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ついに迎えた体育祭当日!
私は朝からクラスの応援の準備や競技の確認でバタバタしていたけど、みんなのテンションが高くて、自然と楽しい気持ちになっていた。
「くるみー!次、リレーの順番決めるよ!」と璃子が手を振りながら駆け寄ってくる。
「え、私リレー出るんだっけ?」
「そうそう!バトンも練習したじゃん!」
そういえば、先週は放課後みんなでバトン練習をしていたなあ、と思い出す。走るのはあんまり得意じゃないけど、みんなの足を引っ張らないように頑張ろ。
グラウンドのあちこちでは、競技が進行していて、応援の声が響いている。青空の下、私は自分の出番に備えて準備体操をしていた。
そんな中、ふと視線を感じて振り向くと――遠くで広瀬先輩が立っているのを見つけた。
テニス部の先輩たちと談笑しながらも、どこか冷静な表情で周囲を見渡している。
「あ、先輩も応援してるんだ……」と思いながら、つい目が合ってしまった。
一瞬だけ、先輩がこちらに視線を向ける。なんだか気まずくなって、私は慌てて顔をそらしたけど、心臓が少しだけドキドキしていた。
私の出番は、クラス対抗リレーだった。
スタート地点で緊張していると、璃子が「くるみ、大丈夫!絶対速く走れるって!」と励ましてくれる。
「うん、頑張る!」と返事をし、気合を入れた。
いざスタートの合図が鳴ると、グラウンド中が応援で盛り上がる。私の順番が近づくにつれて、緊張もピークに。
そして、ついにバトンが私に回ってきた!
「よし!」と気合を入れて走り出すけど、途中でつまずきそうになり、バトンを落としそうになった――その瞬間!
「――頑張れ!」
グラウンドの端から聞こえたその声に、私は一瞬ハッとした。見れば、広瀬先輩が腕を組みながらこちらを見ている。応援してくれたの……?
気が付けば、その声に後押しされるように私は全力で走っていた。そして、次の走者に無事バトンを渡すことができた。
「はあ、はあ……!」ゴール後、クラスのみんなが「ナイスファイト!」と声をかけてくれる中、私は広瀬先輩の方をちらりと見る。
先輩は何事もなかったような顔をしていたけど、少しだけ笑っているように見えた。
リレーの後、休憩中に体育館裏で水を飲んでいると、また広瀬先輩と鉢合わせた。
「お疲れ。」と短く言われる。
「先輩、応援してくれてましたよね?」私は思わず聞いた。
すると、先輩は少し困ったように目を逸らして、「別に……声が聞こえたなら、それでいいだろ。」とそっけなく答える。
でも、ほんの少しだけ照れているような顔を見て、私は自然と笑顔になった。
「先輩の応援、ちゃんと届きました!ありがとうございました!」
そう言うと、広瀬先輩は「そうか。」と小さく返事をして、ポケットに手を突っ込みながら立ち去った。
――今日の体育祭、なんだかすごく楽しかったな。
先輩のあの言葉と表情が、ずっと頭の中に残っている。
体育祭が終わっても、この気持ちは消えないかもしれない。