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りゅず
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kaede🍁
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2件
少し前に階段踏み外して足を骨折して悶絶してた時の旦那大爆笑で心配すらしてくれなかった😭 このストーリー読んで🖤の優しさが羨ましい😭
めめが仕事まで調整してそばにいるって決めたのがもう…。深澤くんの「今はそばにいてもらうのが正解」って言葉、すごく刺さりました。罪悪感と安心がぐるぐるする阿部ちゃんの気持ち、伝わってきて苦しかった。でも最後にそっと手を繋いだところで、はあ…ってなりました。優しさを受け取るのって、こんなに難しいんですね。
病院に着いてから、阿部はすぐに検査へ回された。
レントゲンを撮って。
医師に右腕を確認してもらって。
しばらくして、診察室で結果を聞いた。
「骨折していますね。」
「……やっぱり。」
なんとなく痛みの強さで覚悟はしていた。
それでも、はっきり言われると落ち込む。
医師は画像を見せながら、骨折している場所や今後の治療について説明してくれた。
幸い、手術が必要なほどではない。
けれど、しばらく固定が必要だった。
「ギプスが外れるまでは、不便だと思います。」
「……どれくらいですか?」
目安を聞いて。
阿部はさらに気持ちが沈んだ。
数日ではない。
その間ずっと、利き腕である右腕を自由に使えない。
仕事だって。
今まで通りにはできない。
「分かりました。」
そう答えるしかなかった。
___________
処置を終えて。
固定された右腕を庇いながら待合スペースへ戻った時だった。
「……え?」
目黒だけが待っていると思っていた。
そこには岩本と深澤もいた。
さらにマネージャーまでいる。
四人はスマホやスケジュール表を見ながら、真剣な顔で話していた。
「これは別日にできる?」
「確認します。」
「こっちはあべちゃん抜きでもいけるんじゃない?」
「多分大丈夫です。」
「めめのこれは?」
「俺、外してください。」
目黒の声だった。
阿部の足が止まる。
「……。」
目黒が自分の予定を指差している。
「こっちも調整できるならお願いします。」
マネージャーが頷いて。
予定が一つ消える。
また一つ。
阿部の仕事。
目黒の仕事。
どんどん減っていく。
「……。」
胸が苦しくなった。
___________
最初に阿部へ気付いたのは岩本だった。
「あ、阿部。」
その声で全員が振り返る。
目黒はすぐに立ち上がった。
「あべちゃん。」
「……うん。」
「どうだった?」
阿部は固定された右腕を少し見せる。
「折れてた。」
目黒の表情が曇る。
「そっか……。」
「でも手術はいらないって。」
「よかった。」
すぐそばまで来て。
目黒は阿部の顔を見る。
「痛い?」
「今はさっきより大丈夫。」
「帰ろうか。」
「うん。」
そう答えながら。
阿部の視線は、マネージャーが持っているスケジュールから離れなかった。
「……めめ。」
「何?」
「仕事、減らしてるの?」
目黒は隠さなかった。
「うん。」
「なんで?」
「一緒にいるため。」
やっぱり。
車の中で言ったことはその場だけの慰めではなかった。
「ギプス外れるまで、できるだけ一緒にいる。」
「……そんなに?」
「うん。」
目黒は本気だった。
言わないと。
阿部は思った。
一人で大丈夫。
少しくらい不便でも何とかなる。
時間をかければできる。
仕事だって。
できるものはある。
だから。
『めめは仕事してきて』
そう言わないと。
口を開いた。
「……。」
でも、出てこなかった。
本当は怖かった。
利き腕が使えない生活がどれだけ大変なのか、まだ想像もできない。
痛みだって続く。
目黒がいてくれることが、どうしようもなく心強かった。
「……ありがとう。」
また、それしか言えなかった。
阿部は俯いた。
悲しかった。
いつもの自分でいたかった。
なのに今日は。
『ありがとう』
それしか言えない。
そばにいてほしいと思ってしまう。
そのために目黒の仕事が減っていくのを見ても。
止められなかった。
「……あべちゃん。」
深澤の声がした。
顔を上げる。
深澤は阿部の表情を見て、少し悲しそうな顔をしていた。
「あべちゃん、今さ。」
「一人で頑張るのが正解じゃないから。」
「今は、めめにそばにいてもらうのが正解。」
深澤が優しく言う。
「できないこと助けてもらって、痛かったら痛いって言って、怖かったら怖いって言っていいんだよ。」
「でも……。」
「めめが自分で決めたんでしょ?」
目黒が頷く。
「俺が側にいたい。」
「ほら。」
深澤は少し笑った。
「だったら今は、それでいいじゃん。」
「……正解?」
阿部は目黒を見る。
目黒も。
迷いのない顔で自分を見ていた。
――これが正解。
阿部は心の中で何度も繰り返した。
今は頼っていい。
そばにいてもらっていい。
目黒の仕事が減っても。
自分の仕事が減っても。
今はこれが正解。
「……うん。」
無理矢理。
そう思い込んだ。
そうしなければ目黒の優しさを受け取ることすらできそうになかった。
「……めめ。」
「何?」
「よろしくね。」
「うん。」
目黒が笑う。
「任せて。」
その笑顔にまた安心する。
そして、安心してしまった自分を責めそうになって。
阿部は心の中でもう一度呟いた。
――これでいい。
――今は、これが正解。
何度も。
何度も。
自分に言い聞かせるように。
___________
家に帰ってきて。
阿部はようやく気付いた。
「……これ、思ってたより大変かも。」
病院では、骨が折れていることや仕事のことばかり考えていた。
けれど、利き腕である右腕が使えない生活は、想像以上に不便だった。
楽屋に置いたままだった鞄や私物は、全部目黒が持ってきてくれた。
その代わり、阿部は撮影で着ていた衣装のまま帰ってきてしまった。
玄関で靴を脱ごうとして。
固まる。
「……めめ。」
「何?」
「ブーツ脱げない。」
「うん。」
「……。」
「脱がすよ。」
目黒はすぐに阿部の前へしゃがんだ。
「足上げて。」
「ごめん。」
「謝らない。」
「……ありがとう。」
目黒が丁寧にブーツを脱がせてくれる。
たったそれだけのことなのに。
一人ではできなかった。
そして。
次の問題。
「……めめ。」
「今度は何?」
「これ。」
阿部は背中を向けた。
衣装のワンピース。
ファスナーが背中についている。
「……脱げない。」
「手伝うよ。」
「うん……。」
背中のファスナーを目黒がゆっくり下ろしてくれる。
なんだか。
ひどく恥ずかしかった。
「痛くない?」
「大丈夫。」
「腕上げないようにね。」
「分かってる。」
普段なら。
何でも一人でできる。
着替えることなんて考える必要すらなかった。
それが今日は。
一つ一つ。
目黒にお願いしなければならない。
「……不便。」
思わず呟いた。
目黒は笑う。
「しばらく俺がいるから大丈夫。」
また。
その言葉。
胸が温かくなって。
同時に少し苦しくなった。
お風呂も。
当然、一人では難しかった。
ギプスを濡らさないようにして。
髪を洗うのも。
身体を洗うのも。
目黒に手伝ってもらう。
「髪は?」
「……お願いします。」
「はい。」
目黒が優しく髪を洗ってくれる。
「痛くない?」
「大丈夫。」
「痒いところは?」
「美容室みたい。」
「ちゃんと答えて。」
「ないです。」
思わず二人で笑った。
___________
お風呂から出ても。
まだ終わらない。
阿部は左手でドライヤーを持ってみた。
髪を乾かしながら。
同時に髪を動かせない。
右腕は固定されたまま。
「貸して。」
目黒がドライヤーを受け取った。
阿部は大人しく椅子に座る。
温かい風。
目黒の指が優しく髪を梳いていく。
「熱くない?」
「うん。」
「眠い?」
「ちょっと。」
目黒の声が。
いつもより楽しそうだった。
阿部は鏡越しにその顔を見る。
「……めめ。」
「何?」
「楽しそうだね。」
「うん。」
否定すらしなかった。
「なんで。」
「久しぶりだから。」
「何が?」
「こうやって、あべちゃんとゆっくりいられるの。」
目黒が笑う。
「最近ずっと忙しかったじゃん。」
「……うん。」
「今日、本当は一緒に帰れるだけでも楽しみだった。」
阿部の胸が痛くなった。
自分も。
同じだった。
本当なら幸せだったはずなのに。
こんな気持ちさえなければ。
素直に幸せだと思えたはずだった。
――めめの仕事を減らしてしまった。
――迷惑をかけている。
――一人で何もできない。
また。
罪悪感が顔を出す。
阿部は左手を握った。
――正解なんだ。
深澤の言葉を思い出す。
『今は、めめにそばにいてもらうのが正解』
そう。
今はこれが正解。
怪我をしているから。
助けてもらっていい。
目黒だって嫌々ここにいるわけじゃない。
むしろ、こんなに楽しそうに笑っている。
「……。」
阿部は鏡越しに目黒を見る。
「めめ。」
「ん?」
「ありがとう。」
「どういたしまして。」
「……明日も髪、お願いしていい?」
目黒の手が一瞬止まった。
それから。
嬉しそうに笑った。
「もちろん。」
「そっか。」
阿部も。
ほんの少しだけ笑えた。
全部一人でできなくてもいい。
今までみたいに。
何でも自分で抱えなくてもいい。
ギプスが外れるまで。
ほんの少し目黒に頼ってもいいのかもしれない。
「乾いたよ。」
「ありがと。」
ドライヤーが止まる。
阿部が立ち上がろうとすると。
目黒が自然に左手を差し出した。
一瞬だけ迷って。
阿部はその手を握った。
「……よろしくお願いします。」
「何が?」
「しばらく。」
目黒は柔らかく笑った。
「こちらこそ。」
その答えが少し可笑しくて。
阿部も笑った。
まだ。
心の奥に罪悪感は残っている。
それでも今日は。
正解だと言い聞かせながらでも、少しくらい甘えてみようと思った。