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特別な夜の、そのあと
夜は、もうずいぶん深くなっていた。
息遣いとシーツの掠れる音。
漏れる声が響く部屋。
はっ…
んっっあっ………あ…んっ…
ナオコ
「………コハル、気持ちいい?」
コハルはナオコの手をギュッと掴みながら、声に出さずに頷く。
さっきまで焦らしていたせいか、コハルの感度が高い。
ナオコは、コハルの様子を見ながら、唇を胸へよせる。
ちょうど、さっきまで触れていなかった中心を口に含んで舌先で転がしたら、コハルの腕がナオコの頭を強く抱きしめる。
コハル
「んっっ…
もっとっっ………」
返事の代わりにナオコは優しく中心部舐める。刺激に耐えているコハルを上目遣いで見ながら、もう片方の中心部も口に含むと、コハルが身を捩って熱を逃がそうとする。
ナオコは逃がさまいとコハルを抱きしめながら、刺激を与え続ける。片方は口の中に含んだり、焦らすようにゆっくり舌先で触れたり。もう片方は指先で優しく触り続けたり。
コハルの足がナオコの足に絡む。きっと限界が近い。
ナオコはそっと、手を下に滑らせると、十分な湿り気を感じて、指先でコハルの秘部にひと撫で触れる
コハル
「っっ…。」
ナオコはコハルの様子を伺いながら、指先で優しく何往復かヌチュ ヌチュと触れる。
ナオコ
「入れていい?」
コハルはただ頷くだけ。早く早くと目が訴える。
ナオコは、コハルが早くして欲しいのを分かっていながら、ゆっくり指を中に沈める。
もうそれだけで、一度コハルは体が弛緩してから脱力する。
ナオコは動かさず、一度そのまま波が過ぎるのを待ってから、またゆっくりと指先を中で押し付けるように動かす。
コハル
「それっ……気持ちい…い……」
ナオコが動きを止めると、コハルは何で?と目で訴える。
さっきまで胸に寄せていた唇を次第にお腹、脇腹、足、太腿と触れていけば最後に指が動いてない秘部へと唇を寄せる。
指先を動かさず、舌先で周りを優しく舐め上げれば、コハルがナオコの頭を強く押し付ける。無意識にゆるゆると腰が動いて、自分から気持ちいい所に押し付けるようにナオコの頭を足で挟む。
ナオコが指先をゆっくり動かし始め、膨らんでいるクリを舌で舐めあげる。
ナオコ
「舐められるん、好きやったもんな。
今日もずっとしてあげる。」
コハル
「…そこで…喋らないでっっ……………。」
中と外で同時に刺激を与えられれば、コハルはすぐに達した。
ナオコは宣言通り、一度波が過ぎたのを確認してから、またゆるゆるとゆっくり指先と舌で刺激を与え続ける。
何度目かの絶頂を迎えていたコハルが声を出す。
コハル
「はっ、はぁ………はぁ……
待って、一回水飲みたい。」
ナオコは、ハッとしてベッドサイドに置いていた水を開けてから渡す。
コハルは、ゆっくり一口二口飲んでから、息を整える。三口目を飲んでからナオコに水を渡す。ナオコも何口か水を飲んだ後、コハルの様子を確認する。
ナオコ
「まだしたいんやけど…?大丈夫?」
コハル
「………ちょっと休憩…」
ナオコ
「…うん。
……おっぱい触っててええ?」
そう言って、コハルをベッドに優しく寝かせてから、今度は焦らさずに中心部をクニクニと指先で刺激を与える
コハル
「もう…休憩って言ったのに…。
んんっ……」
ナオコ
「触るだけやから…」
時折、ナオコが舌先で中心部を舐めると、コハルから″もっとっっ…″と声が聞こえて、次第にさっきまでの熱がまた2人の間で再燃する。
ナオコはまた丁寧にコハルの秘部を舐めあげてから2本、指を沈めていく。ぎゅうぎゅうに指を締め付けてくるのを嬉しく思いながら、何度も何度も舌と指先で刺激を与え続ける。
ようやく、コハルが″もう無理…″と声に出し始めた頃、ナオコは最後と言いながらコハルの秘部と自身の秘部を気持ちいいところを探りながら、激しく擦り付ける。
コハルが先に弛緩したあと、ナオコも絶頂を迎えながら、余韻でゆるく腰を動かし続ける。
ナオコ
「…これ、気持ちよすぎてヤバい…」
ゆるゆると腰を動かし続けていたナオコは、コハルが眠そうなのを見て、慌ててコハルの体を優しく拭いていく。
コハル
「…ありがと」
ナオコ
「うん。
ちょっと気持ちよすぎて止まらへんかった。ごめん。」
コハルは、ふふっと笑いながら、ナオコを抱き寄せる。
しばらくして呼吸が落ち着いた頃。
少し前まで二人だけの時間に満たされていた寝室は、今ではすっかり静かになっている。
乱れた掛け布団をゆっくり直しながら、ナオコとコハルはようやく身体の力を抜き、並んでベッドへ横になった。熱の残る肌に夜の空気が触れるたび、さっきまでの近さがまだ身体の奥に残っているようで、二人ともすぐには眠れなかった。
ナオコは、二か月以上待った夜を誰より楽しみにしていたことが隠しきれないほど、満ち足りた表情を浮かべている。
頬にはまだ淡い赤みが残り、呼吸も完全には整っていない。
一方のコハルは、枕へ頬を預けたまま、少しだけ疲れた顔をしていたが、その目元には同じように柔らかな余韻が滲んでいた。
コハル
「……満足?」
ナオコ
「はい。
大変満足しております」
コハル
「何で敬語なの。笑」
ナオコ
「最大級の満足を表現しようと思って」
コハル
「顔見たら分かるよ。
めちゃくちゃ幸せそうだもん」
ナオコ
「幸せやもん」
即答。
しかも満面の笑み。
コハルは呆れたように笑ってから、枕へもう少し深く頬を沈めた。
髪は少し乱れ、首元にはまだ熱が残っている。ナオコはそんなコハルの様子を見つめながら、手を伸ばしかけて、いったん止めた。
触れたい。
けれど。
今は少し休ませた方がいい。
そう考えたはずなのに、視線だけはどうしてもコハルから離れなかった。
コハル
「……でしょうね。
途中でちょっと休憩しようって言ったのに、ナオコめちゃくちゃ名残惜しそうな顔してたし。笑」
ナオコ
「それは……ごめん。笑」
コハル
「謝りながら笑ってる」
ナオコ
「だって……コハルも途中から、もっと、って言うてくれたやん」
コハル
「…………今、それ言わないで」
ナオコ
「何で?」
コハル
「恥ずかしいから!」
ナオコ
「……可愛い」
コハル
「それも今言わないで!!」
コハルは掛け布団を少し上げ、顔を半分だけ隠した。耳まで赤い。その反応を見たナオコは、ますます嬉しそうな顔になる。
けれど、からかうだけではなく、ナオコの目には深い愛しさも浮かんでいた。
コハルが恥ずかしそうに身を縮めるたび、さっきまで自分の腕の中にいたことが現実味を持って戻ってくる。
そのたびに、胸の奥が静かに満たされていく。
コハル
「……何その顔」
ナオコ
「幸せ噛み締めてる」
コハル
「噛み締めなくていいから。笑」
ナオコ
「二か月以上待ったんやで?
ちょっとくらい噛み締めさせてよ」
コハル
「はいはい。笑」
ナオコの表情は、さっきまでの浮かれきった笑顔とは少し違っていた。穏やかで、静かで、安心している。
コハルはその顔を見ながら、自分も同じなのだと思った。
特別な夜だったことは確かだけれど、何より嬉しかったのは、二か月前の約束を二人とも覚えていて、同じ日に辿り着けたことだった。
急かされることもなく、無理に合わせることもなく、互いの気持ちを確かめながらここまで来られた。
その安心感が、熱の残る身体よりも深く、コハルの胸に残っていた。
コハルは布団の中から手を伸ばし、ナオコの頬へ指先を触れた。まだ少し熱い肌を、確かめるようにゆっくり撫でる。
ナオコは一瞬目を細め、その手のひらへ頬を寄せるように顔を傾けた。
その仕草があまりにも素直で、コハルの胸がまた少しだけ熱くなる。
しばらく何も言わない時間が続く。
けれど気まずくはない。
ナオコが布団の中でコハルの手を探し、指先が触れる。
やがて自然に指が重なった。
ナオコの手のひらは温かく、少しだけ力が残っている。コハルが指を絡め返すと、ナオコは安心したように息を吐いた。
ナオコ
「……これ好き」
コハル
「手繋ぐだけなのに?」
ナオコ
「だけちゃうよ。
今、コハルがここおるって分かる」
コハル
「見れば分かるじゃん。笑」
ナオコ
「目閉じても分かるやん。
寝る直前とか、朝起きる直前とか。
まだちゃんと目覚めてない時でも、手繋いでたらコハルおるって分かる」
コハル
「……それはちょっと分かる」
ナオコ
「やろ?」
コハル
「うん」
繋いだ手だけが温かい。
ナオコは親指で一度だけ、コハルの手の甲をゆっくり撫でた。
その癖は、車の赤信号でも、ソファでも、寝室でも変わらない。
ただそこにいると確かめるような、小さな触れ合いだった。
コハルはその動きを感じながら、目を細める。
さっきまで近くにあったナオコの体温も、耳元で聞こえた声も、今は少しずつ静かな記憶へ変わり始めている。
それでも、繋いだ手の温度だけは、まだ現在のものとして確かに残っていた。
コハル
「……それ、ほんと好きだよね」
ナオコ
「何が?」
コハル
「親指で撫でるやつ」
ナオコ
「……無意識」
コハル
「知ってる。
だから面白いの」
ナオコ
「嫌?」
コハル
「嫌なら三年もそのままにしてないよ。笑」
ナオコ
「……そっか」
安心したように、また親指が動く。
コハル
「今安心したからもう一回やったでしょ」
ナオコ
「……バレた?」
コハル
「分かりやすすぎる。笑」
ナオコは小さく笑い、繋いだ手をそのまま枕の間へ置いた。
身体全部で抱き合わなくても、何か特別な言葉を言わなくても、手だけで十分近い。
それが今の二人にはちょうどよかった。
やがてナオコは、繋いでいない方の手でコハルの髪をそっと整えた。
乱れた毛先を指で梳き、頬にかかった一房を耳へかける。コハルはその手つきに目を閉じ、ほんの少しだけナオコの方へ身体を寄せた。
ナオコはその小さな反応を感じ取ると、髪から手を離さず、今度は頭のてっぺんをゆっくり撫でた。
何度もするわけではない。ただ一度、二度と、眠りへ向かうためのように穏やかに触れる。
コハル
「……寝かしつけようとしてる?」
ナオコ
「うん」
コハル
「子どもじゃないんだけど」
ナオコ
「知ってる。
でも眠そうやから」
コハル
「ナオコのせいでしょ」
ナオコ
「……それも、そうやな。笑」
しばらくして、コハルの瞼が少しずつ重くなる。
けれど、寝る前にふと思い出したように口を開いた。
コハル
「……ねぇ。
明日何する?」
ナオコ
「明日?」
コハル
「せっかく休み重なってるし。
三日後からグランピング企画でしょ?
その前の最後の二人休み」
ナオコ
「……何もせんでよくない?」
コハル
「また?笑」
ナオコ
「ええやん。
明日起きて、朝ご飯食べて。
家でだらだらして、必要なものだけ買いに行って。
帰って昼寝」
コハル
「昼寝好きすぎない?」
ナオコ
「コハルとする昼寝が好き。
一人で寝るより、コハルおる方がええ」
コハル
「寝てる間、分かんないじゃん」
ナオコ
「起きた時おるやん」
コハル
「……なんか今日、全部その理論じゃない?」
ナオコ
「何が?」
コハル
「手繋ぐのも、目閉じてもいるって分かる。
昼寝も、起きたらいる。
ナオコ今日、私がいること確認しすぎ。笑」
ナオコ
「……二か月分?」
コハル
「何の二か月分なの!笑」
二人の笑い声が、静かな寝室へ小さく広がる。
笑った拍子に、コハルの肩がナオコの肩へ触れた。ナオコはそのまま肩を寄せ、コハルの額へ軽く唇を落とす。
触れるだけの短いキスだったが、コハルは目を閉じたまま、ナオコの胸元へ少しだけ近づいた。
ナオコ
「……まだ眠くない?」
コハル
「眠いよ」
ナオコ
「じゃあ寝よ」
コハル
「ナオコが話しかけるから」
ナオコ
「ごめん」
コハル
「でも、もう少し話しててもいい」
ナオコ
「どっち?笑」
ナオコは笑いながら、コハルの背中へ手を繋いでない方の腕を回した。
強く抱き込むのではなく、逃げ道を残したまま、そこにいることを伝えるような抱き方だった。
コハルも自然にナオコの胸元へ頭を寄せる。
その小さな触れ合いだけで、二人の間に残っていた熱が、今度は穏やかな安心へ変わっていく。
ナオコ
「あと、企画の荷造りする?」
コハル
「それはしないと。
三日後なのに、ナオコまだ全然やってないでしょ?」
ナオコ
「……うん」
コハル
「知ってた」
ナオコ
「コハルは?」
コハル
「半分くらい」
ナオコ
「早っ」
コハル
「普通!」
ナオコ
「さすがせっかち」
コハル
「誰がせっかち!」
ナオコ
「コハル」
コハル
「分かってるけど!笑」
ナオコ
「でも三日前で半分できてるの、十分早いやろ」
コハル
「ナオコが遅すぎるの!」
ナオコ
「前の日でええやん。
コンビニもあるし」
コハル
「出た。
旅行準備が遅い人の最終兵器!」
ナオコ
「だいたい何とかなるで?」
コハル
「ならないものもあるの!」
ナオコ
「例えば?」
コハル
「充電器!」
ナオコ
「コンビニある」
コハル
「ほらぁぁぁ!!」
ナオコ
「言うたやん。笑」
コハル
「もう明日、私が監督する!
朝ご飯食べたら荷造り!」
ナオコ
「昼からでよくない?」
コハル
「午前中!」
ナオコ
「昼寝は?」
コハル
「荷造り終わってから!」
ナオコ
「……厳しい」
コハル
「普通です!」
ナオコは少し考えたあと、コハルの手を握ったまま、控えめに顔を覗き込んだ。
ナオコ
「じゃあ、コハルが荷造り手伝って?」
コハル
「いいよ。
その代わり、私が持っていくって言ったものは素直に入れること。
勝手に減らさないこと」
ナオコ
「……荷物増えるの嫌やなぁ」
コハル
「じゃあ一人でやって」
ナオコ
「待って待って。
お願いします、コハル先生」
コハル
「早い。笑」
ナオコ
「荷造り担当コハル先生」
コハル
「嫌な肩書き!」
ナオコ
「でも頼りになる」
コハル
「そうやって褒めたら何でも許されると思ってる?」
ナオコ
「……ちょっと思ってる」
コハル
「正直すぎる!」
ナオコ
「でもほんまに頼りにしてるよ。
私一人やったら、たぶん服と充電器だけ入れて終わる」
コハル
「それで1泊分足りると思ってるの?」
ナオコ
「足りへん?」
コハル
「足りないよ!」
ナオコ
「じゃあコハル先生に任せます」
コハル
「任せるんじゃなくて、自分もやるの!」
ナオコ
「はい」
コハル
「返事だけはいいんだから」
ナオコ
「返事がいいのは大事やろ?」
コハル
「行動が伴わないと意味ないの!」
ナオコ
「明日、行動します」
コハル
「本当に?」
ナオコ
「……たぶん」
コハル
「今すぐ信用を失った」
明日の話。
三日後の仕事の話。
荷造り、朝ご飯、昼寝。
何でもない普通の会話が、二人には心地よかった。特別な夜のあとに、特別な言葉だけで終わらない。
明日何を食べるか、何時に起きるか、荷造りをいつするか。そんな生活の話へ、何の違和感もなく戻っていく。
それこそが、三年以上一緒にいる二人の今の距離だった。
コハル
「じゃあ明日。
朝ご飯、荷造り、買い物、昼寝。
これでいい?」
ナオコ
「……順番変えへん?」
コハル
「どこ?」
ナオコ
「朝ご飯、昼寝、荷造り、買い物」
コハル
「朝から二度寝する気!?」
ナオコ
「休みやで?」
コハル
「今日遅いの、誰のせいだと思ってんの!?」
ナオコ
「……私?」
コハル
「そうだよ!!!!」
ナオコ
「ごめん。笑」
コハル
「笑ってる!!」
ナオコ
「でも良かったやろ?」
コハル
「…………寝る!!」
ナオコ
「答えてへん」
コハル
「うるさい!」
完全に真っ赤になったコハルを見て、ナオコはまた満足そうに笑った。
その笑顔に気づいたコハルは、繋いでいた手を少しだけ強く握る。
ナオコは嬉しそうに握り返したが、次の瞬間、コハルの指が手の甲を軽くつねった。
ナオコ
「痛っ」
コハル
「何笑ってるの」
ナオコ
「いや、可愛いなぁと思って」
コハル
「まだ言う!?」
ナオコ
「だってほんまに」
コハル
「明日の荷造り、ナオコの分だけ全部自分でやって」
ナオコ
「ごめんなさい」
コハル
「早い!笑」
ナオコ
「コハル先生、どうか見捨てないでください」
コハル
「先生を怒らせたのは誰ですか」
ナオコ
「私です」
コハル
「よろしい」
ナオコ
「許してくれる?」
コハル
「……明日ちゃんと起きたら」
ナオコ
「何時?」
コハル
「八時」
ナオコ
「早い!せめて九時!!」
コハル
「八時」
ナオコ
「休みの日の八時は早いって!お願いします、九時にしてください…」
コハル
「…じゃあ九時」
ナオコ
「はい」
コハル
「朝、九時に起こす」
ナオコ
「優しく?」
コハル
「普通に」
ナオコ
「普通にって?」
コハル
「ナオコ、起きて。朝だよ」
ナオコ
「それで起きられるかなぁ」
コハル
「起きなかったら?」
ナオコ
「いつもの、ほっぺにチュー」
コハル
「自分で起きて」
ナオコ
「はい」
コハル
「返事だけはいい!」
ナオコ
「明日はちゃんと起きます」
コハル
「本当に?」
ナオコ
「……努力します」
コハル
「信用できない!」
二人の声が、また寝室に響く。
けれど今度の笑いは、さっきまでの熱を少しずつ眠気へ変えていくものだった。
コハルはナオコの胸元へ頬を寄せ、ナオコはその髪へ頬を預ける。繋いだ手は布団の中で重なったまま、どちらも離そうとはしなかった。
コハル
「……ナオコ」
ナオコ
「ん?」
コハル
「そのニヤニヤした顔のまま寝たら、明日の荷造り私一切手伝わないからね」
ぴたり。
ナオコの笑顔が消える。
ナオコ
「……おやすみ、コハル」
コハル
「切り替え早っ!!笑」
ナオコ
「ちゃんと寝ます」
コハル
「はいはい。笑」
ナオコは真面目な顔を作ろうとしたが、口元がどうしても緩んでしまう。コハルはそれを見て、呆れながらも笑い、繋いだ手をもう一度だけ握り直した。
ナオコが一度だけ親指で手の甲を撫でると、コハルも同じようにナオコの手を撫で返す。触れ合いはそれだけだったが、二人にとっては十分だった。
ナオコ
「……今の好き」
コハル
「寝て」
ナオコ
「はい」
コハル
「おやすみ」
ナオコ
「おやすみ、コハル」
三日後には、HANA七人で行くグランピング企画。
運転、撮影、キャンピングカー。
そして、おそらく再び始まる助手席論争。
けれどその前に、明日は誰にも見せない、何でもない二人の休日だ。
その予定の一番上には、どうやら。
ナオコの荷造りを終わらせる。
という、非常に現実的なミッションが追加されていた。
ただし。
ナオコの中では、
コハルに起こしてもらう。
朝ご飯。
昼寝。
の順番が、まだ密かに第一候補として残っている。
コメント
1件
うわ、もう…第3話、めちゃくちゃ良かったです…!特別な夜のあとって、どうしても余韻だけで終わりがちなところを、朝ごはんの話とか荷造りの話とか、普通の日常に戻っていく空気感がすごく自然で。でも「手を繋いで親指で撫でる」とか、二人だけの小さな癖がちゃんと残ってて、そこに三年分の距離感が滲んでるのがたまらなかったです。ナオコの「二か月分?」って返し、ずるすぎますね…笑。明日の荷造りミッション、無事に終わるのか気になります!
はにぃず
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