弱虫ペダル 夢小説
東堂尽八
「だだいま戻った!」
そう言い東堂庵の扉を開けたのは私の幼なじみ東堂尽八だ。彼はこの夏のインターハイで王者から降りてしまう結果となってしまった。それが私にはどれほど辛いのか、苦しいのか検討もつかない。ただ彼がいつもと同じように箱根学園の寮から帰ってきたことに少し安心し、それと同時に
(尽八の悲しそうな感情が一切読み取れない…尽八にとって王者から降りることは悲しくなかったの?)
そんな疑問が浮かび少し失望した。
「尽八くん部屋に🌸ちゃん通しているよ。あぁそれとトメさんが部屋掃除してくれてるよ」
「そうか!それなら後ほど礼を言わねばならんな!」
そんな声が聞こえてきて「あぁもう少しで会えるんだ」と思うとつい笑みが溢れてしまう。
そんなことを考えているとガチャっと扉から尽八の姿が見えた。
「おかえり、あの、、、インタ」
「ただいま!やはり俺が帰ってくるのを楽しみに待っていただろう?」
「あ、うん、、そりゃね」
インターハイのことを聞こうとすると話を遮られてしまったそれほど話したくないのか、もしくはいつものように自分を語り出すのか知ったもんじゃない。だけれど遮ってくれて良かったと今になって思う。なぜなら尽八にかける言葉が分からない。ただそれだけ。残念だった?惜しかった?3年間頑張ってたね?どれも違うような気がする。
そんなことを頭で考えていると尽八が話し始めた。
「今年もインターハイ来てくれていたな!3年間欠かさず来てくれたこととても嬉しかった!感謝するぞ🌸!」
「そんな褒められたことじゃないよ…。たまたま3年間暇だっただけで、、、」
なんて言っては見たものの本音は好きで好きで堪らない尽八の頑張りを少しでも長く目に焼き付けておきたいと思っていたからだ。でもそんなことを言えるほどの勇気私には無い。すると尽八がぽつりぽつりと話し始めた。
「俺はな今年失ったものが2つある。聞いてくれるか?」
そう言う尽八はなんだか私に弱いところを見せてくれるようで喜んじゃいけないとわかっていながらも嬉しくなった私はコクリと首を縦に降った。
「1つ目はな、戦友の話からしよう。俺はそいつと大学生になって、大人になってもなおロードレースができると信じて疑わなかった。だが現実は違ったのだよ。」
尽八はきっとイギリスへ旅立ったマキちゃんとやらを話しているのだとなんとなく確証は無いが察した。いつもなら頭より先に口が動くように話す尽八が一つ一つパズルのピースをはめていく様に言葉を選んでいる。それがわかったから。私はいつもより彼の言葉を聞き逃すことなくしっかりと聞いた。彼はいつもより小さく、格好良く見えた。
「2つ目は優勝…いや王者だな」
そう言う彼は先程とは打って変わって彼の背がとても大きく見えていた。
「総北に優勝を取られ、1桁のゼッケンも取られた。だが!俺たちの代で王者でなくなってしまった箱根学園後輩に想いを託した!俺はあいつらが優勝してくれることをひとつの夢にしたのだよ!」
なんていつもの調子に戻っていた。そこに少し悲しんだけど彼が初めて弱いところを見せてくれて口元が緩みかけた。でも辛い話を聞くと聞いている側も辛くなってしまうもので目に涙が滲んでいた。
「なあ🌸。」
「ん?」
「俺は大学生になって、社会人となってお前と離れることが堪らなく寂しい。だから俺と大人になったらで良い。結婚をしてくれないか?」
「は!?」
尽八がいきなりそんなことを言い出すものだから驚いてしまった。だけどこれは私の片想いと思っていたことが実は両想いだったって事なの??なんて戸惑っていたら
「驚くのも無理はない。お前が俺に好意を寄せているのかなんて俺には分からないがいきなりこんなことを言われたのだ。俺でも驚くよ。」
「だけどな、人とは移り、変わりゆくものだろう。俺はお前が知らないところで知らぬ女性になることがとても耐えられないのだよ。だから今返事をくれないか?🌸」
「…そんなのズルいよ…。」
「やはり断られるか…。」
「断るなんて言ってない!そんなのとっくの昔からOKするに決まってる!!」
言ってしまった。隠していた私の気持ちを。彼は戸惑っていた。私だって頭がぐるぐるしてるのに気づいたら言ってしまっていた。
「🌸!これからは必ず幸せにする!待っていてくれ!」
「待ってる…!」
こうして私の恋は実を結んだ。
コメント
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きゃあああああああ!!!!めっちゃ読んでてキュンキュンしました!!!!弱ペダいいですよね!!!!フォロー失礼します!