「つぼ浦どこだー…あれ。」
「つぼ浦君はどう動いたら良いと思う?」
「んー理想はまずこっちに回れる人がいたら回って…」
部屋の中から珍しく大型事件の対応について話し合っている声が聞こえる。最近は大型現場にたまに現れては特攻するばかりのつぼ浦だが、こういう時は実に有意義な意見を出せるのが不思議だった。
「俺も混ぜて。んーでもそうなるとここも怖くない?」
「そうだけどあんまこっちに人員割くとこっちが手薄になっちまう。撃ち合いメインになるのはこっちだろ。」
いつの間にか他署員も数名集まってきてちょっとした会議のようになっていた。
「ここは特に撃ち合いが強い…ドリーさんとか猫くんとかが行けると強いな。」
「俺がサーマルで1番最初に確認するのはここで、あとは動き追いながら…」
「ここだとこっちから射線通るから反対側のこっちに待機してほうが良いか。」
「こっちに逃げられちゃうとヘリだと追いにくいんだよね、ここの逃げ道潰してくれると助かる。」
各大型現場の地図を見ながら話し合う。いつの間にか青井とつぼ浦が中心となり、他署員と意見や質問を出し合っていた。
「…まぁこんなの全部机上の空論すけどね。」
「それ言っちゃう?w意識しながら動くだけでだいぶ変わるでしょ。」
「でも逆に作戦通り動けなかったって気に病むヤツが出てきたら良くないだろ。」
「あーなるほど…まぁ今話したのが最善って訳でも無いしな。知識として頭の片隅にでも入れとくと良いかもね、ぐらいで今日はお開きにするか。」
もっと教えて欲しいという声もあったがつぼ浦がため息を吐きながら外に出ていくのを見てまた今度、と解散させて追いかけた。
「つぼ浦お疲れ、帰るか。」
「良いんすか?まだ教える事あるしょ?」
「今日は終わり、また気が向いたら誰かが言い出すだろ。てかなんでつぼ浦が参加してたの?」
「ん?なんかネルセンとドリーさんが話してるの聞こえて、部屋入ったら参考意見欲しいって言われて。」
「珍しいじゃん、あんな真面目に話すなんて。」
「あ?俺はいつでも真面目だが?」
「普段のお前は真面目の方向性がおかしいんだよw」
軽く言い合いながら退勤して車に乗り、出発する準備をしているとつぼ浦が言った。
「なんか一気に腹減ったなー、頭使ったし甘いもん食いてぇ。」
「…え?マジで!?ほんとに!?」
「な、なんすか。俺変な事言った?」
「つぼ浦が腹減ったなんて言うのいつぶりだよ…あぁ良かったぁ…」
抱き締めて頭を撫でる。胸に埋もれてしまったつぼ浦はジタバタともがくが更に力を込められた。
「アオセン苦しぃ…大袈裟だって。」
「ごめんつい。はぁほんと良かった…」
離れると赤くした目をこすりながらつぼ浦の頭をポンポンと軽く叩いた。
「なんで泣くんすかw俺だって腹ぐらい減るぜ。」
「だって明らかにやつれて体力減ってたし、昨日マッサージしてる時も細くなってるの実感しちゃって…もしもうずっとこのままだったらどうしよう、て考えちゃってさ。」
「…そこまで……すんませんでした。でも俺はそんなヤワじゃねぇよ、アオセンが傍にいたらどんなに弱っても絶対治る。」
頬に伝った涙を指で拭ってから今度はつぼ浦のほうから抱き締める。
「そっか、やっぱりお前は強いな。」
「アオセンのほうが強くてデケェよ。ありがとうございます。」
「こっちこそありがとう。……帰ろっか。それともどっか食べ行く?」
「そういやカニメイト開けるって言ってたな。」
「お、じゃあ行くか。あんまり散財すんなよ?w」
「それはこっちのセリフだな、無駄遣い厳禁すよ?w」
また言い合い、笑い合いながら車を走らせた。
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