第36章「黄昏の使者リンネ」
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【神殿に届いた光の破片】
その日、空がにわかに曇り、神殿全体を覆うような重い気配が走った。
中央の祈祷の間に突如として閃光が落ち、空間に裂け目が生まれる。
眩い光の中から、一人の人物がゆっくりと現れる。
彼は銀の髪に金の装飾が刻まれた黒いコートをまとい、蒼い瞳を持っていた。
年齢は不明。どこか優しげで、しかし、瞳の奥に何か“違和感”を抱かせる空気をまとっている。
???「やっと……君たちに会えた」
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【名乗りと“語られる未来”】
彼は名をこう名乗った。
???「私はリンネ。“黄昏の使者”だ」
「この宇宙に迫る破滅を止めるために、未来からやってきた」
リンネ「君たちは“光と闇の均衡を揺るがす存在”。
放っておけば、未来は必ず滅びる。だから私は、君たちを導きに来た」
セレナは微かに眉をひそめるが、声には出さない。
ゲズとウカビルは彼の語る“未来の危機”に耳を傾ける。
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【語られる「三柱の王」】
リンネは言う。
リンネ「この宇宙には、3人の王が存在する。
君たちが戦ってきたのは“死と支配”の王、ルシフェル」
リンネ「だがその先には、もっと深い絶望がある。
“純粋な悪”の王――闇の王サタン。
そして、そのサタンと対をなす“創世の光”――光の王アダム」
ゲズが問う。
ゲズ「お前は……どっち側なんだ?」
リンネは笑みを浮かべる。
リンネ「私はただの観測者だ。正義でも悪でもない。
君たちに“選ばせる”だけさ、未来を。どちらの王に跪くかをね」
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【ゲズへの“未来の幻視”】
リンネが手をかざすと、ゲズの視界に走馬灯のような映像が流れ込む。
焦土と化した地球。
セレナが叫ぶ。リオンが血に染まる。
ウカビルが棺に閉ざされている。
そしてその中心で、ゲズがただひとり、剣を握り叫んでいた。
ゲズ「全部……俺のせいなのかッ!!」
映像が消えた時、ゲズは膝をつき、息を荒げていた。
リンネは静かに言った。
リンネ「それが、今の君の運命。だが、選び直すことはできる」
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【去り際の言葉】
リンネ「この時代での私の役割は、もうすぐ終わる。
次に会うとき……君たちは、真実を知るだろう」
リンネ「“光の王”は、全ての始まり。
そして、私の――“復讐”の標的でもある」
その最後の一言に、ゲズたちは目を見開く。
だが次の瞬間、リンネの姿は光の中へと消え去っていた。
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【その夜】
ゲズは神殿の外に出て、月を見上げていた。
その隣に、セレナがそっと腰を下ろす。
セレナ「……あの人、どこかおかしかった」
ゲズ「俺も思った。……あれは味方の顔じゃない。けど……何かを知ってる」
セレナは、そっとゲズの手を握った。
セレナ「迷わないで。私は……あなたを信じてるから」
その言葉に、ゲズの心が少しだけ軽くなった。
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