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小野寺は地域安全課に配置換えになっていた。
連続殺人事件は福山を重要参考人としてから全く進展はなく、本部は縮小されるだろう。
それはもう自分には関係のないことだと考えていた。
橋本千尋の話を聞いて以来、河北柚香から時折連絡が来るようになった。
内容はどうでもいいくだらないことで、そんなことを自分に話してどうするんだろうと小野寺は考えたが、何となく楽しい気分になった。
以来、彼女の配信も見ている。
昼休みに自分の机で買ってきた弁当を食べていると、テレビから二つのニュースが流れていた。
一つは橋本千尋の夫が小川一華の同居人に殺害され、橋本千尋は命に別状はないものの、重傷を負ったというニュース。
小川一華は同居人からDV被害にあっており、友人の橋本千尋が夫と一緒に彼女を助け出した。逆上した同居人の仕返しで起きた凄惨な事件。
同居人は日仏ハーフの男で全国に指名手配されたようだが、行方は不明。
小野寺はこのニュースを聞いていて、彼女たちはこれで絶対安全な被害者に身を置いたのだと思った。
人間社会のルールでは捕まえられない、人の皮をかぶった「なにか」が二人になった気がした。
もう一つは、主婦が夫を殺害した事件。
その主婦の写真を見て小野寺は思い出した。
あの顔は、橋本千尋の家に出入りしていた主婦だ。
家に入ると、一時間は出てこなかった。
おそらくなにかを相談していたのだろう。そして助言を受けた。
「収穫……これも収穫……収穫祭だな」
一人、つぶやくと小野寺は背筋が寒くなった。彼女たちは次にどこに種をまき、誰を収穫するのか?考えたくもなかった。