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「……」
「……」
じっと自分の手を見つめる。
「…言い出しっぺはお前だからな」
そして扉の前に立つぺいんとの手をじっと見つめる。
遡ること、(体感でおそらく)1時間くらい前。
『ぅん…?』
『あ…?』
目を覚ました俺らは謎の部屋に閉じ込められていた。
『何だ、この部屋』
『さぁ…?』
ひとまず情報を集めるために、壁や届く範囲の天井などなど触ったり叩いたりしたが何の反応もなし。
扉はびくともしない。
ベッド横のチェストの上にある赤と青の箱。
それに添えられるようにメモ。
『…ふざけてんだろ。しにがみの仕業か?』
『いや、流石のしにがみさんもこんなことしないだろ』
『食わないと出られねぇとか…マジで仕掛けたやつシメる』
本気でキレてんなと他人事のように考えているが、俺もこんなところに閉じ込められて内心キレ気味だ。
『……埒があかねぇし、じゃんけんで負けた方が媚薬入りを食べることにしようぜ』
『…男に二言はねぇな?』
そして、冒頭に戻るのだが。
「ほら、トラゾー。自分で言ったんだから食えよ」
「…分かってるよ」
赤い箱に手を伸ばし、入っているチョコを摘む。
「っ…」
ええいままよと口の中に放り込む。
溶け出すそれの中にはドロリと甘ったるいものが入っていた。
「ぁ、まっ…」
喉が焼けるような甘さだ。
ぺいんとは青い箱からチョコを取り出し口に入れていた。
「にっげ」
顔を顰めながら飲み込んだぺいんとはべーと舌を出した。
「っ…?」
もしかしてこの媚薬、即効性のものか。
ヤバいかもしれない。
「よし食べたな。出るぞ」
俺に背を向けてぺいんとはドアノブを握る。
どくりと心臓が跳ねた。
そう感じた時には足から力が抜けてベッドに倒れ込んでいた。
「ぇ、あ…?」
思ったよりベッドの軋む音が大きくて、その音にぺいんとが振り向いた。
「あ?トラゾー?」
「!、ぁ、ゃべ…ッ」
よくないものだ。
これはまずい、非常にまずい。
「ぺ、いんと…はっ、先に、でッて、ろよ…」
ぺいんとから背を向けて体を丸める。
勝手に反応を示す体を隠すように。
「……」
見られたくも見せたくもない。
強制的と言っても、こんな姿を友達に見せたくない。
「も、ぅ゛、出てっ…いけって…!」
シーツに顔を埋め、自分の熱を留めようと小さく体を丸め込む。
カチリと開いたものが閉まる音がした。
俺の方に近付く足音。
「…トラゾー」
「たのむから…っ!」
来るなよ!と声に出すことができなかった。
丸めていた体をひっくり返され、熱で上気する情けない顔を見られた。
「み、んなッ…!」
じっと俺を見下ろすぺいんとを睨みつける。
生理的にも精神的にも涙が溢れてボロボロ落ちていく。
「ばか…、っ」
押さえつけられる肩も小さく震えている。
それを跳ね除ける力もない。
少しでも動けばその刺激で達してしまいそうだから。
「…………はッ」
こんなに苦しんでる俺を見てぺいんとが笑った。
それが腹が立って、ムカついて、…悲しかった。
「わらう、くらいなら…ほっとけよ…!」
片目を隠してるぺいんとの表情は分かりづらい。
ただ、抑えきれないと口角が上がっている。
友人と思っていた人に情けない姿を見られ、挙句笑われて。
死んだ方がマシだと思ってしまった。
「………なぁ、お前、勘違いしてねぇ?」
「…は…?」
ポロリと涙が落ちた。
その落ちた涙を拭われる。
「………俺さ、トラゾーのこと好きなんだよな」
「……はぃ…?」
唐突なカミングアウト。
それとこれとが一体、何の関係があるのだ。
「その媚薬がそこまで即効性のモンとは思わなかったからさ、食べてさっさと部屋出てからのつもりだったんだけど…」
力の抜けた俺の上に覆い被さるぺいんとはよくない笑みを浮かべた。
「ぁ…」
「目の前で苦しんでる好きな奴を助けることもできるし、俺はトラゾーのこと触れるし。一石二鳥じゃん?」
それはお前にとってだけじゃないかと頭で反論しても声として出ない。
さっき、笑った理由はもしかして、
「据え膳食わぬは男の恥って言うだろ」
震えて力の入らない手でぺいんとの肩を押し返そうとした。
「お、れら…友達、だろ?…な、じょ、冗談、だよな…?」
熱が更に増す身体。
力の入らない手を絡め取られる。
「冗談?…それは俺のセリフだって」
びくつく俺に近付くぺいんとは耳元で囁く。
「こんな状態のお前をほっといて、ノコノコ帰れるかよ」
絡められた指の間をなぞられる。
「ひっ、ぁ⁈」
「……そういや、昔聞いたことあっけど」
指を噛まれて、腰が揺れた。
じわりと濡れて下着の中が気持ち悪い。
「擽ったいって思うとこって、性感帯らしいぜ?」
ぺいんとはニタリと笑った。
「試してみような?トラゾー♡」
「ゃ、ゃぁあ゛っ!」
「やじゃねーだろ」
全裸にさせられ、余すとこなく触られる。
「ひゔッ、ぺいんと、も、やらぁあ…ッ」
「かーわい♡」
面白くもない胸を揉まれ、撫でられ。
「トラゾー、コッチの方が好きか」
キュッと抓まれて腰が跳ねる。
出るモノももうないくらいイカされた。
「棚ぼたってやつだな」
てか、俺さっきから慣用句とか使って頭いい奴じゃね?と1人で笑っている。
力の入らない俺の手はベッドに沈んだまま。
「…そろそろ、いいかな」
後ろに手を伸ばすぺいんとは俺をちらりと見た。
「ひぁ゛⁈」
「柔らか」
そしてある一点を押された瞬間、体が跳ねた。
「ひゃぁ゛ぁあ!!」
「やっぱ、ココが1番反応すんな」
「ゃ、やら!ぺいんと、ゃめ…」
「ヤーダ♡」
身体の中で暴れる熱は一向におさまってくれず、余計に暴れ回っている。
「マジで可愛い」
恨むんならじゃんけんに負けた自身を恨むしかない。
どちらにせよ、俺が逃げる術は今はない。
「あ゛⁈」
わざとナカで爪を立てられてきゅっとお腹が締まった。
「じゃ、今度はコレな」
ズボンを寛げたぺいんとはその自身を俺のソコに充てがった。
「っ、ゃだ、…ゃめろって、ば…ぺいんと…ッ」
こんなことしたら戻れなくなる。
なのに、媚薬のせいでソレを欲してる自分もいる。
「トラゾーは嘘つきだな。ホントは欲しいくせにッ!」
「ゔッ、ぁあ゛ぁ⁈」
いきなり奥まで入ってきたソレに目を見開く。
「ま、取り敢えずはトラゾーの媚薬が抜け切るまでシてやるよ。その後、ちゃーんと、ヤろうな♡」
楽しそうに囁く声。
「ぺぃ、ン…とッ…」
「トラゾー、大好きだぜ♡」
きゅうっと胸とお腹が震えた。
「♡?、ぉれも?…すき、?ぺいん、と、っ、らぃしゅき…ッ♡」
謎の高揚感と多幸感。
さっき、甘ったるいチョコが喉を通っていく感覚に似たそれ。
「ッッ!!、お前ホントバカ可愛いな」
頭を撫でられて嬉しさに目を細める。
「俺と一緒に閉じ込められて可哀想」
腰を掴まれ、ぐっと奥を突かれた。
「ひゃぁあ゛!」
「ま、俺はめっちゃラッキーだけどな!」
おさまらない熱。
早くおさめてほしくて力の抜けた手を必死に伸ばす。
「ぺいんとぉ…もっと、ほしぃ…♡」
「欲張りだなぁ、…ふはっ、…いいぜ。いーっぱいやるよ」
「すきッ、だいすき、ぺいんと…♡!」
友達だったのに。
それ以上の関係になってしまったけど、もうどうでもいい。
伸ばした手を握ってくれるぺいんと。
こいつさえいてくれたら、もう。