テラーノベル
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FORSAKENの領域には、決して口にしてはいけない組み合わせがある。
キラー・アズール。
そしてサバイバー・ツータイム。
どちらか片方だけなら、まだ生き残れる可能性はある。
だが、この二人が同じ試合に現れた瞬間、そのマッチはもう「脱出ゲーム」じゃない。
ただ一組の壊れた元恋人が、お互いの魂を引き裂き合う舞台になる。
俺たち生存者は、その最前列に座らされた、運の悪い観客でしかない。
手記① 「白い男には近づくな」
「キラーより先にあいつを見つけたら?
……悪いことは言わない。別の発電機へ走れ。」
――生存者B。
ツータイム。
白い肌に黒いウルフカット。
見た目だけなら普通の青年だ。
普通なのは、本当にそこだけだった。
発電機を修理していても突然手を止め、誰もいない霧へ向かって話し始める。
「アズール……。」
「違う、僕は間違ってない。」
「GLORY TO THE SPAWN……。」
返事をする相手なんていない。
なのに本人だけは、そこに誰かがいるみたいに話し続ける。
荷物の中には、一枚の古びた写真。
昔の親友同士が笑って写っている写真だ。
……ただし、その片方の顔は、黒いマジックで何度も何度も塗り潰されている。
最初は気味が悪いだけだった。
でも、本当に怖いのはそこじゃない。
あいつは、一度死んでも戻ってくる。
キラーに胸を貫かれようが、毒に溶かされようが、次の瞬間には立ち上がる。
だけど、その顔に喜びはない。
「また生きてしまった。」
その一言だけを呟いて、また歩き出す。
死ねない人間ほど、不気味なものはない。
俺たちはいつしか、あいつを生存者じゃなく「霧そのものが生んだ呪い」だと思うようになった。
手記② 「植物学者は笑いながら殺す」
「他のキラーは怒る。
あいつだけは、嬉しそうなんだ。」
――生存者S。
アズール。
灰色のウィザードハット。
漆黒の肌。
背中で踊る触手。
昔は植物学者だったらしい。
薬草で人を助けていたという話も聞いた。
そんな面影は、もうどこにも残っていない。
今のあいつは毒草で人を殺す。
それだけなら、まだ理解できる。
理解できないのは、その表情だ。
人が苦しめば苦しむほど、嬉しそうに笑う。
悲鳴が大きいほど、幸せそうに目を細める。
だけど、その視線は俺たちを見ていない。
誰かを見上げている。
赤いシルクハットの主。
ザ・スペクター。
「ああ……我が神。」
「今日も収穫できました。」
誰かを殺すたびに、そう呟く。
まるで花束でも差し出すみたいに。
あの瞬間だけは、怪物じゃない。
主人に褒めてもらいたい一匹の猟犬なんだ。
それが余計に怖い。
手記③ 「二人が出会ったら終わりだ」
「脱出?
そんなこと考える余裕なんて無くなる。」
――生存者N。
アズールがキラー。
ツータイムがサバイバー。
この組み合わせになった試合は、途中からルールが変わる。
いや。
ルールそのものが壊れる。
遠くから聞こえる悲鳴。
「アズール!!」
必死な叫び。
泣き声。
笑い声。
全部混ざる。
恐る恐る覗いたことがある。
後悔した。
泥だらけになって縋るツータイム。
それを見下ろすアズール。
「もっとその顔を見せて。」
「嫉妬しなよ。」
「我が神は、その顔が大好きだから。」
触手が振るわれる。
毒が撒かれる。
なのに、とどめを刺さない。
逃がす。
追い詰める。
また逃がす。
まるで壊れた玩具で遊ぶ子供だった。
その間にも、僕たちは順番に殺されていく。
「あ、ごめんね。」
「君たちは見本だから。」
「ツータイムに絶望してもらうための。」
そんなことを笑いながら言う。
僕たちの悲鳴なんて聞いていない。
聞いているのは、どこか遠くにいる主人だけだ。
ツータイムは再び蘇る。
そのたびに泣く。
叫ぶ。
アズールの名前を呼ぶ。
でも返ってくるのは、冷たい笑い声だけ。
「お前の愛なんて、もう何の価値もない。」
その言葉だけで、ツータイムはまた壊れていく。
試合が始まったら、誰も振り返らない。
振り返ったら最後。
あの霧の奥で続いている二人の地獄まで見てしまう気がするから。
だから僕たちは走る。
耳を塞ぎながら。
霧の向こうから聞こえてくる、
狂った笑い声と、
泣き叫ぶ声を置き去りにして。
FORSAKENには数え切れないほどの怪物がいる。
けれど、生存者たちが本当に恐れているのは、怪物そのものじゃない。
救われないほど壊れた二人が、終わることのない愛憎を繰り返している、その光景なのだ。
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