テラーノベル
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川野ちずるは、苛立った声でスマホに向かって話していた。本来なら、人もまばらな池袋へ友達と繰り出す予定でいた。
死のオーロラは美しく、その妖しい輝きのもとで歳上の男子を捕まえて、朝まで騒ぐつもりでいたのだ。
しかし、その為に買ったオフショルダーの花柄のトップスも、スキニージーンズも、その役割は果たせそうもなかった。
彼氏が欲しい年頃のちずるは、セックスにも興味津々で、 出来ることなら、早いうちに経験しておきたかったし、それが大人になる為の証明なのだと勝手に思い込んでいた。
ところが、友人達は皆家族と共に避難して、最後に繋がった親友の美優にもドタキャンされて、怒り任せに悪態をついていたのである。
「ウザッ! もういいし!」
途切れ途切れの無料通話は、そこで切れてしまった。
SNSには、両親からのメッセージが入っていた。
「船に乗ったらメール頂戴」
ちずる自身、最悪の事は考えていた。
遊び相手が見つかったら、親のメールは無視するつもりだった。
しかし、上手い具合にはいかず、心にも無い文面で良い子を演じた。
「今から乗るね。神戸行きのフェリーだよ」
その時、人の気配を感じて振り返ると、何処かで見た事のある顔が、非常階段の扉の隙間に見えた。
痩せこけた中年男性の濁った白目を見て、ちずるは思い出した。
そして、途端に可笑しくなって笑いながらちずるは言った。
「あはははははは、係長!ウケる~!」
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