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みるくちょこ🍫
夕方の実家は、久しぶりに人の気配で満ちていた。
玄関に並んだ靴の数がいつもより多く、リビングからは笑い声が絶え間なく聞こえてくる。
「ほんと、久しぶりねぇ。みんな揃うの」
母が湯のみを配りながら、嬉しそうに目を細める。
父も新聞を畳んで脇に置き、「元気そうで何よりだ」と穏やかに頷いた。
いるまはソファに腰を下ろし、ひまなつはその隣に自然と肩を寄せている。
こさめはテーブル越しにらんの袖をつまみながら、楽しそうに話す。
みことはすちの隣にちょこんと座り、両親の話に相槌を打っていた。
そんな和やかな空気の中で、母がふと思い出したように言う。
「そういえば。今年、いるまとみこととこさめの誕生日、みんな実家に集まってお祝いしない?」
一瞬、空気が止まった。
みことは反射的にすちの袖をきゅっとつまむ。
「……ぇ……」
すちと二人で過ごす約束をどうしようと悩んでしまう。
一方で、いるまは即答だった。
「俺は無理。なつ兄と過ごすから」
「即答すぎだろ」
父が苦笑すると、 ひまなつは悪びれもせず「もう予定入ってるんだよな」と肩をすくめる。
こさめも手を挙げるようにして、
「こさめもらんにぃと過ごしたいな〜。だから別日にしよー!」
と、屈託のない笑顔で提案する。
母と父は顔を見合わせ、少しだけしょんぼりとした。
「そっかぁ……」
「まあ、大人になったらそうなるか……」
それでも諦めきれず、母が言う。
「じゃあ、翌日はどう?」
その瞬間だった。
「いや、前日がいいな」
すちが、穏やかながらも迷いのない声で口を開いた。
みことは驚いて顔を上げる。
すちはみことを見ずに、両親へ向けて続けた。
「当日はそれぞれ大事な人と過ごしたほうがいいと思うから。 前日に、家族でまとめてお祝いするのがちょうどいいかなって」
「……同意」
「右に同じ」
ひまなつとらんも短く同意する。
あまりに自然な流れに、両親は少し目を丸くしながらも、
「……なるほどね」
「じゃあ、前日にしようか」
と、納得することにした。
みことはほっと息をつき、無意識にすちの袖をもう一度つまむ。
すちは気づいたように視線を落とし、安心させるように微笑んだ。
話題は自然と、誕生日当日の準備へと移る。
「で、何が食べたい?」と母。
「欲しいものとかあるか?」と父。
「甘いもん。あとクマのグッズ」
「……相変わらずいるまは分かりやすいわね」
こさめは身を乗り出して、
「スルメイカ!あとサメのグッズ!」
「誕生日にスルメ……?」
父が戸惑うと、 らんが「まあ、こさめらしいだろ」と肩を竦める。
そして、みこと。
少し迷ってから、膝の上で手を重ね、小さく口を開く。
「……ねこ、グッズ……」
その控えめな言い方に、母の顔がぱっと明るくなる。
「猫ね!いっぱいあるわよ〜」
「可愛いの探しとくか」と父も頷く。
その様子を見て、すちはくすっと笑いながら言った。
「じゃあ俺、腕によりをかけてケーキ作ろうかな」
「え、マジ?」といるまが目を丸くし、
らんは「じゃあ誕プレは俺が用意しとくわ」と軽く手を挙げる。
ひまなつは「飾り付けしとくな」と言いながら、 隣にいるいるまの頭をぽん、と軽く撫でた。
「……っ、なにすんだよ」
照れたように目を逸らしつつも、いるまは拒まない。
みことはその光景を見て、ふっと微笑む。
こさめは満面の笑みで「たのしみ〜!」と声を弾ませ、 いるまは照れたまま小さく頷いた。
久しぶりに集まった家族と、大切な人たち。
それぞれの想いが少しずつ重なって、
今年の誕生日は、きっと忘れられない時間になる――
そんな予感が、あたたかくリビングを満たしていた。
コメント
4件
あぁ…翌日はね…きっと、ね…だから翠くんが言ったんだろうなぁ……
これはあくまでも私の憶測でございますが……ね、翌日は…ね……