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柘榴とAI

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#没入感フィクション
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『イベントの内容はちゃんと理解したな? 夢月。今日はそのミーティングみたいなモノだから、そこまで緊張するな』
「う、うん……大丈夫」
6keyでログインした状態で、いつもの訓練施設の様な場所にやって来た。
言葉通り、今度のイベントに対してのミーティング……だったのなら、普通に通話を繋げば良いだけだったのだが。
今回のお祭りは、なんとタッグ戦。
時間制限付きで、特別フィールドで戦い続けるというもの。
プレイヤー側は順番待ちみたいな形で次々エントリーし、2チームが常にフィールドにログインしている状態となるみたいだ。
これに対し、こっちは賞金首二人だけで迎え撃つという。
リスポーンは出来るけど、時間内は戦い続けないといけない。
賞金首を倒したチームは報酬を受け取り、その後強制ログアウトさせられ交代。
しかしながらタイミングが非常に悪い形で重なれば、復活しても私達はすぐに狩られる可能性があるのだ。
一人やられれば、間違いなく連携などガタガタになるだろうし。
まぁただよ、またこういう無茶ぶりだよ。
とはいえ今までの様な、数人VS百以上! とか、オープンフィールドに居る全員が敵! とかのイベントよりかは規模が小さいと言って良いのかもしれない。
しかしながら、結局は特別フィールドの広さ次第なんだよなぁ……。
あんまり狭い所に放り込まれたら、結局いつも通り戦い続ける事になりそうだし。
私の得意な戦法って、基本的に逃げながら隠れて戦う事なので。
そんな事を思ってしまう様な企画書を渡され、これまたため息。
そしてタッグと言うのなら、私は他の誰かと一緒に戦う事になるという事。
どうか知り合いであって下さいお願いします、初対面の人と二人きりの空間とか、本当に会話が続く自信が無いので……。
と、祈り続けながら数日が立った頃。
此方とペアを組む人が発表され、本日はその顔合わせと言う形。
ついでに言うと。
「今回夢月と組む事になったのは、second。ちょっと彼は特殊な形で雇われている人でな……その、なんだ。賞金首達の相談役というか、アドバイザー的な? そういう仕事も受け持っている人だから……夢月には悪いんだが、ちょっとだけ二人で話して貰って良いか? こっちは無線を切る状態になるんだが、無理そうだったらログアウトしちゃって良いから」
今回の顔合わせの前に、お兄ちゃんからそんなお願いをされてしまったのだ。
相手の本職は晒さなかったけど……すみません、妹は既に存じております。
というか、リアルで一回顔を合わせております。
つまりsecondは、皆のメンタルを監視する役割を持っているって事なのだろう。
確かに、普通だったらもの凄いストレスになりそうな環境だもんね。
本来は運営側にお呼びして、徹底的にメンタルチェックをする、みたいな形の方がそれっぽいけど。
まぁそういう定期健診みたいなのが入ったら、時間もお金も掛かる上に“まさに検診!”って雰囲気だったら警戒しちゃいそうなのは確か。
私みたいな性格では、この前の症状があっても「健康です! 全然平気です!」って言っちゃいそう。
だからこそ、普段から同じ賞金首の仲間として“そういうプロ”を織り交ぜた、という事なのだろうか?
こういうのを知ると、ガンサバの賞金首は本当に色々なプロがいらっしゃる……とか考えると、もっと緊張しちゃいそうだけど。
『相手方から連絡が入った、そろそろログインするそうだ。と言う訳で、ここからはこっちの通話は切るが……大丈夫か? 無理そうだったら、ちゃんとログアウトするんだぞ?』
「う、うん。多分大丈夫かな? 心配し過ぎだよお兄ちゃん。私だってここ最近は、ちょっとくらいコミュ力上がって来た気がするし」
すみません、嘘です。
件のsecondと初めて会った時、いつも通りコミュ障発揮しました。
とはいえ今回は二度目、だから初対面よりかは問題無い筈。
あとは、あまり兄に心配ばかり掛けたくないので。
『分かった……とりあえず、一旦通話は切るからな? その後は、普通に担当サポーターも参加して、イベントの会議があるから。あんまり体力使い過ぎるな?』
「うん、分かった。それじゃちょっとお話してくるから、お兄ちゃんは待っててね」
そんな会話をしてから、プツッと通信が切れた音がした。
このタイミングで、私の目の前にはプレイヤーがログインしてくる時のエフェクトが。
そして。
「やぁ、お久し振りです。白川さ……ではなく、ココでは“シックス”とお呼びした方が良いですね」
「えと、お久し振りです。以前はお世話になりました、“伊丹先生”。アバターの方では、初めましてですけど。改めまして……6keyです。よろしくお願いします、セカンド」
「はい、こちらこそ」
ゲームの方で会っているからこそ、リアルで会っても気持ちが楽、と言うのはオフ会の時学んだけど。
その逆パターンというのも、どうやらあるみたいだ。
目の前に登場したのは、白っぽいような戦闘服に身を包んだ男性だったけど、雰囲気がリアルの先生と似ている。
中身が一緒なのだから当たり前だけど、声はもちろん……表情や仕草も以前と一緒で、何となく少しだけ緊張が解れた気がした。
「すみませんね、お時間を頂いてしまって。では座って話しましょうか、シックス」
「え、えと、よろしくお願いします!」
「ハハッ、そう緊張せずに。むしろ私の方が緊張してしまいそうだ。なんたって凄腕の賞金首が、目の前に居るのですから」
「私なんて、そんな……他の皆さんの方が、ずっと凄いですし」
などと軽口を挟みながら、以前よりもリラックスした状態で先生とのお話合いが始まったのであった。
◆
「どうだ? 夢月。新しい武器は」
『……凄い。というか、めちゃくちゃ格好良い!』
賞金首の顔合わせと言う名の妹への問診も終わり、その後普通のイベント戦の会議をした後。
せっかく6keyでログインしたままだったので、夢月には悪いが……そのまま“次の段階”へと進ませてもらった。
初対面の相手と二人きりになんかしたら、もっと妹は体力を消耗するかと思ったのだが……やはり、妹も成長していると言う事なのだろう。
なんだか気楽な様子で、俺等サポーターの話もちゃんと聞いていた程。
お兄ちゃんは、お前の成長が一番嬉しいよ……。
と言う事で、本日頑張った御褒美。
なんて偉そうに言うつもりはないが、以前から言っていた“シックスの新しい武器”を、正式にコンバートした。
今6keyが手にしているのは、リアルの妹にも渡した最新型のハンドガン。
トイガンの会社に営業を掛け、かなり無理を言ってコラボ許可を捥ぎ取って来た上に、完全新規のカスタムパーツまで開発してもらったのだ。
これに乗っかる形で、sevenの武装もそこにお願いする形になったが……相手方からは、“出来ればもう少し早めに相談しろ”と釘を刺された。
ですよね、本当にすみません。
普通こういうのを頼むとしても、年単位ですよね。
使い手の要望を詰め込んだ形で、どうにかデータだけでも作って貰えないかと頭を下げた結果。
前回のコラボで大きな影響を出した夢月だからこそ、と言うのもあって相手はこの件を受けてくれたのだ。
そして完成したソレが、今夢月の……というか、6keyの手に握られている。
「前にも言った通りそれはトイガンのみ、その会社のオリジナルカスタムだ。ソレをベースに、ありとあらゆるパーツに手を加えたと言っても良い。いいか、夢月。その銃は今の段階ではデータでしか存在しないが……世界に、たった一丁しか存在しない“特別”な物だ」
『たった、一丁……』
「ソレを作る為に、多くの人達が頑張ってくれた。お前に“好きだ”って言って貰える様にデザインして、お前が最大限戦える為に全部考えて。その上で作られた、お前の為のお前専用の武器だ。夢月は既に、こんなにも多くの人を動かせるだけの影響力を持っている。シックスはすげぇって、そう思ってもらってる証明だ。そこはちゃんと自信を持てよ? そこだけは、否定するな」
ウチの妹は、本当に凄いんだ。
でも本人はいつだって、“私なんか”って言葉と共に生きている。
だからこそ、俺が夢月の自信の源を作る。
俺が動いて、ちゃんと実感できる程の成果を出して。
しっかり証明してやってこそ、その手に“証拠”を握り締めてこそ、感じ取ってほしい。
白川 夢月は、凄い人間なんだと。
少しでも良いから、自分に自信を持って欲しかったのだ。
あんな物を手にすれば、“否定する事自体が失礼だ”ときっと本人なら感じてくれるのだろう。
その通りだよ、夢月。
お前の為に、皆が協力してくれたのだから。
自身がどれだけ否定しようと、周りがお前を肯定する。
この環境を整えてこそ、妹ならきっと“頭で”理解する。
こんなにも実績を残していたのだと、それは普通の人では出来ない偉業なのだと。
それら全ては、お前をきっかけにして発生した“大事”なのだと、感じ取ってほしかったのだ。
もうお前は、“そういう位置”に立てるスゲェ人間なんだよ。
『こんなの貰ったら……絶対、負ける訳にいかないね』
「だな、相手方の会社のプロモーションにも繋がる。その銃の宣伝は、お前に掛かってるんだ。気楽にやれ、とは言わない。けどソレを使って、“いつも通りのシックス”をやれば良い。たったそれだけで、結果は付いてくるって俺は信じてる。なんたって、俺の妹だからな」
『フフッ……ありがと、お兄ちゃん。この銃を持っている時の私は、いつも以上に胸を張るね? 作ってくれた人たちにも、お兄ちゃんにも、そうしないと顔向けできないから。私は……“シックス”は、この銃で今回も生き残るよ』
「あぁ、頼りにしてるぜ? 賞金首」
ニッと微笑んでみれば、モニターに映った渋いおっさんも少しだけ口元を緩ませるのであった。
言葉自体は夢月なのに、声と見た目がこのおっさんなのがなぁ……。
仕方ない事ではあるんだけど、視覚的に可愛げが無い。
流石にこればっかりは、そろそろ慣れて来たけどさ。
コメント
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わあ、第100話おめでとうございます……!second(伊丹先生)との再会シーン、前回のリアルでの出会いがあったからこそのリラックスした空気感が伝わってきてほっこりしました。そして何より、お兄ちゃんからの新しい武器のプレゼントが尊すぎます。世界に一丁だけの、夢月のために作られた特別な銃……それを手に「負けるわけにいかないね」って言うシックスがかっこよすぎて泣きそうになりました。お兄ちゃんの「自信を持ってほしい」っていう願い、ちゃんと届いてるよって思いました。