「可愛いね、恵ちゃん」
涼さんは疲れたように溜め息をつき、繋がったまま私の顔にキスの雨を降らせる。
疲れ切った私は、それに何も答えられなかった。
(本当なら、何か気の利いた事を言ったほうがムードが出るんだろうか)
そう思うけれど、疲れすぎて指の一本も動かせないし、声を上げすぎて普通に話せる気もしない。
(あとで感想を言うので、許してください……)
私は心の中で謝り、疲れ切ったまま、少しずつ意識を闇の中に手放していく。
私は半分眠りながら、自分がようやく呪いから解放され、〝女〟としての生き方に前向きになれた事を感じていた。
多感な時期につけられた傷は、多分一生付きまとうかもしれない。
結婚して子育てに追われるぐらいになったら、もっと大らかになっているかもしれないけど、今すぐ何もなかった事にはならないと思う。
それでも、涼さんが側にいると思うだけで、こんなにも安心している自分がいる。
大学生時代、友達と徹夜して遊んだ挙げ句、男友達の狭い賃貸アパートで皆で雑魚寝した事がたびたびあった。
けれど皆が床の上で眠っているなか、私は〝外〟で寝る事ができず、朝まで膝を抱えて起きていた。
皆と騒いで『楽しい』と言いながらも、胸の奥に傷を負った私は、人前で無防備な姿を晒す事ができなかった。――誰も信じられなかったのだと思う。
そうして私は朱里以外の誰にも弱みを見せず、気がついたら『中村さんって強キャラだよね』と言われるようになっていた。
でもやっと、その仮面を外せる相手が一人増えたのかもしれない。
「……あり……、がと…………」
声にはならなかったけれど、唇だけでそう呟いたのが分かったのか、涼さんは私の頭を優しく撫でてからキスをしてくれた。
そのあとは意識がスゥッと柔らかな闇に包まれ、私はすべてを解放して眠りの淵に落ちていった。
俺は完全に気絶してしまった恵ちゃんを見て微笑み、彼女のまっすぐな髪をサラリと撫でてからそっと唇にキスをした。
彼女を起こさないようにゆっくり屹立を抜き、避妊具を取る。
随分久しぶりなせいか、被膜の先端にはたっぷりと精液が溜まっていた。
「気持ち良かった」
俺はそう呟き、静かに息を吐く。
ゴムを処理し終わったあと、俺はティッシュで恵ちゃんの秘部を拭き、仰向けに寝かせたあと羽根布団を被せる。
全裸のまま洗面所に行ってタオルをぬるま湯で濡らしたあと、寝室に戻って彼女の体を拭き、「おやすみ」と頭を撫でる。
そのあと少し彼女の寝顔を見つめていたが、一つ息を吐いてバスルームに向かった。
「……気持ち良かった」
俺はシャワーを浴びながら、先ほどと同じ事を呟く。
処女だというので時間を掛けて丁寧にほぐしたが、運動をしているだけあって締まりが良く、反応のいい敏感な体に溺れそうになった。
それ以前から彼女と話していると、あまりにピュアで可愛く、何回抱き締めて「可愛い~!」と悶えたくなるのを堪えたか分からない。
尊から前情報として聞いていたのは、恵ちゃんは朱里ちゃんの親友で、彼女を普通の友達以上に大切に想っている|女性《ひと》という程度だった。
尊の長年の片想いに協力していた人であると教えてもらっていたが、グループデートでその情報を出す必要はない。
『複雑そうな女性だな』と思ってランドに向かえば、ボーイッシュな雰囲気の可愛い女性だ。
朱里ちゃんは女性の割には高身長なほうだから、隣に立っていると恵ちゃんの小柄さが目立つ。
サラリとした前下がりボブを見ていると、触りたくなって堪らない。
アーモンド型の大きな目でジッと見つめられると、心の底を見透かされている気持ちになり、ソワソワする。
言葉遣いは丁寧ながらもまったく飾らず、自意識過剰なようだが、俺を前にしても態度を変えなかった女性は初めてだった。
最初は『構ってほしいがゆえの塩対応かな?』と思ったが、接しているうちに素の態度なのだと分かった。
構ってほしいだけの女性なら、何か『買ってあげようか?』と言うと、何だかんだ言いながらおねだりしてくる。
だが恵ちゃんは俺の事を〝いけ好かない金持ち〟と思っているのか、どう話しかけても塩対応のままだった。
かといって悪人と決めつけて嫌っているわけでもなく、その絶妙な感じが彼女の〝素〟なのだと分かり『いいな……』と思ってならない。
コメント
2件
涼さん、恵ちゃん、 本当に良かったね....💝 まだ付き合い始めたばかりだけど.... これからゆっくり愛を温めていって、二人で幸せになってね👩❤️👨🍀✨
恵ちゃん塩対応なだけだったけど、これからはツンデレだよねー(≧∇≦) かーわいい🩷ᩚ( ≖ᴗ≖)ニヤッ