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柘榴とAI

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世の中には多重人格という言葉がある。自分ではない人格が胸の奥に潜み、時折意識を乗っ取る心理現象。
だが、俺が精神科の診察室で告げられた名称は、それとは根本的に異なるものだった。
「――多重人です」
世界で唯一の症例。病気なのか、あるいは人類の新たな変異体としての能力なのか、医師たちにも判断がつかない。
解離性同一性障害との決定的な違いは、『切り替わる際、髪型も、骨格も、顔立ちも、完全に別の人間へと変貌する』という点にあった。
その現象の渦中に立ち、肉体の崩壊と再構築を一身に引き受ける中心――いわば主人格であり、精神の『主人』となっているのが俺だ。
俺の内部には、俺を含めて5人の人間が同居している。
交代の瞬間は唐突に訪れる。全身の骨が擦れ合い、筋肉が急激に組み換わる違和感とともに、視界の高さが変わる。
特に、女性の人格へと切り替わる瞬間は凄絶だ。肩幅が削げ、胸元が膨らみ、皮膚の質感が一瞬で滑らかに変わっていく。鏡に映るのは、ほんの数秒前までそこにいた男の影すら残していない、完全な女性の姿だ。
服のサイズは合わなくなり、靴は脱げ落ちるか、爪先を激しく圧迫する。
そして人格ごとに、思考の癖も、声のトーンも、記憶の引き出し方すら違う。
朝、目を覚ましたときに鏡を覗き込むまで、自分が「誰」としてその日を始めるのかすら分からない。
五つの肉体と、五つの精神。
そのすべてを統括する「主人」として、俺はこの狂気じみた日常を生きている。
コメント
1件
うわ……設定が重くて引き込まれた。 「多重人格」じゃなくて「多重人」っていうのがもう、ただ者じゃない感じがするよ。人格が変わるたびに骨格や顔まで変わるって、想像するだけでゾッとした……特に女性人格に切り替わる瞬間の描写が生々しくて、一気に世界観に引きずり込まれた。 朝、目が覚めるまで自分が誰か分からない日常って、どんな気持ちなんだろう。5人も人格がいて、全部まとめてるのが今の主人公ってことだよね……この先どうなっていくのか気になりすぎる。 続き、待ってます。