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スタジオの空気には、撮影が終わった後の“やりきった感”と“疲労”が同時に漂っていた。カメラが止まって「今日もお疲れ〜!」の声が響く。
わちゃわちゃと帰り支度を始めるM!LKの5人。
勇斗がテンション高くスタッフと話してる横で、太智は筋トレの話で柔太朗に絡み、場の空気は賑やかそのもの。
でもその中でひとり、少しだけ笑顔のトーンが薄い人がいた。
「……舜太?」
片付けながらも、仁人の目は自然とそっちを追っていた。
ふだんなら撮影終わりなんて誰よりもうるさいのに。
今日の舜太は、笑ってはいるけど声に張りがない。
カメラが止まった瞬間から、少しぼーっとしてる気もした。
(なんかこいつやせた?)
そう思った瞬間にはもう、気になって仕方がなくなっていた。
スタッフに挨拶を済ませて、荷物を肩にかける。
舜太もちょうど帰り支度が終わっていたみたいで、タイミングよく2人並んでスタジオを出る。
「おつかれ〜」
「おつかれ、仁ちゃん」
笑って言う舜太の声は、少し掠れてた。
廊下を歩きながら、仁人は横目で彼の頬のラインを見た。
頬骨が少し浮き出てて、顎のラインも前よりシャープになってる。
「なあ、舜太」
「ん?」
「おまえさ……痩せた?」
突然の問いに、舜太が一瞬キョトンとして笑う。
「え、まじで?そんな変わった?」
「変わった。てか、マジでガリガリ」
「ひどっww」
笑ってはいるけど、仁人の声はどこか優しい。
「ちゃんと食ってんの?」
「……んー、なんか最近食欲ないっていうか、別にダイエットとかじゃないんだけど」
「食欲ないっておまえ……寝てんの?体調悪いとかじゃなくて?
「寝てる寝てる!普通に元気だっておれ!」
「怪しいなそれ」
仁人は、舜太の背中を軽く叩いた。
「ガチで不健康体型だぞおまえ」
「うるさいわリーダー!」
「いやリーダー関係ないやろ」
2人の声が廊下に響いて、少しだけ笑いが戻る。
「……なぁ、このあと予定ある?」
「え?ないけど」
「じゃ、飯行こうぜ」
「え、まじすか仁人パイセン!!」
「まじ。俺の奢り」
「やば、じんちゃん奢りとか珍しない?!」
「うるせぇ〜w、太智じゃねえし」
そう言って、軽く舜太のキャップをポンっと叩く。
「はいはい、早くいきましょやー!!先輩!!」
「うるさい。メシ残すなよ?」
「残さへんて!」
エレベーターに乗り込む瞬間、
仁人がふと横を見た。
さっきまで少し沈んでた舜太の顔が、ほんの少し明るくなってた。
その笑顔を見て、仁人の胸の奥で小さく安堵が広がる。
ドアが閉まる音がして、
2人の笑い声が小さくスタジオの外へと消えていった。
__________
「いらっしゃいませ〜」
暖簾をくぐった瞬間、香ばしい煙と肉の焼ける音が一気にふたりを包んだ。
「焼肉なんて意外と久しぶりかもな〜」
「あれ以来?打ち上げのやつ」
「え!ガチでそれ以来かも?!」
仁人は笑いながら奥の席に腰を下ろした。
テーブルの上にはタン、カルビ、ハラミ、野菜盛り。
頼んだ瞬間から舜太の顔がちょっと明るくなる。
「ほら、好きなの焼いて」
「え、いいん?じゃあハラミ〜!」
「ハラミって、最初からガッツリいくなぁ」
「仁ちゃん奢りやし!たまには贅沢しちゃうで〜!」
「調子乗んなよ」
トングを渡して、舜太が網に肉を並べる。
じゅうぅ…と音が鳴って、舜太の目が少しキラキラしてる。
しばらく黙って焼いて、食べて、ちょっと落ち着いた頃。
舜太がポツリと口を開いた。
「…なんかさ、最近、疲れてんねんな」
「うん」
「仕事多いのはありがたいけど、なんか全部うまくいってない気がして。撮影でも変なテンションになっちゃったりさ、俺が足引っ張ってんちゃうかなーとか思ったりして」
仁人は箸を置いた。
「うまくいかない時なんて、そりゃ全員あるぜ?」
「そうかなぁ」
「あるって。俺もあるし。」
「うそやー、あの仁ちゃんが?」
「あのじんちゃんって何なんだよ、まあ演技歌に関しては最初全然ダメで、毎回メンバーに置いてかれてる気して、焦って、勝手に疲れて」
「…え〜、意外!」
「なんか意外も失礼だなw、でも、ちゃんと話すとみんな同じこと思ってんだよな」
仁人は、舜太の焼いた肉をトングで取って、そっと皿に置いた。
「おまえも、我慢しすぎなんだよ」
「そ、そんなことないって」
「ある。今日の撮影のときも、テンション無理やり上げてんのバレバレだって!」
「素直に“しんどい”って言っていいんだよ。俺ら仲間なんだから」
そう言って笑う仁人の声は柔らかくて、煙の向こうの光みたいに温かかった。
「……仁ちゃん、優しすぎて泣けるんやけど〜!!」
「うるさ!早くくえ、冷めちゃうから!ほらはやく!」