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そんな感じでペトラは魔力を吸収し続け、レイブは順調に邪竜から肥大した鱗を削り取り続ける事、数十秒、岩の塊、無機物にしか見えなかった竜は、ズメイ種の特徴をはっきりとさせた姿を露にさせたのである。
「ほう」
レイブが驚きを込めた声を洩らしたのも理解できる。
このズメイ種は、竜種全体自体に置いて大変珍しい白色、レイブの弟子筆頭のラマス配下のスリーマンセル、カタボラと同様の希少な白い鱗に包まれていたのである。
ニーズヘッグであるギレスラの真紅の鱗もそうだが、希少な色合いの鱗というのは実際の実力は兎も角、それだけで同じ竜種からは憧憬の眼で見られる事が当然とされている時代である。
只でさえ少ない純白のズメイに、更に希少な真紅のニーズヘッグが馬乗りになっている姿は中々レアで、それだけにどこかアンチタブーななまめかしさ、官能的にすら感じられてしまうのだった。
健康な青年レイブは再び洩らす。
「ほおうぅー、なるほどぉー、ふむふむふむぅ」
うん、判らないが、なんとなく判らないで良い物が判る…… 気がする……
顎に拳を置いたままでなにやらフムフムっているレイブの横に歩み寄ったペトラが声を掛ける。
『レイブお兄ちゃん、何をフムフム唸っているの?』
「いや、なんかこの絵面がなぁー、なんとなく? こぉーうぅー、変な感じ? がなぁー、ってお、お前っ!」
『ん?』
レイブは横目をペトラに向けた瞬間、大きな声で返した。
「ばっ、ペトラ! お前ブクブクに膨らんでいるじゃないかぁっ! 馬っ鹿! 何、無理しているんだよっ! 死んだらどうするんだっ! お前を失う位ならこんな竜なんかどうでも良いんだからなっ! 全くぅ無茶しやがってっ! さぞ辛かっただろうに、ほれ、今すぐ血を抜いてやるからな、ほらほら早く顎を出せってぇ! 早く早くぅ!」
『う、うん! えっとぉ、お願いするね、えへへ』
答えると同時に顎を上げるペトラの下顎に慣れた様子でゼムガレのナイフを刺し込むレイブ。
心なしかズメイの鱗を剥いでいた時より丁寧に赤い糊、タンバーキラーを塗布している様に見える。
レイブ同様、『役立たず』で紫の魔力を帯びたペトラの血液は血清の材料には使えない為だろう、流れ出るままに任せている。
暫くして丸々と膨らんでいたペトラの体が僅かに萎み始めた所でレイブが言う。
「良し、後はグルグルで大丈夫だろ? 早く回復しろよペトラ」
『『回復』、ありがとレイブお兄ちゃん』
「次はギレスラだな、こっちに来いよギレスラ! 最近尻尾の先が分厚くなるってぼやいていたろ? 鱗削りしてやるからさっ!」
『ああ…… 後で頼むレイブ…… それよりな、えっと、このズメイ…… 死にそうなんだが……』
「『えっ!』」
言われて改めて視線を移すと、件の白いズメイ種はレイブの処置によって鱗も通常のサイズに削り揃えられ、ペトラが吸収したお蔭だろう、体内外の魔力も安定している様に見える。
だと言うのに口からは泡を吹き続け、地面に体を横たえたまま、巨体のあちらこちらをピクピクと痙攣させていたのである。
竜の生態に詳しくない者でも一目で瀕死だと理解できる有様だ。
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