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瞼の裏が明るくなったので、朝を迎えた事を知った。
癖で寝返りを打つと腕に柔い感触が伝って、ふと目線を下へ向ける。
腕にはふにゃふにゃ寝息を立てる🌸が丸まっていて、昨夜の出来事が蘇った。
🌸可愛かったなとか、腰痛くなってないかなとか、すげー気持ち良かったなとか。
「好きだなぁ」
募りすぎた想いが声になって溢れて、それにつられて頬が緩んで、小さい時から何も変わらないもちもちの白い頬を指で撫でた。
🌸は猫の様に喉を鳴らして小さく唸ってから、薄く開けた瞼を指で擦っている。
「…おはよ、堅治」
「ん、おはよ」
ストレートの前髪を人差し指でかき分けて、額に唇を落とした。
🌸はそれに「うぃぃ…」と変な声をあげて目を瞑っている。
「朝ごはん何食べたい?」
「んー、昨日の卵焼き」
「また?」
「すげー美味かったから」
🌸はへにゃりと笑って「じゃあまた美味しく作らなきゃね」と力こぶを作るポーズをしてから、俺の体の上を跨いでふわふわフローリングの上を移動した。
一人残されたベッドの上で、俺は少しの孤独感に襲われた。
昨夜、セミダブルのベッドを窮屈にして寝ていたのが嘘みたいだ。
それに、🌸一つ分空いたスペースは人がいた形跡を一つも残していなかった。人肌の温もりさえ無い。それがさらに孤独感を大きくさせいった。
八月十五日。お盆三日目。
奇妙な同居生活は二日目を迎えた。
…いや。昨日🌸と付き合ったのだから、奇妙な同居生活は同棲として姿を変えていた。
今日を入れてあと二日。🌸とあと二日しか一緒にいられない。
俺はこの二日間で、自分以外の生活音が鳴っていることに慣れてしまっている。
🌸が消えてしまったら、もう二度と会えなくなってしまったら。
そんな思いが、お盆の終わりが近づくと同時に俺を侵食していく。
この不安は一人じゃどうにも出来なくて、キッチンで鼻歌を歌う🌸に後ろからくっついて首元に顔を埋める。
🌸はそれにびっくりしてキリの悪いところで鼻歌を止め、顔だけを横に向けた。
「…うお、どしたの堅治」
「ほんとにお盆の間だけしか一緒に居らんないの?神様にお願いしたら一生一緒に暮らせたりしない?」
「なに、寂しくなっちゃったの?神様とは話せないんだって。私もできるならそうしたいんだけどさ!」
ムっと尖らせた俺の唇を🌸は人差し指の腹でツンツン触って、眉を八の字にして笑った。
「…海、行きたいな」
昨夜の夕飯のように、ローテーブルに並んで朝食を取っていた時のことだ。
テレビに映る朝のニュース番組で『お盆真っ只中!夏特集!』というエンタメニュースにつられ、🌸が納豆をネバネバかき混ぜながらポツリと呟いた。
「…海、俺も何年も行ってねぇや」
「え!?そうなの?」
「なんか海行くってなると足が重くなって」
「…トラウマ?」
「…多分」
俺の返答に🌸は下唇を口内に仕舞っては小さく唸って、考え込んでからニンマリ頬を上げた。
「堅治、海行こ!」
「え、いやだから海は…」
「トラウマって、多分あの日のことがあったからでしょ?私がいれば大丈夫だって!」
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