中学生活初の体育祭が近づいてきた。学校全体がざわざわしていて、クラスメイトも活気づいている。そんな中、私は体育祭の準備係として、クラス代表で道具のチェックや掲示物作りをすることになった。
放課後、準備を進めるために体育館倉庫へ向かうと、そこに広瀬先輩がいた。
「え、先輩も体育祭の準備ですか?」
「うん、部活の道具運ぶついでだ。」と、無表情で言う先輩。でもよく見ると、先輩も体育祭の準備の一環で何か作業をしているみたい。
「先輩が手伝ってくれるなら、助かります!」私は元気よく言いながら、準備を始めた。
でも、準備を進めていくうちに、問題が発生する。倉庫の奥にある必要な道具を取りに行こうとしたら、脚立が必要な高さだった。
「えー、届かない……!」背伸びをしても、どうしても取れない道具を眺めていると、背後から広瀬先輩がやってきた。
「何してんだよ。」
「え、これ取ろうと思ったんですけど、届かなくて……」
すると、先輩は無言で私の後ろに立ち、腕を伸ばして道具を取り出してくれた。
「ほら。」と、差し出される道具を受け取る私。でも、私の頭のすぐ上に広瀬先輩の腕があって、近い距離感に一瞬固まってしまう。
「あ、ありがとうございます!」慌ててお礼を言うと、先輩は「そんなことで騒ぐなよ。」とぼそっと言い、道具を運び始める。
――なんだろう、広瀬先輩って、いつもは冷たい感じなのに、こういう瞬間だけ優しい気がする。
…こういう瞬間だけ!だからねっ!!
その後も作業を進めながら、広瀬先輩と少しずつ会話をするようになった。私が作業中にミスをすると、「不器用だな。」と笑われたり、逆に広瀬先輩が作業を手伝ってくれると、なんだかんだで助けられたり。てか先輩はダイジョブなんですか?準備!!
「体育祭、楽しみですね!」と私が話しかけると、先輩は少し考えるようにして、「まあ、嫌いじゃない。」とポツリ。
なんだかんだで準備が終わり、帰り際、先輩と二人で倉庫を出る。
「先輩って、意外と面倒見いいんですね!」
「……意外ってなんだ。」と、少し不機嫌そうに言いながらも、どこか笑っているような気がした。先輩て、なんか不思議…
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