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芙月みひろ
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「男の人って、どうしてみんな同じ場所に隠したがるんでしょう?」
箱の中身は、僕が20代の頃に買った、引退した伝説の女優のAVだった。
「あ、いや……それは! 存在すら忘れてて……!」
「ふーん……。こういうのがお好みだったんですね?♡」
彼女は1枚ずつ、業務報告でもするかのような淡々とした声でパッケージを読み上げ始めた。
「『彼女とイチャラブ温泉旅行』、『幼馴染に大胆な水着姿で迫られて』……」
羞恥心で脳内サーバーが爆発しそうな僕の太腿に跨ると、彼女はとろけるように濡れた声で、パッケージに記されたセリフを僕の耳元で囁いてみせたのだ。
「……うっ」
「………ふふ。どうですか……似てますか? とってもエッチなセリフですね♡私まで恥ずかしくなってきちゃいました」
顎をクイッと持ち上げられ、至近距離で見つめられる。
「でもこれ、浮気ですよね?」
「え……?」
「だって、私以外で興奮するなんて許せません。……私とこの子、どっちが好きですか?」
「それはもちろん、白石さんで……」
「じゃあ、これはもう不要ですね♡」
(……待て! それは発売停止のプレミア品なんだ! たしか佐藤の情報によればこの女優の作品は1本数万の値段がつく、人類の至宝……! さらば、僕の青春……泣)
僕の言い分を封じ込めるように、彼女は深い、深い口づけを落とした。そして、思い出の数々を無慈悲にゴミ箱へと放り込んだ。
「夜のお世話は、これから一生、私だけがします。……いいですね?♡」
彼女は僕の膝の間に割り込み、剥き出しの太腿を密着させてくる。一番弱いところを、なぞるように、弄ぶように、執拗なまで追い詰めていく。
「陽一さんは指一本触っちゃダメ。……ただ、私が与えるものだけを、受け取ってくださいね」
縛られた両手。物理的なアクセス制限。さらに彼女が僕に身を寄せた瞬間、遮るものない圧倒的な熱量と、抗いようのない柔らかさが全身を貫いた。
視覚、触覚、嗅覚――あらゆるセンサーが許容量(キャパシティ)を突破し、僕の脳内サーバーは赤い警告灯(アラート)を激しく点滅させ始めた。
「ふふ、陽一さんの弱いところ、全部知ってるんですよ♡ でも、まだ解いてあげ……」
(……くっ……もう、限界だ……!)
――何かが、弾けた。
僕は一気にネクタイを引きほどくと、自分を翻弄していた彼女の手首を掴み、ベッドへと押し倒した。 いつでもほどけるのを分かっていながら、あえて甘んじていた束縛(仮の仕様)。それを僕は、自らの衝動で強制上書き(オーバーライド)したのだ。
「……えっ? ……」
彼女の瞳に浮かんだのは、驚き、そして――とろけるような恍惚。理性が完全に焼き切れた僕は、彼女という名のシステムを、誰の手も届かない深い場所まで激しく、深く、隅々まで書き換えていくことになったのだった。