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「ごめんなさいありがとうございますとんでもございません立てますから!」

「おお」(ニオ元気だ)


アリエッタに慰められたニオは怖くなって、慌てて泣き止んで立ち上がった。


”すごい勢いで立ったな”

”そんなに怖いのか”

”一体過去に何があったんだ……”

「……まぁつい最近の事なんだけど、大昔にとんでもない目に合ったのよね」

”???”

”……?”

”どゆこと?”


ネフテリアの不可思議で大雑把な説明を理解出来る者はいない。

驚いた事についてはネフテリアも初めて見たので、アリエッタから少し離して、事情を聞く事にした。


「じつはうち、小っちゃい頃から大きな音とかでビックリしちゃって……」

「いや限度ってもんがあるでしょ」

「自分の魔法なのよ」

(え、何? ファナリアの神様ってば、『男』と一緒に我慢強さとか全部そぎ落としちゃったの?)

”遠くに雷落ちただけで死にそうだな”

”さっきもピアーニャ様の雷で一緒に叫んでたもんな”


大きな音であれば自分で出した音でも絶叫するニオ。一体どれだけ戦いに向いていないんだと思いつつも、それならばあの威力は一体……という疑問が、コメントに浮かんだ。

ネフテリアはなんとなく理由を分かっているが、念のため本人に確認。


「えっ、【閃炎花バーストブランド】って危ない生き物をまとめてやっつける魔法って……」

”えっ”

”えっ”

”おい誰だこの子に魔法教えたの!”

「あー、んー、なるほどねー……」


今の言葉でネフテリアははっきりと理解した。魔王だった頃の魔力の多さがそのままニオとして引き継がれ、普通であれば大した事のない威力の魔法でも、殺傷力抜群の火力となってしまったのだ。


(たぶんご両親は、魔法教えてみたら、なんかすっごい威力で驚いて、咄嗟に危ない魔法だって説明したのね。脅しで使っただけでも相手を消し飛ばしそうだし)


魔法というものは基本的に個人で自由に作れるのだが、練習と連携の為にファナリア人共通の魔法が定められている。ネフテリアが普段使っている魔法がそれである。

威力が低いと定めたことで、火魔法ながらも使い勝手をよくした【閃炎花バーストブランド】は、多くの人に自衛用として使われる事になったのだが、それは普通の人の魔力での話。

魔力が多いニオにとって『普通』の出力がかなり多いのだ。そのせいで、他の人の数倍、数十倍といった威力となってしまう。


「ゼッちゃん」

「はい」

「後で文句言っておいてください」(ファナリアの神様に)

「御意に」(しっかりと説教しておきます)


ピアーニャの時と違い、しっかりと意思疎通出来ている。

ニオに魔力の制御を教える必要性を感じたネフテリアは、強制的にニオのお披露目を終わらせる事にした。


「次はわたし?」

「アリエッタは最後だから」

「なるほどー、可愛いもんね!」

「そ、そうね……」


という訳で、メレイズが前に出た。『雲塊シルキークレイ』を捏ねながら。


「おい、あんまりキアイいれなくていいからな?」

「ヤです! ニオちゃんにばっかり良いカッコさせません!」

「ぅおい!」


なんだか妙なライバル意識を持ち、遠くでのんびりと歩いているモイジープに狙いをつける。


「【水ノ宮の龍舞シーブリームロンド】!」


メレイズの手から離れた『雲塊シルキークレイ』から、勢いよく水が射出された。しかも、一直線でなく、ジグザグになるように放っている。


「ビャッ!?」

ズバババババッ


モイジープがその攻撃に気づくと同時に、ジグザグに広がったせいで避けようがない奔流に襲われ、流されながらグチャグチャになってしまった。水圧自体がかなり強かったようだ。


「どう?」

「えっ……えっ?」


ニオに向かってドヤ顔を決めるメレイズ。


”かわいい”

”かわいいから許す”

”どっちもかわいい”

”やってる事はエグいけどな”

「さぁアリエッタちゃん! 出番だよ!」

「? はいっ!」


何故かノリノリなメレイズに呼ばれ、アリエッタはとりあえず前に出た。


「えっと、何するか分かってる?」

「だいじょうぶ!」

「うん良い返事! すっごい不安!」


アリエッタを最後にしたのは、みんなの行動を見て何をするか分かってほしいという願いと、何があっても中断しなくて済むようにである。

その思惑通り、アリエッタはちゃんと自分の出番が来る事を考えていた。


(ここは戦うリージョンだって、昨晩教えてくれたからな。だからみんなで戦力確認したんだろう)


だいたい合っている。必死に前情報を与えておいた甲斐があったという事だろう。


光妖精アレで配信してるっぽいし、映える事をすればウケるよな)


考え方は合っている。視聴者も、戦うにはまだ早いと思える少女達には、むしろ面白さの方を期待している。


(アレを使う時が来た。こっそりママと特訓した成果を見せるぞー)


イディアゼッターが聞いたら泣いて卒倒しそうな事を考え、やる気をみなぎらせた。


「がんばるのよ!」

「アリエッタ、しっかりね」

「はいっ!」(ミューゼもパフィも一緒にいてくれるから、怖いものなんてない!)


ミューゼ達のおかげで、やる気が限界を超えた。


「あのー、不安しかないのですが」

「キグウだなゼッちゃん。わちもだ」


アリエッタが空中に絵を描き始める。それももの凄いスピードで。

ミューゼが周囲に蔓を出し、それを上って高い所にも絵を描く。輪郭がはっきりしたところで、それがヒトの形をしている絵だという事を全員が理解した。


「これがアリエッタちゃんの、能力?」

「ほえーわたしも初めて見る」


ニオは服の絵を描いているのがアリエッタである事を知っていたのだが、実際に能力として使う所を見たのは初めてである。ちょっとビクビクしながら見守っていた。

ペースを落とさずに描き続け、わずかな時間で完成した。リアルな絵ではないが、それが誰かは見たことのある者ならばすぐに分かる。

スラリと長い手足。抜群のスタイル。整った顔立ち。美しい銀髪に虹色に輝く毛先。それは描いたアリエッタを大人にしたような姿。


「野菜女!? ナンデエエエエ!? ヒイイイイイ!」


案の定、イディアゼッターが錯乱した。

完成したのはエルツァーレマイアなのだ。絵なのでペラペラで、影の描写もリアルではないが、その美しさだけは誰にでも理解出来る。


”うおスゲェ美人!”

”大人のアリエッタちゃん?”

「いや、あの子のお母様」

”まじで!? じゃあこの子も将来は”

”俺ちょっと結婚申し込んでくる”

”ダメだろ。代わりに私が”

「こらこら」


アリエッタをゲットしようとするコメントが現れるが、ミューゼ達はそれどころではない。まさかのエルツァーレマイアの絵に思わず挨拶してしまいそうになっていた。


「ふぅ、危ない危ない。絵とはいえ義理の母になるお方。いつかは正式にアリエッタを嫁に貰う挨拶をしないとね」

”ちょっとそれ詳しく”

”なるほど……ふふ、いいですねぇ”

「アンタらそれでいいのか……」


ミューゼのお陰?でアリエッタを狙おうとするコメントは減った。しかし、本当にそれどころではない事を、イディアゼッターとピアーニャだけが理解していた。


「オマエら、バカなことやってるんじゃない。コレはナニがおこるんだ?」

『さぁ?』

「ケイカイしろよ! サイロバクラムみたいに、とんでもないヒカリうったらどうするんだ!」

『だってどうしようもないし……』

「こいつらっ……」


ミューゼ達は既に諦めている。

アリエッタは前方を指差しながら、絵に向かって前世の言葉で命令を出した。


『ママ! 【瞬凍の黒星】!』

『はぁーい』


なんとボイス搭載である。エルツァーレマイアの声で答えた絵の前に、黒と黄色が混ざった球体が現れた。

何だそれは……という疑問を口にする間もなく、その球体は放たれた。目にも止まらぬ速度で、森のある方向に真っ直ぐに。


キュィン

パキィッ


瞬間、何かが通り抜けた奇跡を空中に描き、その直後に草木が凍り付いた。


『え゛』


気づけば、一直線に伸びる氷の道が出来上がっていた。途中にあった草は全て風圧で曲がったまま凍り、湖の水が舞い上がった状態で凍った為、割れた氷山のようになっている。そして遠くにある山が複数座氷漬け。

エルツァーレマイアの黒色の力は温度の調整。エルツァーレマイアが使えば数兆度から絶対零度まで自由自在。それを速度の黄色と混ぜて、固い物にぶつかったら爆散する冷凍弾として放ったのである。

通り過ぎた後には全てが凍り、大気にはダイヤモンドダストまで漂っている。

アリエッタは呆然とする大人達の方に振り向き、メレイズを真似てドヤ顔をした。


「やった」

バゴオオオオオン

「やりすぎいいいいい!!」

「キャーーーー!」


大人達に代わり、地面を割って華やかなドレス姿の女性が現れ、ニオが驚いて悲鳴を上げた。


「あっ、グレッデュセントさん!」

「誰?」


いきなり地面から飛び出してきた女性は、空中に静止し、一同を見渡した。


「あ、イディアゼッター!」

(あっ……)


その名指しだけでネフテリアは察した。というより、この状況ではそれしかないという考えに至った。


「えー、彼女はグレッデュセント。このヴェレスアンツの創造神です」

『やっぱり』


ネフテリアだけでなく、ピアーニャもしっかり察していた。

少しの間コメントは停止していたが、すぐに再開する。


”えええええええええ!!”

”はあああああああ!?”

”ちょおおおおおおお!!”


しばらくの間、そのような絶叫コメントだけが大量に流れていった。

からふるシーカーズ

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