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高橋 ユウジと佐藤 カズヤは物心着く頃にはお互いがいないと不安になる間柄だった。
それはまだ産まれる前の事、母親達が産婦人科の同室になり意気投合、蓋を開ければ家も隣同士ですぐに父親達も仲が良くなり家族ぐるみの付き合いとなった。
生まれた日も一日違いで、ユウジは6月8日生まれ、カズヤは6月9日生まれ。
もちろん同じ幼稚園に通い、毎日お互いの家の真ん中から幼稚園バスに乗っていた。
ユウジが風邪でお休みすると、カズヤは駄々をこねて、ユウジが居ないなら幼稚園には行きたくないと泣く始末。逆も然り。
「カズヤが行くなら僕も行く」
「ユウジが出るなら僕も出る」
これが二人の口癖だった。
小学校に上がる頃にはお互いを親友同士と認識しクラスが違っても当たり前のように一緒に登校し下校していた。
決して友達が二人だけではなく、互いのクラスに仲がいい友達も出来ていたが、何をするにも
「カズヤがするなら俺もする」
「ユウジがなるなら俺もなる」
習い事も二人で同じところに通い、委員会や係も気がついたら一緒にしていて、まるで兄弟の様に育っていた。
そんな二人はたまに喧嘩もするが次の日には仲直り、さらに絆が深まっていった。
そして気がつけば六年生になっていた。
「ユウジん家行ってくるね!」
カズヤがランドセルを玄関に放り出すと家の中にいる母親のユウコに声をかける。
「行くならお菓子持っていきな!」
キッチンに続く廊下にひょこり顔を出すと、もう既に玄関から出ようとしているカズヤにスナック菓子を放り投げる。
「ちゃんと、靴を揃えてお邪魔しますって言うんだよ! 慣れてるからってちゃんとしないのは許さないよ!」
「はーい」
返事もそこそこにさらに小言を言われる前にさっさと家を出て言ってしまった。
歩いて二十歩くらいでユウジの家に着くと、ピンポーン!とチャイムを鳴らした。
「ユウジー!」
インターホンと同時に庭に向かってユウジの名前を呼ぶ。
「おー、カズヤ入っていいよー!」
「お邪魔しまーす」
カズヤは声をかけて扉を開ける。
「カズヤくん、いらっしゃい」
玄関を開けるとユウジのママがキッチンか、顔を出した。
お母さんに言われた通りに靴を揃えて家に上がると
「はいユウジママ、これお母さんから」
渡されたスナック菓子を差し出す。
「えーもう毎回いいのに…でもありがとう。お母さんによろしく言っといてね。今お菓子出すからユウジと座って遊んでて」
「ありがとうございます」
そう言っていつものリビングを見るとユウジがソファーに座りながら声をかけてくる。
「カズヤ、早くソフト繋げろよ!」
今、小学校で流行っているゲームソフトを取り出してもう既にはじめているユウジのソフトに線を繋げた。
お互いが自分のキャラを動かしながら与えられた任務を協力してこなしていくゲームソフトだった。
1人ではクリアが出来ない様な任務も仲間たちと協力する事でより強力なアイテムが貰えたりする。
「今日こそ16面をクリアしないと!タクヤ達はもう17面に行ったらしいぞ!」
「マジかよ!どうやってこの湖の面を渡ったんだよ!」
2人で頭をくっつけ合ってお互いの画面を見ながらあーだこーだ言いながらゲームに集中していた。
するとピンポーン!っとまたチャイムが鳴った。
「はーい」
ユウジママが玄関を開けるとカズヤのママが笑顔で立っていた。
「ナッちゃんこんにちは!いつもカズヤが悪いね」
カズヤは母親の声が玄関から聞こえてきたが構わずにゲームを続けている。
「ユウちゃんいらっしゃい。二人とも相変わらず仲良くゲームしてるよ。私達はお茶しようよ、上がって」
笑みを浮べ中へと促した。
「お邪魔します。ああ、良かったちゃんと靴揃えてるね」
「あはは、いつもちゃんとしてるよ。挨拶もキチンとするし、うちの子の方が出来ないでしょ?」
「家にいる時はちゃんとしてるよ。外で会うと他人行儀みたくなるけど…あれなんでなんだろ?」
ユウジは赤ちゃんの頃から知ってるので家で遊ぶ時はカズヤのお母さん!っていつも元気に話しかけて来るが、スーパーなどで会うとサッとナッちゃんの影に隠れて恥ずかしそうに挨拶をする。
「変な人見知りだよね」
「そのうち挨拶もしてくれなくなっちゃうのかな?ヤダなぁ…ばばあなんて言われたらどうしよう」
「それは…確かに嫌だなぁ…」
ユウジママが想像したのか悲しげな顔をする。
「まぁそんなん言われたら拳骨くれてやるわ!」
「あはは、そうなったらユウちゃんよろしくね!」
そう言って笑いあい、遊んでいる2人を見る。
2人は聞いているのかいないのか先程と同じ体制で引っ付き合いながらゲームをしている。
「本当に仲良いね」
「ずっと一緒に仲良くいてくれるといいね」
「まぁ頭も同じ位だしこのままいくと高校も一緒かな?」
「はぁーゲームばっかりしてないで勉強の方もして欲しいわ!」
お互い笑い合いながら学校の事やお互いの家庭の愚痴などを話しているとあっという間に時間が過ぎていった。
チラッと時計を見るともう家に戻って夕飯を用意しないといけない時間になっていた。
「カズヤ!そろそろ帰るよ!」
喋りすぎたとカズヤに声をかけて帰ろうと促すが動く気配がない。
「ちょ、ちょっと待って!今いい所だから!」
「カズヤのお母さんあと少しだけ。ね、いいでしょ!」
ユウジも一緒になって頼み込んでくるお決まりのパターン。
「もう!それ何度目? いい加減にしなよ」
「まぁまぁ、ユウちゃんいいよカズヤくんなら好きなだけいていいから」
「もう、ナッちゃんカズヤに甘いんだから!」
お互い夕飯の支度があるのでカズヤに直ぐに帰るように言うと自分だけ先に帰ることにした。
「お邪魔しました。明日はうちでいいよ、じゃあカズヤに終わったら直ぐに帰るように言っといてね」
「りょーかい!」
じゃあねと家に帰り夕飯の準備をしていると自分が帰ってきてから30分くらいしてカズヤが帰ってきた。
「ただいまー!」
「カズヤー手を洗って宿題しちゃいなさい!」
「はーい」
バタバタバタと洗面台に走るとジャバァー!と水の音がする。
パタパタパタ、カチャカチャ…
廊下を歩く音にカバンを開ける音が聞こえてくる。
よしよし、宿題を始めたな。
カズヤが奏でる生活音を聞きながらいつも通りの日常にクスッと笑って夕飯の用意を進めた。
「カズヤー!ご飯だよー!」
「はーい」
バタバタバタ!階段をかけ下りる音と共に扉が勢いよく開くとお腹を押さえたカズヤが声をあげた。
「あー腹減った。今日のご飯なに?」
「ハンバーグオムライスだよ!」
「やりぃ!いただきまーす!」
もぐもぐもぐ、ゴックン!
「今日お父さんは?」
一口食べてから父親の席に目を向けた。
「今夜は遅いから先に食べてていいって。カズヤ宿題は、終わったの?」
「うん、終わった!だからお風呂入ったらまたユウジとゲームしていい?」
「えーまた? どうやってやるつもりよ?」
「部屋で繋げるから大丈夫!」
部屋で繋げる?無線でも出来るのかな?
ゲームの事は詳しくないので適当に返事をする。
「やる事やってからね。明日の用意して歯磨きもしてからよ!」
「わかってる。ご馳走様ー!」
「早っ!」
見るとカズヤはもうすでに食べ終わっていた。