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※出すのどうしようかめちゃ迷った……。長すぎるし、かっこつけすぎた……笑
《相談メール》
こんにちは。はじめまして。
リスカやODを繰り返しています。やめたいと思う時もあるけど、結局いつも夜になると駄目です。
親にも友達にもバレてるはずだけど、誰も何も言わないし、私も何も言いません。
誰かに本当は止めてほしいのか、自分でもわからないけど、たまにこうして誰かに書くと、少しだけ落ち着きます。
それだけです。すみません。
(放課後の相談室。陽が傾いて、カーテンがふわりと揺れる。奥の椅子に、作者がいる。足を組んで、気だるげに何かをめくっている。蓮司がドアを開け、遥と日下部を引きずるように連れて入る)
蓮司「ほら。入れよ、作者の人いるから」
遥「……は?なんでおまえが勝手に決めんだよ」
蓮司「俺の言うことはだいたい正しいからな」
日下部(静かにドアを閉める)
作者(顔を上げて)「やあ、いらっしゃい。さあ、三人で来るとは聞いてなかったけど。あれ?連れてこられた感じ?笑」
遥「そうだけど。……誰?」
蓮司「相談室側の人。たまにしか来ないけど、なんか偉い人。俺より上」
作者「やめて。雑な紹介やめて。あと偉くない。ほら、普通にしゃべっていいから。今日の相談、これね」
(作者がタブレットを軽く持ち上げる)
作者「夜になるとダメっての、すごくリアル。わかるなー。昼間はけっこう普通にいられるのにさ。急に来るよね。わけもなく」
日下部「……でも、この人、止めたいって書いてる。自分でも」
遥「止めたいって思えるなら、まだ……って言いかけたけど、そう簡単じゃねえか」
作者「簡単だったらとっくに誰も苦労してない。でしょ? それより、”誰も何も言わない”ってとこ。どう思う?」
蓮司「ありがち。でも一番キツい。周りが静かなの、冷たさよりこわい」
作者「うんうん、名言っぽいこと言ってる。でもお前、無理やり私連れてきた罪は忘れてないから」
蓮司「だってこっちのが反応面白そうだったんだもん。前の相談、全部正論しか出なかったし」
遥「おい、それ俺の回じゃねえか。……ってか、なんでこの人そんな軽いんだよ。空気読めよ」
作者「空気?吸ってるよ? ほら、吸って、吐いて、はい、リラックス〜」
日下部「……でも、それくらいのほうが、今はいいかも」
(しばらく沈黙。カーテンがまた揺れる。外の光が少し柔らかくなる)
作者「メールの人、”誰かに書くと落ち着く”って言ってる。つまり、誰かっているんだよね。見てる人が。自分で思ってるより、絶対」
遥「……それって、誰でもいいの?見てるだけで?」
作者「うーん、”見る”と”見届ける”は違うかもね。私は今、君らを”見届けてる”。それはちょっと、特別でしょ?」
蓮司「自分で特別って言うタイプ?」
作者「うん。だって一番手っ取り早いじゃん。そういうのは自称してナンボ。人生、宣言だよ。あと、めんどくさいから省略した」
日下部「……でも、このメールの人も、”本当は止めてほしいのか、自分でもわからない”って」
作者「そう。だから、”止めないけどそばにいる”ってことも、たぶん、できる」
(ふと、遥の目線が作者に向く)
遥「……なんでそんなふうに言えんの。相談、慣れてる感じ?」
作者「ん?いやいや、初めて。というか、ほぼ引きずられて来たからね。こっちのセリフ。なんで君たち、そんなにちゃんといるの」
蓮司「俺がまとめてるからな」
遥「ふざけんな」
作者「この空気、いいね。たぶん、これも”落ち着く”に入るよ」
遥「……あんたさ、ほんとに、やってたの?」
作者「リスカ? うん、そりゃあ。ODもわりと常連だったし」
蓮司「わりと、って言い方がもう常連だな」
作者(笑って)「でしょう? 毎週とかじゃないけど、まぁ、数えたらそこそこ。古い話だけどね」
日下部「……誰かに、言ってたんですか?」
作者「いや。誰にも言ってなかった。てか、言いたくなかった。別に隠すほどのことって思ってなかったし、ただ単に”言う理由がなかった”って感じ」
遥「……へえ。意外と、冷めてる」
作者「うん。たぶん、あの頃の私は、”特別に誰かに止めてほしい”って思ってたわけじゃなくて、”どうせ止められないだろうな”ってどこかで諦めてたんだと思う」
蓮司「冷めてるっていうか……自分で完結してたんだ」
作者「そうそう。で、周りに期待してなかった分、誰かが心配してくれても”は?今さら?”って思ってたし、何も言われなくても”まぁそんなもんか”って納得してた」
遥「あんた、つよ……いや、違うな。変わってるだけか」
作者(笑う)「うん。よく言われる。そう見える人って、たまにいるでしょ?いつもふざけてて、悩みなさそうで、でも実は裏でめっちゃ傷だらけ、みたいな」
日下部「そういう人……ほんとに、見つけづらいですよね」
作者「そう。だから、”誰も気づいてくれない”っていうのは、たぶん本当なんだよ。で、気づかれないまま時間が過ぎてくと……”自分でも気づかなくなってくる”んだよね」
遥「気づかなくなる……って、どういう意味?」
作者「”痛い”とか”やめたい”とか、そういう気持ちが、鈍ってくるの。やってることの意味もよくわかんないまま、ただ夜が来ると、身体が勝手に動く感じ」
蓮司「あー。もう”選んでる”って感覚じゃなくなるんだ」
作者「そう。だから、”やめたいと思う時もある”っていうのは、実はものすごく貴重な感覚でさ。まだ、自分の意志が生きてるってこと」
遥「……じゃあ、どうすればやめられたの? あんたは」
(作者、ちょっと黙って考える)
作者「”やめよう”と思ってやめたんじゃないよ。ただ、ある日”やらなくていい日”が来た。それだけ」
日下部「……それって、どういう……」
作者「うーん、言葉にするとむずいな。でも、たとえば、”やってない自分”の時間が1時間続いたら、それが3時間になって、1日になって……そんなふうに、じわっと」
蓮司「成功体験、ってやつ?」
作者「かもね。でも、”やめる”って感じじゃなかった。なんか……”選ばなくてもすんだ”っていう方が近いかも」
(沈黙)
遥「……じゃあ、この子にもそういう日が来る?」
作者「来るよ。ちゃんと、来る。でもその日まで、誰かに『話しかけてもいい』って思える場所が一個でもあったら、少しマシだよね」
蓮司「……その“誰か”が、いてくれるかどうか、なんだよな。やっぱ」
作者「そう。だから、君らがこうしてしゃべってるの、すごいよ。気づいてないかもしれないけど」
遥「別に、しゃべりたくて来てるわけじゃねぇし……おまえが勝手に呼んだんだろ」
蓮司「俺のセレクトは間違ってないってことが、また証明されたな」
遥「うぜぇ」
作者「まあまあ。いい空気じゃん。これで、誰かひとりでもちょっと落ち着いたら、メールの意味、ちゃんとあったってこと」
(カーテンが揺れる。外の光が、柔らかく沈んでいく)
作者「“それだけです。すみません”って書いてあったけどさ。あれ、絶対、“それだけじゃない”ってことなんだよ」
日下部「……その続きを、どこかで書いてくれたらいいですね」
作者「うん。無理せず、こっそりでも、また書いてくれたら」
蓮司「そのときまた、こっちで拾う?」
作者「そ。そのときは私いなくても、君らが拾えばいい。なんだかんだ、頼りになりそうだし」
遥「……たぶん、それ、最初で最後の褒め言葉だろ」
作者「うん。だって照れるじゃん、真面目なの」