「実はウチのペスなんですけど今朝から産気づきまして、三匹生まれたんですけどね、えっと、和尚様、ちょっとご覧になって頂けないでしょうか?」
「へー、ペスが子犬を、でござるかー、頑張ったのでござるなー、んじゃチョット見せて貰うでござるよぉー! 僕チン行ってくるけど皆はどうするでござるか?」
コユキが即座に返す。
「アンタさぁ、ワンちゃんとかニャンコって生まれたばっかりって言うほど可愛くないわよ? ペスだってまだ興奮しているかもしれないじゃない、少し時間をおいて母子ともに落ち着いてからにしなさいよ、ね」
「なるほどペスにとっては自分と子供達の生死に関わる事だからな、善悪、自重(じちょう)しろよ」
「だね、姉様の言う通り後で行こうよ、ほら、アルテミスだってある意味、生まれて来るんだからさ、そうしよ」
三人に言われた善悪は音成さん家の奥さんを振り返って答えた。
「だそうでござる、皆の意見に従って拙者も暫(しばら)くしたら行く事にしようかな? でござるよ」
奥さんは言い難そうにしながらも繰り返すのであった。
「いえ、和尚様だけで良いので今からご覧くださいませんか、是非、是非お願いしたいのでございます」
「お? そうなのでござるか? ふーん、分かったのでござる、んじゃ某行ってくるのでござるよ、後ヨロ」
「「「りょっ、てらっ!」」」
いそいそと出掛ける善悪に代わって本堂に姿を現したのは、アルテミスの兄姉である、スプラタ・マンユの七柱、ちっちゃなフィギュアの魔王達であった。
今まで毎朝の日課、自分達を中心としたフォーメーションダンスの動画でも見ながら、改善点を熱く語り合っていたのだろう、揃って顔面を紅潮させている。
先頭を歩いて来たオルクスが、この一年の間大切に守り続けて来た半透明の赤い石、アルテミスの魔核を手にコユキに言う。
「サンセンチ、コレトロボット、ニ、タノムネ、セイマリョク」
「あ、うん了解、そうか、アルテミスちゃんも魔王種だったわね、自前の魔力じゃ顕現出来なかったんだったわね、んだけど善悪が帰って来るまで待っていなくても良いの?」
「イイ、ト、イウカ、イマノウチ」
「今の内? そうなの? んまあ、良いんだけどね、どれ、ロボットと魔核に聖魔力ね、それっ!」
食べ物以外の事には基本的に無頓着なコユキである。
オルクスの言葉の意味を深く考えもせずに、聖魔力を魔核と横に並べたロボット、ザンボット〇に注ぎ込むのであった。
ピッカァッ! ムックリ!
例の如く動き出したロボットは多少片言気味にコユキに向けて言うのであった。
「ありガとうゴざいまス、コユキさマ、次ハ、三つノ箱を開けテ、下サい」
「う、うん、アスタ、バアルちゃん聞いてたでしょ、手伝ってよ」
「おう」
「うん」
コユキ達は三個の段ボールを開き、中から大き目の猫の実物大フィギュア、大体メインクーン位ありそうなものを取り出したのである。
毛色は黒、茶色のトラ、もう一つは現実にはいないであろうと思われる鮮やかな青い色をしていた。
並べられた三つのフィギュアの前までガシャガシャっと進んだザンボット〇に身をやつしたアルテミスは、徐(おもむろ)にコンビネーションアウト、いわゆる合体解除をするのであった。
ザ〇バード、ザ〇ブル、ザ〇ベースの三体のメカと化したアルテミスは声を揃えて言ったのである。
「「「でハ、例ノ奴、プすっト、オ願いシマす」」」
「う、うん、エイヤっ! プスプスプスリ、となっ!」
シュウゥー! コロコロコロリ……
コユキのカギ棒に貫かれたメカ達からは、いつもと同じく霧が吹き出して行き、やがて元の魔核の三分の一位の魔核三つが本堂に転がったのである。