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中学一年生の時は、私とカンナは普通にクラスの友達だった。
カンナはいつもニコニコしてたから、基本的にはクラスのみんなから好かれているような感じの子だった。
ただ、八方美人とまではいわないけど、あまり誰かと心から打ち解けようとしない感じに見えた。
それは私に対しても同じような感じだったと思う。
私も他のクラスの子と友達になったので、カンナも含めみんなで遊びに行くこともあった。
ただ、やっぱり彼女はみんなと遊んでても、率先して仲を深めようとする感じが無かった。
だからみんなから別に嫌われてたわけじゃないけど、「何考えてるか分からない奴」って陰で言う子もいた。
まぁでも、一番最初に私が声をかけたからだろうか?
それでもカンナは私に対しては、他の子よりかは多少心を開いてくれているように思えた。
気のせいかもしれないけど。
中学2年の春、ある日の美術の時間。
「はい、それでは今日は生徒どうしてペアを組んで、似顔絵を描いてくださいね」
そう言われたので、私は特に何も考えずにカンナとペアを組もうとした。
「ねぇカンナ、アンタとペアでいい?」
「う、うん」
見ると、カンナは物凄く青ざめた表情をしていた。
「どうしたの、カンナ? 顔色悪いけど大丈夫?」
「う、うん。平気……」
「ホント? 無理しない方がいいと思うけど……」
「う、うん、美雪ちゃん、わ、私……」
「……………………」
カンナの様子がおかしいことに気付いて、私は先生に声をかけた。
「先生すみません、蓼原さんが体調悪いみたいなので、保健室連れてっていいですか?」
「え? そうなの? 本当に顔色悪いじゃない……」
「あ、はい、すみません」
みんながカンナの様子の異変に気付いて、「大丈夫ー?」と気遣いの声をかける。
私はカンナの手を引いて保健室に彼女を連れていった。
そのあと、結局私はカンナではなく別の友達の似顔絵を描いて提出。
結局そのあとカンナは授業に戻らなかった。
放課後、カンナの様子が気になって私は保健室へと向かった。
「え? 蓼原さんならもう大丈夫だからって、出ていったけど……」
「え、そうなんですか?」
保険室の勤務医にそう言われた。
私はもう一回、教室に戻る。放課後にダラダラ居残っている生徒くらいしかいなくてカンナの姿はどこにもなかった。
だけどカンナのロッカーを見ると、やはり荷物はそのまま。下駄箱も見た限りではまだ下校はしてないようだ。
(一体どこにいったの? あの子、部活はやってないはずだし)
下駄箱の前で悩む。
(もしかして……)
ふと思いついて、美術室に向かった。
(やっぱりここか……)
こっそりと美術室を覗くと、カンナがいた。
カンナはイーゼルに乗っかった真っ白なキャンパスを前にしてぼんやり座っている。
鉛筆を持ってそのまま途方に暮れているようだった。
何をしているのかよく分からなくて、私は意を決して美術室に入る。
ドアのガラガラという音に気付いて、カンナがこちらを向いた。
「美雪ちゃん……!」
「いや驚きすぎ。てか、もう具合はいいの?」
「あ、うん、さっきはごめんね」
「いいよそんなの。それで、なにしてるの?」
「えっと、先生に『自分の顔でいいから似顔絵描いて今日中に提出しろ』って言われて……」
「そうなんだ、なんで描かないの?」
「……絵、苦手だから」
「いや、だいたいみんな絵なんて下手くそでしょ」
「んっと、そうかもだけど」
「自分の顔を描くのがイヤなら、私がモデルになってあげるよ」
「……いいよ、一人で何とかする」
「……ふーん」
カンナの様子がおかしい。ていうか、何かを隠している感じだ。
「ねえ、ちょっと付き合ってよ」
「え?」
「学校探検、気分転換にさ」
「え、でも絵が……」
「そんな息苦しそうにしてたらいつまでも終わらないでしょ。気晴らししようよ、ほら来なさい」