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うげ、と内心思うが、我慢して笑顔で応える
「えへへ…ケンジさんの猫ちゃんになった気分」
(こう言えば、また時計かネックレスか、何か買ってもらえるかも。あー早くショッピング行きたい)
「今度、どこか旅行でも行こうか。温泉とかどう?」
「えーっ、行きたい!ケンジさんとなら、どこでも楽しいし」
(旅行代タダで好きなとこ行けるじゃん、ラッキー)
わざと口元に手を当てて笑う俺に、男は目を細めてワインをひと口飲んだ。
レストランを後にすると、男と腕を組み
六本木ヒルズのショッピングエリアへと向かった。
さっきまで座っていただけのランチとは違い、ここからは俺のターンだ。
「ソラくん、まずはどこ見て回りたい?」
男が優しい声で尋ねる。
俺は心の中でガッツポーズをしながら、満面の笑みで答えた。
「ん〜、どうしよっかなぁ……あっ!最近SNSで見た、あのバッグのお店、ちょっと覗いてみたいかも!」
わざとらしく悩むフリをして、事前にチェックしておいたブランド名を口にする。
男は「ああ、あのブランドね」とすぐに頷き
まるで俺の好みを全て把握しているかのように振る舞う。
それがまた、俺にとっては好都合だった。
店内に入ると、煌びやかなディスプレイに目が奪われる。
「これ可愛い〜!ケンジさん、これどう思う?」
気になったバッグを手に取って見せる。
男は真剣な顔でバッグを検分し
「ソラくんに似合うんじゃないかな」
と、お決まりのセリフを口にする。
「ほんと?!でもこれ、3万もするし…」
わざと不安そうな顔をしてみせると、男は得意げに笑った。
「ソラちゃんが気に入ったなら、金額は気にしなくていいよ。頑張ってるソラちゃんへのご褒美だからね」
(はい今日勝ち確!)
心の中で叫んだ。今日の収穫は、ここで確定だ。
俺は再び
男に向かって最高の「ソラ」スマイルを向ける。
「ケンジさん僕のおねがいなんでも叶えてくれて…本当のパパみたいに大好き!」
半ば飛びつくように腕にしがみつくと、男は満足げな顔で店員に声をかけた。
「これを包んでくれるかい」
支払いはもちろん、男のカードだ。
新品のブランドバッグを手に、俺は内心
今日のノルマ達成に安堵していた。
男は他にもアクセサリーや洋服の店に付き合ってくれたが、俺はもう欲しいものはない。
後は、適当に時間をつぶして、今日を終わらせるだけだ。
「そろそろ、カフェでも寄って一息つくかい?」
おじが優しく提案する。
俺は「うん!」と元気よく頷いた。
ここから先の時間は、惰性だ。早く帰りたい。
「どんなカフェに行くの?ソラ、カフェオレが飲みたいな~」
俺の言葉にケンジは柔らかく微笑み、
「それなら、この前DMでソラくんが行きたいって言ってたカフェ行こうか」
そう言って俺の肩に手を回す。
また腕組みするのかと内心うんざりするが
俺はおじの肩に頭を預けると甘えたような表情を見せる。
「んへへ、ケンジさんの腕ってかっこいい~鍛えてるの?」
「ソラくんが華奢すぎるからだろうなぁ」
「えー?それ褒めてる?」
「褒めてるさ。男でこんな可愛いのソラくんぐらいだよ。本当にちゃんとついてるのかなぁ、なんて」
言いながら尻に手を回してくる。
「あっ!ここかも!」
わざとらしく声をあげてその手から逃げ、逆にそう聞くと
「あ、あぁ」と答えなのでおじの手を引いて中に入った。
カフェの中は程よく暖房が効いていた。
席に着くと早速メニューを広げる。
「ここね~このカフェオレが有名なんだって」
「どれどれ……へえ、確かに美味しそうだね」
「でしょ?ソラはこれ頼んじゃおっかな~」
言いながらメニューを閉じる。
注文を済ませるとおじは俺に向き直った。
その帰り、時刻は既に9時を回っている。
「ソラちゃん。今日はありがとうね。付き合ってくれて」
「こちらこそ!ケンジさんが連れていってくれるお店いつもおしゃれだし楽しいです」
「良かった。それでさ、今日はホテルを取ってあるんだ」
「え?聞いてないですけど…」
ホテルを取ってある、と聞いて思い浮かぶのはセックスしかない。
けれどいい歳こいたオジサンのちんこ舐めるとか
それこそこんなおっさんとセックスをするなんて考えただけで反吐が出る。
「えっと、今日はもう…帰ろうかなぁと……」
「そう釣れないこと言わないでさ。ちょっとぐらいいいだろ?」
「いや、きょ、今日は帰りま」
言いかけたところで力強く手首を掴まれて「ソラくんに20万近くは使ってるんだ…ちょっとぐらいヤらせてくれても減るもんじゃないだろう?」
「ほら、早く行くぞ」
強引にホテルに連れ込まれそうになり
俺は我を忘れて
「行くわけない…!自分から大金貢いどいて見返り求めるのきしょいって分かれよ…!」
と語気を強くして言い放ち
男の手を振り払ってしまった。
「っ…は?な、なんだよその言い草…っ!!?」
すぐに怒号が飛んできて、ビクッと肩が跳ねた。
その直後男は俺を近くの壁に追いやり脅すように言う。
「……こんだけ金貢いでんのに?金貰ってんのに?このまま帰るとか、それはないでしょ、ソラくん…なあ?!」