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ストーリー作るの上手すぎん?
最高すぎ問題
んふふ…
__ああ僕が生まれる前よりもずっと昔から続くように。
誰にだって、一つや二つは秘密があるだろう。
それは僕にもあり、だけど僕は皆とは少し違ったものだ。
感情がわからない。
嬉しい。悲しい。悔しい。楽しい。
どれもが僕には理解できなくて、僕には無いものなんだと思い知らされる。
一時はどうしても感情が欲しくて、欲しくて堪らなくて。
どうして僕にはないんだろうって何度も何度も考えた。
考えてもわからなくて、どうにかできることじゃなくて。
その度僕はこの気持ちをSNSのアカウントに書き込んだ。
俗に言う “ 裏垢 ” みたいなものなのかもしれないけど、皆が想像してるような暗くてドロドロなやつじゃない。
誰にも届かないようアカウントには鍵をつけ、たまに「なんでなんだろ?」なんて呟く。
届くようにしたとて、本当に誰かに届くことは無いんだろうが。
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いつか誰かに「人生のターニングポイントは?」と訊かれたら、僕は間違いなくこの瞬間のことを言うんだろう。
その日僕はちょっとした不幸に苛まれていた。
「やばい、消しゴム忘れた…」
ちょうどその前日家で筆箱を使っていたから、その時に置いていってしまったのだろう。
無くてもなんとかなるっちゃなるが、1日消しゴム無しで過ごすのは学生にとってかなりきつい。
『んね、白瀬くん、どしたの?』
「…え、ぼく?」
『うん、なんか困ってそうな顔してたから気になって』
僕に声を掛けてくれたのは灰谷那炉くん。
明るくて少し天然な所があって、男女問わないクラスの人気者だ。
初めて同じクラスになって数ヶ月。僕のことを覚えてくれているなんて。
「いや、実はさ、家に消しゴム忘れちゃって」
『なんだあ、そんなこと?じゃあ僕のあげるよ!』
「え、いやいやいや!申し訳ないよ!」
『遠慮しなくていいのに!それに、僕2個持ってきてるし』
「…え、なんで?」
『んー?授業中暇な時に転がして遊ぶため?』
「…え、 な、何それ!」
『えへへww 』
照れたように頬を搔く君。いいな。素直に感情が出せて。
灰谷くんへの感謝とともに、そんなことを考えてしまった。
『じゃ、はい!どーぞ!』
「わ、ほんとに?ありがとう」
『いーえ!全然いいよ!』
にっこり笑顔で消しゴムを手渡してくれ、灰谷くんはひらひらと手を振り離れていった。
それにしても、初めて話したのに優しかったなあ。
きっとこういう所が誰からも好かれる要因の一つなんだろう。
ん、?
僕は “ 感情が分からない ” なんてこと誰かに言えるわけもないから秘密にしているけど、
もともと人と深く関わろうとしていなかったのでまともに「友達」と呼べる人なんていなかった。
だけど灰谷くんは、そんなクラスで浮いているような僕にも優しくしてくれた。
その時に、何処か心が暖まるような、そんな感じがした。
…感情?
いままで感じたことの無い感覚は直ぐに終わってしまい、もう分からなくなってしまった。
だけど、もしかしたら。
灰谷くんと居れば、僕も感情を持つことが出来るかもしれない。
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