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𝕣𝕖𝕒𝕣
395
#ご本人様には関係ありません
あか
261
#からぴち
琉愛˚𓆩✞𓆪˙
191
キーワード:後朝・遮光カーテン・好き
目を覚ました瞬間、仁人は自分がどこにいるのか、一瞬分からなくなった。
──真っ暗だ。
瞼を開いているはずなのに、視界には何も映らない。普段の朝なら、カーテンの隙間から漏れる光で、意識が浮上する前から、ぼんやりと瞼の裏が白んでいるものだ。だが今、そこにあるのは、完全な闇だけだった。
一瞬、まだ夜中なのかと思った。だが、指先に触れる肌の感触や、体の奥にまだ残る気怠さが、それなりの時間が経っていることを教えてくれる。手探りで確かめたシーツの感触、隣にある体温。視覚が奪われている分、他の感覚だけが、やけに鮮明に研ぎ澄まされていた。
「起きた?」
すぐ隣から、低い声がした。勇斗の声だと分かった瞬間、仁人は詰めていた息を、ゆっくりと吐き出した。
「ここ、今何時ですか」
「たぶん、昼過ぎくらいかな。遮光カーテン、完璧仕様だから、光が一切入らないんだよね」
「なんか、変な感じ。普通、こういう朝って、もっと眩しいイメージだったんですけど」
「俺の部屋じゃ、それは無理な相談かな。ごめんね」
苦笑するような声に、仁人は闇の中で、手探りに勇斗の存在を確かめた。指先が、温かい肌に触れる。その感触に、昨夜の記憶が、じわりと蘇ってきた。
首筋に残る、小さな痛みの余韻。自らの意志で越えた、覚悟の重み。仁人はそれを噛みしめながら、闇の中で、勇斗の腕に、そっと身を寄せた。
「真っ暗なのに、なんか、落ち着きますね、これ」
「そう?」
「はい。勇斗さんの匂いとか、体温とか、そういうのだけしか分からないから。逆に、余計なものが見えない分、ちゃんと感じられる気がします」
その言葉に、勇斗はしばらく黙っていた。闇の中で、二人の呼吸だけが、静かに重なっている。
「なぁ、仁人くん」
「なんですか」
「昨日、ちゃんと言ってなかったなって、思って」
「何をですか」
勇斗は、闇の中で、珍しく言葉を選ぶような間を置いた。
「好きだよ、仁人くんのこと」
その一言に、仁人は目を見開いた。これまで、態度でも、行為でも、十分すぎるほど伝わっていたはずの感情だった。それでも、こうして言葉としてはっきり紡がれると、まったく違う重みで胸に響いてくる。
「今更ですか、それ」
「今更だからこそ、ちゃんと言っておきたかったんだ。囲い込むとか、噛むとか、色々やっておいて、肝心の言葉が抜けてたなって」
その律儀さに、仁人は思わず笑ってしまった。誰よりも強引に踏み込んできたはずのこの人が、こんなにも不器用に、大切な言葉を後回しにしていたことが、無性に愛おしく感じられる。
「俺も、言ってなかったですね、そういえば」
仁人は闇の中で、勇斗の頬に触れた。輪郭を確かめるように、指先でそっと辿る。
「好きです。勇斗さんのこと。たぶん、あのツンツンしてた頃から、ずっと」
「うそ」
「はい。あの時はまだ、自分でも認めてなかったですけど。今なら、はっきり分かります」
闇の中で、二人はどちらからともなく、唇を重ねた。視界を奪われているせいか、触れ合う場所の熱だけが、いつもよりずっと鮮明に感じられる。
唇が離れた後も、しばらくの間、二人は額を寄せ合ったままでいた。互いの吐息の温度、鼓動の速さ、肌に伝わる微かな震え。目に見えるものが何一つない分、感覚のすべてが、相手の存在だけに注がれていく。
「こうしてると、時間の感覚まで、なくなっていきますね」
「悪くない感覚だと思うけど」
「はい。悪くないどころか、ずっとこのままでもいいくらいです」
「真っ暗な朝も、悪くないですね。勇斗さんと二人きりで、こうしていられるなら」
「普通の朝日、見せてあげられなくて、ごめんね」
「謝らなくていいです。俺、勇斗さんのいる場所だったら、どこでも、ちゃんと明るく感じるので」
その言葉に、勇斗は闇の中で、確かに微笑んだ気配がした。仁人にはその表情を見ることができない。だが、伝わってくる体温と、抱き寄せる腕の強さだけで、十分すぎるほど、その気持ちは伝わってきていた。
「なぁ、勇斗さん」
「なに」
「次からは、ちゃんと最初に言ってくださいね。好きって」
「善処するよ。でも、こういう不意打ちも、たまには悪くないでしょ」
「──否定はしません」
小さく笑い合いながら、二人はもうしばらく、闇の中で、互いの体温だけを頼りに、寄り添い続けた。真っ暗な部屋の中、言葉もなく、ただ互いの存在だけを確かめ合う時間。窓の外がどれほど眩しい昼であっても、この部屋の中だけは、二人にとって、この上なく穏やかな夜が続いているかのようだった。
太古の昔から後朝って尊いよねって話。
今更、こんなところで言うのが、確信犯で大人ずるい。
コメント
1件
るりさん、お疲れ様です🥀 後朝、尊すぎてしんどいです…「好きだよ」って闇の中で告げるの、ずるいよな〜って思いながら読んでました。仁人が「あのツンツンしてた頃からずっと」って認めるシーン、すごく好きです。遮光カーテンで視覚が奪われてるからこそ、体温とか匂いとか鼓動だけが際立ってて、逆に濃密な時間になってるの、本当に良かったです。 二人だけの真っ暗な朝、もっと見ていたいです😢🤍