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二度と消えない夏、もうどこにもいない俺。
戦後80年 2025.8.15.
【⚠️】
・あらすじ必読
・アメ日帝→微アメ日(🇺🇸🇯🇵)
やっぱりあの頃はどこの国も戦争に何もかもが狂わされ、おかしくなったんだと思う。
8月15日、お盆の最中俺は街中を見下ろして、歩き回っていた。
もうあれから80年だ、思想も変われば生活だって変わる。
お盆で故郷に帰省する人、旅行客や観光客で賑わう街、そして部活動に励む学生。
時代は一世紀も経たないうちにこんなに変わっている。
少なくとも俺の時代では戦争末期、学生までもが戦場に駆り出される。
俺の時代では当たり前だったことが今では綺麗にさっぱりなくなってしまっていた。
そんなことを頭で考えながら、下界を眺めていると見慣れた姿が。
見た感じ社員旅行だろうか?
『アメリカさ〜ん!待ってくださいよー!』
「なぁJapan!腹減ったぜ〜」
『でもまだお昼まで時間が…』
「さすが肥満大国アルね、さっき間食を食べたというのに。」
「アンタに言われる筋合いはないぜ、Chinaはどっかに行っちゃいな!w」
「……覚えとけアル。」
「ちょっとちょっと、こんなところで戦争しないでくださいよ?」
「……ブリカスは黙って欲しいアル。」
「それはjeも同意見。」
「何であなた達は私への当たりが強いんですか〜泣」
「日本も大変だな。」
『そ〜ですよね、ドイツさん。』
「おまけにあのイタリアも……」
「ちょっと…!なんでioも問題児みたいな扱いを………」
俺の……『息子』なんだよな…。
***
1 9 4 5 年 8 月 1 5 日
あの夏は二度と忘れられないだろう、我が祖国が──────
祖國が……
敗 戦 を 受 け 入 れ た 日 。
「“正午に大切なお知らせ”……一体なんのことだろうか…。」
正直俺は戦争なんかしたくなかった。
あの米帝に物量的に勝てるわけがない。
戦争を始めて4年、太平洋戦争が長期化してしまえば日本に勝ち目は、もはやない。
だから元から無謀な戦争だった。でも、祖国のためなら自分の手を
血に染めてでも………それが俺の時代では当たり前だった。
“戦争なんかしたくない、だから戦場から逃げる”
そんなことを一文字でも喋ろうとすれば、非国民だと言われ、
軍の将校や、指揮官から平手打ちされる。
本当に国のために命を燃やそうとしてた人だっているかもしれない。
ある意味尊敬はできるかもしれない、だが、全員が全員
国のために命を燃やしてしまえば、国は守れたとしても家族との約束は、
守 れ な い か も し れ な い 。
だから勝てないと分かっても、戦いに行くしかなかった。
それが答えだと言えるだろうか。
ついに時間は正午、俺のように軍人が一部紛れるなか、
大勢の一般市民、疎開先では子供がラジオの前に集まっていた。
“正午に大切なお知らせ”…祖国様、天皇陛下からのお告げ。
そして、ラジオは雑音が入りながらも、衝撃的な内容が発せられた。
朕深く世界の大勢と 帝国の現状とに鑑み 非常の措置をもって
時局を収拾せんと欲し ここに忠良なる汝臣民に告ぐ
朕は帝国政府をして 米英支蘇四国に対し その共同宣言を受諾する旨通告せしめたり
これは、現代文に訳すと、このような意味になる。
私は、深く世界の情勢と日本の現状について考え、非常の措置によって
今の局面を収拾しようと思い、ここに忠義で善良なあなた方国民に伝える。
私は、帝国政府に、アメリカ・イギリス・中国・ソ連の4国に対して、
それらの共同宣言(ポツダム宣言)を受諾することを通告させた。
つまり、日本は………“戦争に負けた”。
「そ、そんな…………」
もちろん、帝国陸軍の軍人として、戦線で戦っていたこともあり
戦争の先にある結末に衝撃を受けた。で も同時に
心の底で解放されたような、地獄のような戦火から逃れられる。
そんな気持ちに一瞬……なれた気がした。
そして、しばらくの年月が経っただろうか、極東国際軍事裁判が
開かれ、侵略戦争に関わった人物が 戦犯として処刑。
実は─────
俺もその1人になった。
執行当日、特にいつも通りに過ごした。
“今日で死ぬ。”戦時中、ずっと思っていたことだ。
目の前で戦友や誰かが常に死んで、血で血を洗うような、まるで地獄みたいな。
偶然、国民に敗戦を知らせた8月15日は招集されることはなかったのだ。
厳しい戦火の渦に巻き込まれることはあっても、俺は運が良かったのか
悪かったのか、死ぬことはなかった。
その悪い行いが、今日で報いとして帰ってくる日。
コンコン
ドアのノック音が聞こえると、入ってきたのは米帝……
いや、米国だった。
そいつは、13本の縞々と、星が48個 の星条旗だった。
「おう日帝chan、もうそろそろだけど準備はOK?」
相変わらず、変な呼び名で俺を呼んでいて慣れない。
「……もう、大丈夫だ。」
そうして部屋を後にする。
もうこの世界には心残りがないのかもしれない。
でも、唯一気になるとすれば、息子の『日本』のことだ。
息子もいわば俺と同じく国の化身で、戦争犯罪で処刑になる
俺とは違い、“平和”を重んじる国家として生まれ変わった。
まだ国としては十分に幼くて、周りとの国と上手くいくか…
親としてはそれだけが心配だ。
息子への未練を脳内でおもむろに語っているとあっという間に
執行の場についた。
俺は一言も話さず、ただ執行人による準備を静かに受け入れ、
首には縄、足場は3つのボタンのうちどれか1つを押すことで板が外れる
不安定な足場、そして黒い布で覆われた暗闇の視界。
そして、耳は米国の声を拾う。
「最期に言い残したいことはあるか?なんでもいい。」
最期に言い残したいこと…なんでもいい………
「“もしこの先未来、何があっても平和の至誠を貫くこと”を誓え。と
*親から伝言があったと息子に伝えてくれ。それだけだ。*」
「分かった。」
その言葉を確認した瞬間、もう耳は静かに聞こえなくなっていた。
そして、宙にぶら下がる感覚と2、3秒だけの苦しさ
それ以降はもう何も感じることがなく、
意 識 が 暗 転 し た 。
***
ああ、今息子の隣にいるのは、星が48個の星条旗ではなく、
星が50個の星条旗だった。
それを見ただけでも目頭が熱く、温かい水が流れた。
体が徐々に消え始め、その粒子は空高く舞い上がり、
いつしかは俺を囲むように舞い始めた。
やっと俺は還れる気がした。
END
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