※政治的意図なし。史実とは一切関係ありません。語彙力がなさすぎるためところどころおかしいです。誤字脱字があるかもしれません
イギリス×日本です。他にも諸々お気をつけください。
「これで大丈夫…な、はずだ」
付箋だらけになった紅茶の本の表紙を、イギリスは優しく撫でる。今日は日本がやってくる日だ。普段使わないポットも用意した。ポットは庭園の花々を反射している。紅茶の匂いが室内を彩った。
イギリスはネクタイをきつく締めて、日本を待ち構える。
役立たずの紳士の仮面もつけて
ピンポーン
英国邸にチャイムの音が響く。その音はいつもの何倍も重圧な音に感じられた。室内の温度が一気に下がった気がする。
「イギリスさん、おられますか?」
……日本君だ。
日本の声が扉ごしに聞こえる。
無機質なドアノブを触る。
このドアノブを引けば、日本くんと二人きり。
声が震えてドアノブが上手く握れない。
日本君と仲良くなれるチャンスなのに、どこか逃げ出したいと思っている自分がいる。
もう片方の手で震える手を制御して思いっきり扉を開けた。
ガチャ
「おはようございます、イギリスさん」
眩しいくらい光が差し込む。
日本が前に立っている。
「本日はよろしくお願いします。」
大きい蒼色のジャンパーを羽織る姿は、普段とは違う少し抜けた砂糖菓子のような愛おしさを感じる。
思わず息を呑む。
「あ、あぁ、どうぞ、入ってください」
半ば放心状態のまま、部屋へと案内した。
今、この家は戦場だ。
イギリスは日本を席に座らせた後、湯を沸かしながら考えた。
「さっきはあまり、紳士に対応できなかった」
小さくつぶやく
‥大事なのはここからだ。
完璧に紅茶を淹れて、紳士らしく指導するのだ‥!
と、心の中で誓う。
同時にケトルがカチッと音を立て、辺りの湿度を上げる。
ティーポットに茶葉とお湯を注ぎ軽く混ぜる。
ポットの口から白い湯気が揺らめいている。
丁寧にカップに紅茶を淹れる。
慎重に、慎重に。
いつも見慣れてるはずの紅茶なのに、今日はしっくりこない。食糧庫の中から、昨日焼いといたスコーンをとり、日本の前にカップと共に並べた。
音を立てず、向かえの席に座る。
日本と目が合う。
日本は優しく微笑み返す。
(日本君、可愛い‥)
いや、そんな事を思ってる余裕などはない。
頬を叩く。
空気が一気に張り詰める。
席に座ることから、紅茶の持ち方まで、全て完璧でなければならない。
(そうしないと、日本君が私から離れてしまうのだから。)
「では、指導を始めますね」
声と心音が英国邸に響く。自分の声のはずなのに、どこか違和感がある。
「はい、お願いします。」
日本は背筋をすっと伸ばし、イギリスを見つめる。
日本の声が頭の中で反芻し続ける。
「まず、紅茶の持ち方は、持ち手に指を通さずつまむようにもってください。」
「このように‥」
辺りから、音が消え去ってしまった。
ティーカップが手から滑り落ちる。
陶器と液体が宙に舞う。
ガシャンッ!
静寂を切り裂く音が鳴る。
ティーカップの破片が床に散らばる。
どこか、映画でも観ているみたいだ。
「大丈夫ですか?!イギリスさん!」
「‥あ」
目の前には心配そうにこちらに視線を合わせる日本がいた。
その声で、イギリスはやっと意識を取り戻した。
それと同時に、恐怖心が頭を支配する。
「も、申し訳ない!、直ぐに、片付けるので、少し待っていてくれ!」
ひねり出した言葉はぐちゃぐちゃで、自分がいつもどのように喋ってたかすらわからない。
どうにか素手で、破片を集める。
もう繋ぎ合わせることはできそうにない。
近くにあった袋に破片を入れる
破片で何度か指を切ってしまった。
真っ赤な血がにじむ。
でも、そんなこと気にならない。
考える暇すらない。
早く、早く、汚名を挽回しないと
「素手で触らないでください、手を怪我してますよ」
指に暖かい感触が伝う。
…‥これは絆創膏?
「妹からもらったものなので、桜柄ですが、我慢してくださいね。」
日本がイギリスの指を手に取り、血のついた所に丁寧にそれをつける。
「あ、ありがとう」
「どういたしまして、、ふふ、なんか面白いですね」
日本がクスッと笑う。笑顔というよりかは、本当に面白がっている顔だ。
初めてみた顔にこっちも笑えてきてしまう。
「完璧だと思ってたイギリスさんでも、こんなヘマを犯すなんて!」
イギリスは思わず目線を落とし、頬に熱が帯びる。
日本は破片の入った袋を見て、ふっと目を細めた。
「…でも、」
日本は目線をそらし一息おく。
「失敗して焦ってるイギリスさんの方が、私、
す…好きかもしれません」
好き‥‥?
心にふっと日が差した。
まるで春の訪れを感じたようだ。
絆創膏から春の日の日向のような暖かさが広がる。
仄かな桜の匂いがする。
絆創膏をそっとなでる。
あぁ、まだ暖かい。
仮面が静かに溶け落ちた。
視線の先には、もう、日本しかいないようだ。
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