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ごきげんよう、はじめまして。じゃんぬです。
駄作ですが、楽しんでいただけたら幸いです。
攻め🇫🇷:フランス王国
受け🏴:イングランド王国
アングルテール:フランス語でイギリスを指します。本作ではフランスはイングランドを「アングルテール」と呼びます。
流血表現がございます。また、2話から性的描写になります。ごめんあそばせ。
🏴「ふっふふーん♪」
とあるフランスの一角の、立派な屋敷の最上階。イングランドはアフタヌーンティーを楽しんでいた。 こぽぽ、カップに注がれた紅茶が湯気をたてる。
イングランドは、その琥珀の水面を揺らして微笑んだ。 カップには、勝利を確信したイングランドの顔が、反射して浮かんでいる。
時は百年戦争。
イングランドはパリをも手中に収め、疲弊したフランス王国は各地で敗退を重ねていた。彼が現在過ごしているこの屋敷も、元はフランスの宮殿だったのだ。
イングランドが虎視眈々と狙っていたフランスのオルレアン領はもうすぐ陥落する。ここを攻め落とすことができれば、フランス全土はイングランドの手に渡る手はずとなっていた。
🏴「部下が勝利の知らせを運んでくるのも、そう長くはないでしょうね!あの生意気なフランスパン野郎を組み敷いて、屈辱に歪む顔を…ってお楽しみは後にとっておきましょうか」
カチャ、とソーサーにカップを戻す。
その時、ドタドタと荒い足音が響いた。
パチパチと瞬きをしたイングランドは、まったく品のない、とため息をつく。
🏴「まあ仕方ないことですね、待ちに待った勝利の知らせを、この私に早く伝えたいのでしょうから」
「大変です閣下!我軍がフランス軍に敗北しました!」
🏴「………はっ?」
イングランドは、珍しくがたりと音を立てて立ち上がった。震える声で、詳しく説明せよ、と声を放つ。
駆け込んできた士官は、はっ!と返事を返して、胸元から書簡を取り出した。
「守りを固めていたはずの敵国が、突如反撃を繰り出し、オルレアン攻略の要である我々の砦は陥落っ!攻守は逆転、我が軍は撃破されました!」
🏴「陥、落…?」
──それからというもの、イングランドは坂を転げ落ちるように敗戦を重ねていった。
イングランドはだんだんと後退を続け、やがてアキテーヌ地方の中心地、ボルドーにて抵抗することとなる。
イングランドはボルドーの防衛拠点となった塔の一室でため息をついた。 机の上に広げた地図を指でなぞりながら、イングランドは呟く。
🏴「シェルブールも占領されましたか……残るイングランド領のフランス国土は、ここ、アキテーヌだけですね…ここだけは守り抜かないと」
「閣下…!」
側近が青ざめた顔でイングランドのもとへやってきた。イングランドの不吉な予感通り、彼は凶報を告げる。
「最重要防衛拠点ブランクフォールが、陥落しました…ッッッ!」
🏴「……っ!」
わなわなと震えたイングランドは、ドンと机を叩くと、声を絞り出すように叫んだ。
🏴「なぜだっ!何故!あと少し、あと少しだったのに…!!」
「残念だったねぇ、アングルテール」
🏴「───フランス…ッッッ!」
イングランドが声の方へ振り向くと、扉に寄りかかるフランスの姿が見えた。
煤と返り血で汚れてはいるものの、怪我はないようで、不敵な笑みを浮かべている。
「貴様!そこから動くな!動いたら殺す!」
🇫🇷「はいはい、ちょっと静かにしててねー」
フランスはそのまま部屋にずかずかと入り込み、斬りかかる士官を軽くいなして、ひょいと投げ飛ばす。
「ガ…ッ!うっ…かっ、か…お逃げ、くださ、…閣、下…」
🇫🇷「うるさいよ」
冷たく言い放ったフランスは、壁に頭をぶつけて呻く士官に、ためらう事なく剣を突き立てた。 噴水のように飛び出す赤黒い血に、イングランドは思わず目をそらす。
フランスは、士官の身体から剣を引き抜くと、溜まった血をぱっと振り払った。赤い花弁の模様が散る。
🇫🇷「…アングルテール」
🏴「っ…!な、なんでしょう…?」
なにか、なにか武器になるものを…!
相棒のロングソードを探すが、よりにもよってそれは、フランスの背後に立てかけてあった。生憎手が届きそうもない。
(でも大丈夫です…この私にはステッキがありますからね…)
ステッキを握りしめてフランスを見つめ返す。フランスは一歩、また一歩と近づいてきた。
イングランドは冷や汗を浮かべながら、じりじりと後退し窓辺に寄る。
(いざとなれば窓を割って飛び降りましょう…まったくもって紳士的行為とは言えませんが)
どれもこれも、このエスカルゴのせいだ。イングランドがそんなことを考えていることを知ってか知らずか、にこっと不気味な笑みを浮かべたフランスは、やはりじりじりとイングランドににじり寄る。
🇫🇷「アングルテール、今日を以て、僕は既に君に占領されていた地を全て取り返した」
🏴「はっ!まあ、貴方にしてはよくやった方でしょうね、褒めて差し上げましょう」
平静を装ったイングランドは、フランスのじっとりとした笑みを鼻で笑い飛ばした。イングランドのそのモノクル越しの瞳には、明らかな焦りの色が浮かんでいる。
そんな精一杯のイングランドの虚勢に対し、フランスは感情の読めない笑みを浮かべる。
🇫🇷「…君っていつもそうだよね」
🏴「なんです?今日のところは、勝ちを譲って差し上げるというのに…さて、私は本土に戻るとしましょうか」
イングランドは、話はこれで終わりだと切り上げようとする。
しかし、そんなイングランドの言葉に、フランスは、はははッ!と不気味なほど明るい嗤い声を上げた。
🇫🇷「あはははっ!クククッ…!君って本当に面白いよね!…*もう戻れないのに*」
🏴「なぜ笑う?いいからそこを退きなさい。私の言葉に従えないというのなら…わかりますね?」
🇫🇷「さあ?分からないなぁ〜教えてくれるかい、アングルテール?」
その言葉を皮切りに、両者は互いに身構える。フランスは先ほど士官を切り捨てたロングソードを構えた。そしてイングランドはというと、ステッキに隠し持っていた細身の剣を引き抜いた。
そう、彼が手にしていたのは杖剣──いざというときのための護身用暗器である。
🇫🇷「やっぱりそれ、杖剣だったか。やれやれ、アングルテールは野蛮だねぇ」
🏴「貴方のような輩が失せれば、私だってこんなもの持ちませんよ」
嫌味ったらしく言ってのけるフランスに、イングランドは吐き捨てるように言った。
にらみ合う両者。バチバチと火花を散らす。そして、
イングランドはフランスとの間合いを詰めた。フランスはその一撃を危なげなくいなして、まるで踊るように長剣を振りかざす。鋭い金属音が辺り一面に鳴り響いた。
───カンカンカンッ!キーン…!
一進一退の攻防が、いったいどれほど続いたであろうか。
イングランドは頬に汗が伝うのを感じた。一方、目の前の男の、憎らしいほど美しいかんばせには、汗一つ浮いていない。
(こいつ…こんなに強かったでしょうか…ッ?)
おかしい。何かがおかしい。
そうイングランドが気づいたころには、彼はじりじりと追い詰められていた。 迫りくる刃を防ぎきるので精一杯。
目の前の敵は、ほんの数年前、イングランドがフランス本土を蹂躙していたころとは、比べ物にならないほど強くなっている。しかも、相手はロングソード、此方は細身剣である。
🏴「──ッ、くそ…ッ!」
イングランドが思わず言葉を崩したとき。わずかな隙を狙って、フランスが大きく踏み込んだ。
嫌な音を立ててイングランドの剣が折れた。イングランドはそのまま、体勢を崩して後ろによろめく。
が、次の瞬間、フランスはイングランドの腕を掴み上げた。しばらく見つめ合う二人。
観念したイングランドは、すっと目を伏せた。色素の薄い長い睫毛が、顔に影を落とす。
🏴「今回ばかりは私の負けです。……離しなさい」
🇫🇷「ふふふ…生かしてやっているのにその態度か?やはり君は面白い。それでこそアングルテールだ♡」
🏴「いいから離せと言っている…!」
フランスはぐいとイングランドを引き寄せる。必然的に立ちあがったイングランドは、声を荒げた。しかし、フランスは、相手の威圧的な態度を意にもせず、余裕の笑みを浮かべていた。
フランスはずいっとイングランドに顔を寄せた。そして、イングランドが一番ぐらつくであろう爆弾を投下する。
🇫🇷「それに、離したところでどうするつもり?君はすでに、僕のものなのに」
その言葉に、イングランドは文字通り固まった。
🏴「は…?もの…?今、なんて…」
🇫🇷「君の軍は戦争に負けて、君自身も僕に負けたんだ。君は今や捕虜。僕のおもちゃさ。当たり前だろ?」
🏴「い、いやいや!通例では、私のような高位の者は、捕虜になったからと言って貴方のものになるわけではないですよ?!」
中世の戦後処理では、戦争捕虜となったとしても、自国が相手国に賠償金を支払うことで、本土に引き渡されることとなっていた。
🇫🇷「賠償金?要らないよ、僕が欲しいのは君だけさ」
イングランドは目を見開いて、フランスを見上げる。
🇫🇷「君の身柄を賠償代わりにすればいいじゃん!君の国も金銭的負担が減るし、僕って優しいでしょ」
🏴「いや、え…?」
イングランドには理解できない理論を、目の前の男は並べ立てて微笑んだ。
そして、フランスは歪んだ笑顔で、こう言い放つ。
🇫🇷「つ、ま、り、君は今から僕のものだから、僕は君に何してもいいってこと♡」
🏴「は…?」