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別荘での暮らしは、圧倒的に楽。
「滉斗~!今日のお昼ごはん、裏庭で食べよー」
晴れた日は必ず二人で裏庭に出る。言葉遣いとか姿勢とか、そんなの気にせず、二人で笑い会った。
「僕さ、日向ぼっこ好きなんだよねぇ。暖かいし、ふわーって感じ」
涼兄ぃと二人で日向ぼっこをしているときは、少しだけ父さんに愛されてたときのような、温かい気持ちになれた。……元貴、どうしてるんだろう。
「滉斗?どうしたの、考え事?」
別荘で暮らすことになって、時間にも精神的にも余裕ができてから、元貴のことを考えてしまう。もちろん、一瞬たりとも元貴を忘れたことなんてないが、まだあの絵本読んでるのかなとか、さすがに絵本は読まなくなったかとか。
「なにか気になってる人がいるんでしょ、その顔」
いつの日だったか、いつものように日向ぼっこをしながら、元貴のことを考えていたら、涼兄ぃにそう言われた。びっくりして、持ってたお菓子を落としそうになった。
「誰なの?滉斗の大切な人?」
俺は伝えるべきか悩んだ。伝えたところで、俺がここにいる以上、元貴を助けることはできない。他人を連れ込むことは、禁止されてるのだから。
「う~ん、誰のこと考えてるのか分からないけど、気になるなら急いだ方がいいんじゃない?まぁ、僕の勘だけど」
急ぐ?なにを急げと言うんだ。元貴は施設にいるんだ、引き取られてなければ。でも、悲しいけど、元貴を引き取るやつがいる気がしない。それにまだ、施設に居れる……まてよ。
涼兄ぃ、施設にいれる年齢って何歳までだっけ。
「施設?養護施設とかのこと?え~っとね、18とかじゃなかった?」
まずい、俺が今年22歳だ。俺が4歳のときに元貴が産まれたのだから、元貴は今年18歳だ。元貴の誕生日は9月14日、今日は、9月10日。元貴が施設に入れられたのは、産まれて1ヶ月ぐらいのときだ。まだ猶予はあるかもしれない。でも、施設は誕生日なんて気にしないかもしれない。18になる年ってだけで、誕生日までまたないかもしれない。
「ねぇいるんでしょ、滉斗の大切な人。それも施設に」
涼兄ぃのその一言で、俺は今すぐ迎えに行くと決めた。
涼兄ぃ、施設に俺の弟が居るんだ。今年18になる。頼む、今年が最後なんだ、どこに居るか分かってるうちに、迎えに行かさせてくれ。
叫ぶように早口で言った話を、涼兄ぃは、驚いたような悲しそうな目で、最後まで聞いてくれた。
「そっか……どうやったら、連れてこれるかな……」
涼兄ぃは、連れてくる前提で話をしてくれた。どうすればお父様の目を掻い潜れるか、友達だといえば追い出される。俺の家族だなんて、通用しない。
「使用人としてなら連れてこれるけど……」
それは俺も分かっていた。新しい使用人だと言えば通してもらえる。使用人を増やすことだけは許されていたから。でも、元貴を使用人にするなんて、助ける意味がないじゃないか。
「……あ!いいこと思いついた!」
その方法が、使用人として元貴を連れてきて、使用人の仕事はさせずに、俺ら側として生活させる。お父様には、新しい使用人だと言っておいて、俺らは友達として接する。
「別荘の使用人さんたちには、僕が口封じしとくよ。お金渡しとけば黙っててくれるし」
急いだ方がいいよね。と言って、すぐに根回しにいった涼兄ぃ。こっそり後を付けると、本当に大量の現金を手渡しているのを見た。
「今度からここに暮らす男の子がいるけど、お父様たちには伝えないでね。これあげるから」
使用人さん一人一人に、意味分からない厚さの現金の束を次から次に渡している涼兄ぃ。びっくりというか、この家が金持ちだったことを改めて実感していたら、涼兄ぃに付いてきてほしい人が居ると言われた。
「じいちゃーん」
涼兄ぃと共に使用人の棟の一室に向かう。涼兄ぃがじいちゃんと呼ぶ人物。それはこの家で最年長の使用人だった。前に、涼兄ぃが小さい頃ずっと一緒に居たのがこの人だから、じいちゃんと呼んでいると聞いた。
「どうしたのですか?涼架お坊ちゃん。わざわざこちらまで来るとは、大層、重要事項のようですね」
「そうなんだよ~。ねぇ、新しい子、連れてくるんだけど、お父様には言わないで」
言ってる内容とは真反対のふわふわとした喋り方で、お願いする涼兄ぃ。俺からも、お願いしてみることにした。俺の弟であること、施設にいること、今年が最後なんだということ。
「……さようでございますか」
最後まで黙って聞いてくれたその方は、俺が話し終わると、少し考えている様子だった。
「お願い。じいちゃんなら分かってくれるでしょ?」
涼兄ぃのその一言に押されたのか、その方は俺たちに頭を下げた。
「かしこまりました。決してお父様にはお伝えしないこと、お約束いたします」
その後、その方からも、改めて使用人さんたちに話をしてくれて、元貴を迎えに行く準備が整った。
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コメント
2件
最高です!!!!!!!
結構ギリギリのタイミングで引き取ったのですね… 弟思いの若井さん、素敵すぎます💓 2人が孤児院で大森さんと会った時の衝撃を色々感じそう… 続き楽しみにしてます!!