」
「来たね…」
「フレイムの本気はここからよ!」
「おおっと?!メジロフレイムがペースを上げた!!最終コーナーに入りかかったところ!とんでもないギャンブルを仕掛けた!!」
「キタサンブラックもペースを上げた!!先頭を走っていたが、逃げ切る作戦に出たか?!」
「キタちゃん?!」
「嘘でしょ?!」
スピカ達も驚きを隠せなかった。当然スクーデリアのメンバーも。
「逃げなのにあんなハイペースで行けるの?」
「いや、キタサンはあの天皇賞・春のようなスピードで来てる!直線が短い分刺しきれないような差を出してきてる!!」
「最終コーナーを過ぎて最後のストレート!!キタサンブラックが先頭!後ろからメジロフレイムが来ている!」
キタちゃん!あんなハイペースで行ったらまずいよ!
「キタサン!悪いけど、俺は…世界に行くんだ!!!!」
「メジロフレイムがペースをさらに上げた!キタサンブラックまであと少しだ!!」
「フレイムさんに勝ちたい!勝たなきゃ!!」
短い直線でハイスピードでやって来るキタサンとフレイム──
その時──
走る姿勢が乱れた──
キタサンは徐々にペースを落とした。脚の故障が起きてしまった。
体が丈夫だといわれているキタサンブラックが⋯
「キタサンブラックが少しペースを下げている!!」
その後ろを走っていたフレイムは驚いていた。無理をしたのかもしれない。
横から追い抜いて行くフレイム──
「先頭はメジロフレイムに変わった!!残り200メートル!!」
「はぁ、はぁ、はぁ…」
「メジロフレイムが先頭でゴールイン!!勝ったのはメジロフレイム!遂に、史上初クラシック無敗の四冠達成!!!!」
その後、キタサンはゴールインしたが、異常が発生したため、右脚を強く抑えている。
観客からの声が聞こえるが…フレイムには聞こえなかった。
クラシック無敗の四冠という偉業に実感は無く、フレイムは──
「痛い…痛い…」
キタサンを見ていた。笑顔はなく、恐怖を感じていた。
「キタちゃん!」
「待ってテイオー!」
飛び越えて助けようとするが、ローマに止められた。
「なんで止めるの?!キタちゃんが…!」
「大丈夫、見て」
「!!!!」
「キタサン⋯脚大丈夫?」
「⋯これくらい大丈夫だよ」
「⋯ごめん、俺がハイスピードで上げて来て、キタサンの脚を壊して⋯」
「それは違うよ、私はもう限界だったから、フレイムさんは悪くないよ。無敗の四冠おめでとう⋯!」
おめでとう⋯ごめんキタサン⋯
「フレイムさん?」
「うぅ⋯!!」
普段の姿しか見せないフレイムは、大粒の涙を零していた──
「大丈夫か?!」
「キタちゃん!!」
なん⋯だ⋯視界⋯が⋯⋯
フレイムは⋯西日が指すターフに⋯倒れ込んだ
「フレイム?!フレイム!!」
「⋯⋯⋯」
歴史を残るレースをしようと思っていたが⋯衝撃と恐怖に変わってしまったレースとなってしまった。
ダイヤは9着 クラウンは10着 グランは12着に終わった。
キタサンは3着を走っていたウマ娘にギリギリハナ差で2着となった。
※キタサンブラックの故障は忠実ではそんな事は起きていません。2次小説なのでご了承ください。
──とうフレイム!
「?」
──レイムちゃん!有馬記念おめでとう!
「⋯アエラス?父さん⋯母さん?」
幻想の世界⋯辺り1面浅い湖と青い空が広がっていた。
誰もいない静かな場所に──
「母さん、父さん、アエラス?!」
「フレイムちゃん!有馬記念おめでとう!無敗のクラシック四冠だね!」
「⋯⋯」
「フレイムちゃん?」
「⋯俺は、親友の脚を壊した、俺のスピードが速すぎて、大事な脚を⋯」
「フレイムちゃんそれは違うよ!友達もフレイムちゃんに勝ちたいからいっぱい練習してたんだよ!レースは最後まで何が起きるか分からないんだよ!自分を責めないの!」
自分を責めない⋯俺は昔からそうだったよな──
けど⋯
「フレイム、その友達には本当の事はまだ言ってなかったの?」
「⋯言うわけないよ。話したら皆からバカにされる⋯!」
「きっと大丈夫よ、フレイムがやっと楽しめる場所が見つかったんだから」。メジロの皆様も知っているはずよ!」
知っているも何も、その話を親友に偶然聞こえて、トレーナーやローマさんにも知られたんだよ!!
関係ねぇのに!!!!
「言えないよ⋯そしたら──」
「フレイム⋯!」
「!!!!」
温もりを感じる、昔泣いていた時によく抱いてもらってたな。
「心配いらないわ、フレイムの友達ならきっと分かるわ」
「母さん⋯」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯
⋯⋯⋯⋯⋯⋯
⋯⋯⋯⋯⋯⋯
⋯⋯⋯⋯⋯⋯
「⋯⋯⋯?」
「⋯フレイム?フレイム!!」
「ローマ⋯さん?ここって⋯?」
「中山競馬場近くの病室、隣見て」
病室の隣には、スピカのメンバーがいた。ダイヤ達、さらに──
「キタサン⋯!」
「フレイムさん!目が覚めたんだね!!」
フレイムの隣には、右脚を包帯で巻かれていたキタサンの姿があった。
「右脚は大丈夫?」
「大丈夫!ただヒビができただけだよ!」
「⋯そうか、良かったね」
無事で良かった。とりあえず一安心した。
けど、フレイムにはまだ言わなきゃいけないことがある──
「ローマさん、1回病室から出てくれる?ダイヤとクラウンとグランは残ってて」
「なんで?」
「⋯俺らだけの秘密の事を言いたいから。スピカのメンバーも出てくれるかな?」
ローマはなんとなく分かっていた。ラモーヌに拾われてきた存在の事を──
「分かった。皆に伝えとくね」
「皆、1回病室から出よう、多くいると話が出来ないって」
「なんでですか?」
「⋯話すと長くなるから、知らなくていいことかもしれないから」
「んだよ!5人だけ聞くなんてずるいずるい!!」
ローマの真剣な眼差しを見たゴルシは、冗談じゃないってことに気がついた。
「んじゃ、話終わったらまた入ってもいいか?」
「大丈夫だよ、終わったらね」
スピカ達、ローマ、トレーナーが部屋から全員出た。
「⋯フレイムさん、話って?」
「⋯⋯俺の本当にあった話」
本当に話すフレイムの過去。
生まれつきメジロではない。
拾われてきた存在。
三冠を目指した本当の理由。
全てを話すことにしたフレイム──
それは壮絶な過去の話
コメント
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続きが気になりすぎる🥺🥺 こっちのサブでお知らせ出したので見てくれると幸いです🙇♀️(えびふらいです)