飯綱side
凜太郎から信じられない報告が来た
『晴明くん、事故で死んでもうた』
一瞬、冗談かと思ったが
凜太郎が泣いていることと、後ろのサイレンが嘘じゃないと訴えてきた
嘘、だろ……
俺は何も言えなかった
数日後、晴明の葬式が行われた
そこには俺と凜太郎、学園長、ネズミ先生、元弐年参組の奴らがいた
ただ、佐野の姿だけ見えなかった
狸塚曰く、出席を断ったらしい
なんでかは分からないとの事だった
だけど、何となく分かる
苦しいんだ
彼らは、教師と生徒という壁はあったものの
よく一緒にいることが多かった
晴明からも、よく話しかけに行っていたし
佐野も、それを苦に思っていないことは一目瞭然だった
そんな相手が、いきなり居なくなったんだ
顔を合わせたくない、そう考えてもおかしくない
葬式が始まって、晴明の前まで来た時
悲しさと怒りがふつふつと湧いてきた
今すぐお前のことを殴りたくなった
……勝手に死んでんじゃねぇよ
「馬鹿野郎……」
「……晴明くん、空で元気しとるかね」
「さぁな」
車に乗りながら、淡々と話をしていた
「……分かりきってたことやのに」
凜太郎からポロリと出たその言葉は、とても重かった
そう、分かりきっていたんだ
晴明は人間で、俺らは妖怪
いくらタフだからといっても、妖怪と比べるとやはり劣る
寿命も、妖怪と比べると短い
晴明が先に逝くことなんて、分かりきっていたんだ
だけど、それでも思ってしまう
「もう少しだけ、生きて欲しかったな」
「……そやね」
佐野side
晴明が死んだ
とてつもない喪失感が走った
そして、なんとも言えない感情が俺の中から湧いて出てきて
そのあとの記憶は無い
だけど、泣きじゃくったのだけは覚えている
泣いたのなんて、何年ぶりだっけ……
もうあの学校に行っても、晴明はいない
だけど、行きたかった
もしかしたら、また……
そのあとからの行動は何故か早かった
そして100年経った
俺は秋雨と一緒に教員免許を取って、俺らは百鬼学園に雇ってもらった
神酒と秦中には驚かれた
まぁ、教師になるタイプでは無いもんな
雇ってもらったあとは、淡々と仕事をこなした
たまに飲みにもいった
だけど、どこか足りなかった
どこか穴が空いたように
「佐野くーん」
後ろから神酒に呼ばれ、俺は振り返った
「学園長が話あるて、あと秋雨くんも呼んどいてな」
俺、なにかしたっけ?
そんなことを考えながら、秋雨を連れて学園長室に向かった
「お疲れ様です 」
扉を開けると、学園長が優しい声色で出迎えてくれた
近くのソファーには神酒と秦中もいた
珍しい組み合わせだな……
「さて、早速本題ですが……」
と、1枚の紙を出した
多分、新入生か転校生だろう
そんなに問題児なのか、と思ったが
顔を見た瞬間、息を飲んだ
晴明の顔に酷似していた
「……これ、晴明の子孫か?」
最初に口を開いたのは秋雨だった
学園長はゆっくり頷く
「どうやら、彼は霊や妖怪などが見えてしまう体質なんだそうです」
それで学校に馴染めなかったが、百鬼学園の存在を知って、転校を希望しているとの事だった
「待ってください」
秦中が話をさえぎった
「どうして俺たちにそれを?」
そう、別に他の教師にも話していいはず
それでもここの4人だけに話しているということは
「どうやら、彼には退魔の力が受け継がれているようなんですよ」
退魔の力
安倍晴明の子孫である安倍晴明が継いだ力だった
だけど、継いだのは晴明だけだったはず
双子の兄である雨明には継がれていない
なのになんで……
「それで、この4人の中で彼の担任を決めたいなと思いまして」
正直、乗り気ではなかった
多分、3人もだ
だが、このままでは決まらない
仕方なく、俺は手を挙げた
「俺がやります」
3人は驚いた顔をしていた
「いいのですか?」
多分、気遣ってくれているのだろう
辛い
心の中ではそう思う
だけど、何となく
彼に「期待」をしていた
学園長side
驚きだった
まさか佐野くんがやってくれるなんて、思ってもいなかったからだ
やるとすれば、秦中くんや秋雨くんだと思ってたから
プルルルル、プルルルル
スマホがなった
俺は誰かを確認せずに出た
……というか、誰がかけてきたのか何となくわかった
「はい、もしもし」
『もしもし、決まりました?』
俺の予想している通りだった
「はい、佐野くんがやってくれるそうです」
『へぇー、ってえ!?』
まぁそうなりますよね
『か、彼が!?』
というか教師になってたんだ、と少し失礼なことを言った
「まぁ、彼ならあなたが暴走して求められるでしょうし、こちらにとっては好都合ですけどね」
『まぁ、確かに』
「というか、学校来て早々爆発とかしないでくださいね」
『き、肝に銘じておきます』
「と言っても、ダメでしょうけどね」
『まぁ自分もそんな気がします……』
と、肯定した
出来れば否定して欲しかったよ
「君が来た瞬間、金が飛びまくるのは目に見えてるので100億ぐらい用意しとかないとですね」
『そんなに爆発したら、さすがに僕も死にますよ……』
『おーい、そろそろ出んと間に合わへんでー』
『あ、わかったー!』
『じゃあ、また学校で』
「えぇ、待ってますよ」
と、電話が切れた
相変わらず元気ですね……
さぁ、これからどうなるのか
「楽しみですね」
コメント
3件
凄く面白い話しです!続きが楽しみです(^○^)
すごく良かったです。次の話楽しみに待ってます。(*^^*)
あけおめー、ことよろー 今回少し長かったっす