2週間と2日くらいか、仕事にも慣れてきたがいずれにしても自分自身、能力はわからずじまいだった。
色々、生活の中で試してはいるのだがなにか起きる予兆もない。暗さを帯びるだけの現状に、遂にため息が癖になってしまっている。
3回の仕事は生きて帰った。未だ銃の引き金は堅く、引くことができない。
すっかりチームの腫れ物扱いに慣れてきたこの頃、新しい依頼がクロノスタシス一同の耳に入ってくる。
自警団の存在である。前々から耳に入るは入るのだが、情報が何もない分自分の中で都市伝説化してきていたりするのだが、依頼を受けその存在があることを確認するのが今、この瞬間である。
いつもどおり、夜中に活動するのだが、今回の任務は敵本拠地への進行、殲滅に重点が置いてあるため、これまで私が生き残ってきた、パトロール任務とワケが違う。
確実的な不安感が増す中、その不安を取ろうと少しずつ速歩きになっていく。
その道中でもチームは暇を持て余すかのように会話を広げている。
暗い道の先陣を切る女、リピドがいつもどおりの落ち着いた声色で言った。「暑いなあ、蒸し風呂のようだ。」気温が高い夜の中、その言葉に対してシリウスが問う。「蒸し風呂なんて入る機会ねえからわからねえよ。入ったことあんのか?」「あるよ。世界が狭いね、相変わらず。」あからさまに煽るような口調で言うリピド。それを、ハイハイといなすシリウス。
それにカルパスが「慣れてきたね。つらないな。」と言ったのが逆鱗に触れたのか。自分をコンテンツとして思われたくないのか、どっちでもいいが、放送禁止になる言葉を連呼していたので駄目だ。
メグはどうとでも良さそうである。
タスクは、偵察を兼ねて先に行っているためこの場にいない。あのおっさんうるさいからこの会話に入って敵にバレるかもしれなかったから良かった。
腫れ物である私は会話を聞き流し不安を消す努力をしているだけであった。
コンクリで固められた、3回建ての小さなビルが山にひっそりと立っているので、景観はあまりにミスマッチだった。
リピドとメグの戦闘員を先頭にして敵地に踏み込むとリピドが何かを踏む。「メグ!下がれ!」
そう叫ぶリピドが後退し、出現したなにかから逃れるも、メグは取り込まれる。黒い球体に飲み込まれその場からメグが居なくなる。
「クソッ。飲まれたか。」と、動揺しながらも冷静にメグの携帯gpsで位置を確認するシリウス。
「メグは無事?」カルパスの問いにシリウスは無言を返した後「わからん」とだけ返す。
リピドが「探しに行く。待ってて。」とだけ言って走って行った。
私、カルパス、シリウスだけ取り残されるような形になり全員、いきなりの二人離脱に対応できず、放心している。
シリウスは「カルパスならまだしも、この小娘の世話までできるか!」と一人で違う通路に行く。
「足は引っ張らないよう努力する。お取りにでも使えばいい。腐っても儀式はしてある。出来ることがあればするさ。」私が言うと
「はあ…」というため息の後「仕方ない」と言ってカルパスとの共同戦線に身を投じる事になり、早速歩き始める。
私は銃ののこり弾数を数えておく。
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ここにおまけ書いときます 「メグ!下がれ!」 カーンとタライがメグの頭に 「てぁ………… 滲み出す混濁の紋章 不遜なる狂気の器 湧き上がり 否定し 痺れ、瞬き、眠りを妨げる 爬行する鉄の王女 絶えず自壊する泥の人形 結合せよ、反発せよ 血に満ち己の無力を知れ 」 「お、おい何いってんだ?」 「破道の九十番、黒棺! んあ…私は、何を?」 何も起きなくてよかった