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ほぼ同じ造りのまま地下道は終わりを迎えた。
行き止まりの手前に上方向へのらせん階段。
鉄製でごっつい非常階段のような造りだ。
上方向は階段のせいで見えない。
「ここはきっと時計塔なのです」
「そうだろうな」
佳奈美の言葉に先輩が頷く。
「銅像の視線を辿ったらここに辿り着いた訳か。やはり偶然ではないだろうな」
「早速上ってみましょう」
雅も積極的だ。
先輩も頷く。
「そうだな。朗人、念の為ヒューム値を確認してくれ」
僕はちらりと測定器を確認した。
「1.0、変わりありません」
「よし、なら行くぞ」
という事で階段を上り始める。
窓が一切見当たらないので真っ暗なままだ。
一番強力な光源は先輩が持っている電池式ランタン。
でも階段のせいで僕のあたりまで光はあまり届かない。
戦闘の先輩と僕とはらせん階段半周以上離れているから。
100円ショップで買った300円ヘッドランプの灯りは心許ない。
微妙に後ろ方向が不安な感じで後に続く。
常にヒューム値を確認しているので化け物は出ないだろう。
それはわかっているのだけれど。
階段はけっこう長い。
もう何周しただろう。
上るペースが少し落ちてきた。
つまり先輩が疲れてきたという事だろう。
そして当然佳奈美も。
雅はまあ体力特別製だけれど。
ちなみに僕もちょい疲れ気味。
「あとどれ位なのですかねえ」
「GPSも効かないからな。よくわからん」
「ペンローズの階段を上っているような気がするのですよ」
佳奈美その冗談はやめてくれ。
でも確かに全く変化が見られない。
何も無いコンクリ壁のままだ。
「時計塔の高さはどれくらいでしたっけ」
「文字盤のところで約30メートルなのです。1階あたり3メートルとして10階分と、あと地下の低さが加わるのです」
疲れている割には佳奈美、なかなか冷静だ。
「1階分階段を登るのにどれくらいかかるだろう」
「普通はせいぜい2分です。でもここはらせん階段だし暗いので、時間が余分にかかるのです」
そんな感じで延々と階段を登る。
登る速度もかなり落ちてくる。
そしてやっと変化が見えてきた。
少し明かりが上方から漏れている。
「やっと、ゴール、なのですよ」
「そんな感じですね」
声の調子で佳奈美と雅の体力差がよくわかる。
ちなみに先輩も肩が上下しているのをみると大分お疲れ気味。
僕自身も雅より先輩や佳奈美に近い立場だ。
あたりは少しずつ明るくなる。
そして階段は遂に終わった。
円形の鉄板製足場がらせん階段の周りを囲んでいる。
そして階段の終わりと反対側の場所からはしごが上に伸びていた。
明かりはその上の一方向から漏れている様子だ。
「まず私が登ってみるぞ」
神流先輩が宣言。
ランタンを置いてはしごを登っていく。
先輩の靴が僕の目の高さ位のところで止まった。
それで一番上らしい。
体を色々ひねったり、足を組み替えたりしている。
その状態でぐるりと周りを見回している様子だ。
そして上から報告が。
「時計の機械室だなここは。ついでに言うと確かに窓がある。なかなか面白い物が見えるぞ。更に怪しい蓋もある。開けるべきかそのままにしておくべきか。取り敢えず交代で1人ずつ見てみよう」
先輩ははしごを下りてきた。
次は佳奈美だ。
上へ登るなり声がした。
「なるほど、窓の方は理解したのです。こういう事なのですね。蓋の方はきっと開けていいと思うのです。取り敢えずは交代するのです」
何が見えたのだろう。
次は雅だ。
こうやって下から見ると先輩や佳奈美以上に女の子な体型。
胸もそうだけれどお尻や足のラインもだ。
なので思わず僕は目を背けてしまう。
「なるほど。これが順路だったのですね。理解しました。蓋は……これは開けていいと思うのですけれど。他は単に時計のメカですね。電気式です」
雅が下りてくる音がした。
いよいよ僕の番だ。
登ってみると確かにこれは時計の機械室。
思った以上に近代的な内部だ。
4面の時計もひとつの操作台でコントロール可能。
まあ作られたのが最近だから当然か。
そして窓からは塔が見えた。
形はこの時計塔と大分違う。
そもそも時計が無い。
代わりに途中から鉄骨製のフレームになり、上に広域用のアンテナが伸びている。
つまりは携帯電話か何かの電波塔だ。
「もう一つの塔とは電波塔の事だったんですか」
先輩が頷いた気配。
「そのようだな。多分銅像2体が見ている場所、崖の上にあるのだろう。さて朗人君、君が最後だからここで判断。その窓のすぐ下に何か蓋がある。その蓋、開けてみるべきか否か。なお先発3人は開けてみるべきと言う意見だ」
確かにその通りの場所に蓋がある。
手でつまめば開けられそうだ。
でも念の為聞いてみる。
「何か、例えば爆発物でも仕掛けられていたら」
「朗人君は尊い犠牲となる。そういう事だ」
おいおいおい。
でもちょっと冷静に考えよう。
そもそも学校の時計塔にそんなトラップを仕掛ける必要があるだろうか。
断じて無い。
大体こんなところで爆発なんか起きたら確実に学園側の責任になる。
よし、無いに賭けた。
「なら開けますよ」
宣言して蓋を開く。
当たり前だが何もおこらない。
中には何か紙が入っていた。
罫線から見てノートの切れ端だ。
そこに何かメモが記されている。
「中にメモがありました。持っておりますか」
「ああ頼む」
という事でメモを取る。
「他には何もありません」
「よし、下りてこい」
僕はメモを指先で持ったまま、はしごを下りていく。
皆のところまで下りた後、電池式ランタンでメモを再確認。
記されているのはWWWアドレス。
http://から始まり最後は.stlで終わる。
他には何も記載されていない。
「何を意味しているのでしょうか」
「拡張子もHTML形式じゃないな。Webページでは無いのか」
「.stlは3Dデータの拡張子なのですよ」
あっさり佳奈美が断言する。
「まあこのアドレスは後で調べよう。スマホで撮っておけば問題ないだろう」
「はい」
「なら朗人、ご苦労だがこれを元に戻しておいてくれ」
という事で僕は再びはしごを登り、メモを戻して蓋を閉めて戻ってくる。
「よし。収穫は充分だろう。戻るぞ!」
来たルートを戻っていく。
それにしても階段が長い。
目が回りそうだ。
◇◇◇
また神流先輩を肩車して蓋を開けて縄梯子をセット。
そうして無事大学部の人文教育棟本館1階へと戻ってくる。
「何か朗人、顔が赤いのです」
「ちょっと暑かったせいだろう。雨具を着込んでいたから」
誤魔化して地下道装備を脱いで靴を履き替えた。
そうして理化学実験準備室へ向かう途中。
「ついでだからコンビニで明日の昼ご飯の買い出しをしておこう」
ああ、気がつかなくていいのにと思ったのは内緒だ。
「賛成なのです」
「いいですね」
僕以外の賛意により、厚生棟に入っているコンビニへ。
「明日は何を食べたいでしょうか」
「あまり高いのにはしないでくれよ」
「1人500円として2,000円以内だな」
「了解であります」
そんな感じでコンビニ内へ。
「お、ラム焼き肉の冷凍があるのです」
「200グラムで398円だと結構かかるな、却下」
「厳しいのです」
そんな感じで色々考えながら冷蔵・冷凍ケースの前を行き来。
そして僕はちょうど手抜きによさそうなものを発見した。
新発売か何かで少し値引きしているのもポイントが高い。
「つけ麺なんてどうですか」
「悪くないな」
先輩はパスしたぞ。
「そうですね。確かに寮では食べませんし」
「なら私もそれでいいのですよ」
なし崩し的に決まった。
つまり誰も案を持っていなかったようだ。
そんな訳でまずはつけ麺生麺入り2人分の袋をちょっと多めに3つ取る。
「足りないのです。」
佳奈美に1袋追加された。
「こういう場合の1人前は少ないようですしね」
雅が1袋追加。
「どうせなら景気よくもう1袋行こうぜ」
神流先輩が更に1袋追加。
合計6袋12人前。
1人3玉計算だ。
お前ら本当にそんなに食べるとかと言いかけて今日の昼食を思い出す。
確かにこの3人なら食べるかもしれない。
それに味玉子とかメンマとかチャーシュー代わりのハムやネギも加わり。
結果として弁当と同じ位の費用が消費されることになってしまった。
はあ。