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星崎視点
藤澤さんの腕の中は、
まるでゆりかごのような、
心地よさと安心感があった。
ずっとここにいられたらいいのに。
なんて困らせるだけだな。
わがまますぎる。
本当に深く、
久しぶりに僕は深く眠っていた。
彼の顔を見たから安心したのかもしれない。
意識の沼に沈んでいた僕だが、
眠りが浅くなるのを感じた。
まだ目覚めたくないと抵抗しようとする。
「⋯っん⋯⋯」
「ーーーー?」
誰かの声がした。
でも起きられる気力はない。
あれ?
まだ藤澤さんの匂いがする?
まさか。
微睡んでいて意識がはっきりしないだけだ。
気のせいだろう。
『断ればどうなるかわかってるよな?
音楽を出来なくしてやるぞ』
あ、
まただ。
記憶がフラッシュバックしてくる。
嫌だ、
思い出したくない。
(藤澤さん助けて)
「ぅっ⋯⋯んんっ!」
苦しいよ。
喉の奥がつっかえて息がしにくい。
やめて。
記憶の中から出てこないで。
お願い!
呼吸が乱れて意識がさらに浮上してきた。
「え?」
パチリ
は?
ここどこ?
僕はぐっしょりと寝汗をかいていた。
周りを見渡しても完全にそこは知らない場所だった。
わかったのはここが空き部屋として開放している控え室や、
休憩所ではないと言うことだ。
おかしい。
僕はさっきまで現場にいたはずだ。
部屋の窓には紺ベースで星柄の可愛らしいカーテン、
広々としてセミダブルのベッド、
右のベッド脇に猫足のナイトテーブル、
どうしてこんな誰かの生活感満載の部屋に移動しているのか全くわからない。
「あ⋯良かった。
気づいたみたいだね?」
「だ、
誰!?」
怖い。
全然知らない人だ。
やっぱり藤澤さんの匂いがしたのは気のせいだ。
何でこんなよくわからない人と一緒にいるのだろうか。
思い出そうとしてもわからない。
「初めまして、
Mrs.Green Appleのマネージャーをしている橘(たちばな)です」
ミセス⋯⋯何?
誰のこと?
まさか知らない人に拉致られた?
いや流石にそれは飛躍しすぎか。
まずはここがどこか把握しないといけない。
「橘⋯さんですね?
ここはどこですか?」
よく分からない相手への恐怖心で、
僕は声が震えていた。
事情を聞くとどうやら睡魔に抗えずに現場で倒れたらしいこと、
僕が抜けたその後はスタッフが撤収作業を代わりにしてくれたこと、
藤澤さんは次の仕事があるため今は別の現場にいること、
そして僕の家を知らないため藤澤さんのマンションに連れてきたこと、
など一連のことに関して橘さんから丁寧に説明を受けた。
ん?
あれ⋯つまりここは藤澤さんの自宅ってこと?
じゃあこのベッドも普段は藤澤さんが使っているもの?
どうりで彼の匂いがするわけだ。
そう納得しかけて、
いやダメだろ!
先輩になんて迷惑をかけているのか、
急に恥ずかしさや情けなさが一気に押し寄せてきた。
「か、
帰ります!」
こんなのバツが悪いどころか格好悪すぎるだろ!
無様すぎる醜態を晒したことに居た堪れなくなり、
慌てて左脇のベッドから降りようとする。
がーーー
グラッ
「うっ!」
急に動いたためか体が反応できず、
ズキズキと軋むように頭が痛み、
思わず僕は頭をおさえたまま呻く。
その様子を見て橘さんが駆け寄ってきた。
僕の腕にそっと触れて、
ヨロヨロと傾いてしまった体を支えてくれる。
お礼を言おうとした時、
彼の声が耳に届いた。
「これ⋯どういう状況?」
完全に冷め切ったような声で、
静かに問い詰める藤澤さんが少し怖かった。
雫騎の雑談コーナー
はい!
ということでね。
ただ体調不良な星崎の体を支えていただけなんですね。
若干の浮気現場チックな要素を匂わせていましたが、
全然関係ありません。
では本編行きますか。
睡眠不足から倒れた星崎は藤澤さんによって、
保護されることになりました。
しかし藤澤さんのマンションで星崎がフラッシュバックを引き起こすも、
どうにか堪えて目覚めると当然知らない場所のため、
パニック状態になるんです。
迷惑をかけたことに後ろめたさや罪悪感がある星崎は、
すぐに出ていこうとするものの体が、
思いように動かないほどに疲労が蓄積していた。
タイミング悪くその時に藤澤さんが帰宅してきたというわけです。
次回はマネージャーを詰めます。
普段優しい人が嫉妬に狂うとどうなるんでしょうね?
ちなみに誤解が解けると、
センシティブになりますよ。
次回もお楽しみに〜